第十六話 襲撃!!
「きゃぁぁぁぁ!!」
「た、助けてくれー!」
突然現れた魔物――オークの群れの襲撃で、パーティーの参加者達が、悲鳴を上げながら逃げ回る。
会場にいる兵や、参加者達の護衛が魔物に対応しているけど、あまりにも突然なうえに、その数も多いせいで、対応が遅れている。
「どうして、魔物が急に!? それに、私の結界の中なのに、生きているなんて!?」
「うわぁぁぁ!!」
さっきまで威勢がよかったレイモンド様が、泣きべそをかきながら、必死にオークから逃げている。
彼も含めて、このまま放っておいたら、参加者がオークにやられるのは、時間の問題だろう。
「た、助けてくれぇぇぇ! 兵士でも聖女でも、誰でもいい! 私はまだ、死にたくないぃぃぃ!!」
「ワタクシから助けてくださいましー!」
「ふざけるな! 俺から助けろ!!」
「……どいつもこいつも、身勝手な。とにかく、剣が無い以上、魔法で……!」
レオン様は、魔法陣を自分の前に展開させると、薙ぎ払うように、ブンッと手を振る。
すると、魔法陣から大きな氷柱が発射され、オーク達を貫いた。
「レオン様、すごい……!」
「くっ……」
レオン様は、残っているオークを倒すために、再び魔法を使おうとするが、苦しそうにうめき声を上げながら、膝をついた。
「レオン様! 無理はしないでください! あとは、私が何とかします!」
「いや、お前は早く避難を……」
「私は聖女です! いくら相手があなたの悪口を言っていた人達でも、見捨てるわけにはいきません!」
「……まったく、お前は……わかった。頼む」
「はい、任せてください!」
私は、深呼吸をして集中をしてから、聖女の力を発動させる。
すると、会場が眩い光に包み込まれ……オーク達は、苦しそうにうずくまり、間もなく消えていった。
「これでよし。みなさん、魔物はもういませんから、安心してください!」
もうオーク達はいなくなったけど、まだパニックになっているのか、みんな落ち着きがなかった。
「ど、どうなっているんだ!? こんな田舎の国でも、聖女の結界は張っているのだろう!? なのに、どうして突然オークが現れたのだ!?」
「そ、それは……」
認めるのは、ちょっぴり癪だけど……レイモンド様の言う通りだ。どうして、結界の中にあるこの会場に、突然オークが出てきたのだろう?
「そうか、わかったぞ! これは、この女が本当は有能だと世間に誤解させるための、自作自演だな!」
「そんなこと、レオン様がするわけないじゃないですか!」
「ええい、黙れ! 口では何とも言える! くだらないことで、私達を危険に巻き込むだなんて、許される行為ではない!」
助けてもらったにもかかわらず、難癖をつけてくるレイモンド様に、沸々と怒りの感情が沸き上がってきた。
――しかし、そんな私の怒りを鎮めるかのように、ヴァルハザードの兵士が、会場の中に飛び込んできた。
「レオンハルト様! 会場付近で、怪しい男を捕らえました!」
「なんだと? それは、本当か?」
「はい!」
彼に続いて入ってきた兵士達は、一人の男を連れて、会場に入ってきた。
身なりからして、魔法使いっぽいけど……彼が、今の騒ぎに関係しているのかな?
「貴様が犯人か?」
「…………」
「そうか、言わないか。なら……」
「な、なんだその液体は!?」
「これは、俺の叔父上……ユリウスが作った、とっておきの薬だ」
「ゆ、ユリウス!? あの天才魔法薬師の、ユリウスか!?」
「これを飲めば、三日三晩の間、この世のものとは思えないような、苦しみを味わって死に至る」
「ひぃ……!?」
レオン様は、薬が入っている瓶を、実行犯の口元に持っていくと、彼は顔を青ざめさせ乍ら、ガタガタ震え始めた。
……ちょっと待って。あの薬って、確か……痛み止めだよね?。
「真実を吐け。さもなければ……」
「い、言います! 私が、とある人に依頼されて、召喚魔法でオークを呼び出しました!」
「依頼人? それは誰だ? それに、どうして魔物が結界の中で活動できた? 言え」
「ひぃぃぃ!? せ、聖女の力で簡単に死なないように、オークに特殊な魔法を使ったと聞きました! で、でも依頼人が誰なのかは、フードをかぶって顔が分からなかったですし、名前も教えてくれませんでした!」
「……まあいい。あとは、ゆっくり聞かせてもらう。連れていけ」
「はっ!」
ざわざわする会場から、兵と男は静かに去っていく。
そんな中、レイモンド様は、頭を抱えたと思ったら、急に笑い始めた。ちょっぴり怖いかも。
「ハハハ……それならなんだ? その特殊な魔物を消滅させたのか! それに、この国の結界を維持しながら、別の結界を出せたということだろう!? なんて……なんて素晴らしい聖女なんだ、君は!」
「えっ……?」
「先程の発言は撤回しよう。君は、とても優秀で美しい聖女だ! この私が、君を妻として向かい入れ、我が国の聖女にしてやろう! なに、悪い話ではあるまい! 相応の好待遇を約束しよう!」
「なっ……それなら、ぜひうちに来てくれ!」
「いやいや、ワタクシの国にぜひ!」
さっきまで、私やレオン様のことを悪く言っていた貴族や王族が、私に言い寄ってくる。
これが、手のひら返しってやつかな? ちょっとムカッとしたけど、ここは冷静に対処しよう。
「みなさんのお誘いは嬉しいです。でも、私は彼の隣を離れるつもりはありませんから」
「セシリア……」
少し驚いたような表情を浮かべるレオン様の隣に立ち、ニッコリと笑って見せた。
私は、この人とこの国で頑張るって決めたんだ。だから、どんな条件を出されたって、他の国に行くことはない。
「くっ……なら! レオンハルト殿! 貴殿と彼女は、政略結婚だと、風の噂で聞いている! こちらで別の……彼女なんて足元にも及ばない、美しい女性を用意するから、是非彼女との婚約を解消してくれないか!」
「……彼女の良さにわからない、哀れで愚かな人間の分際で、交渉しているつもりか? それで、よく交渉のテーブルについてもらえると思ったな」
怒りを孕んだ声で、彼のことを突っぱねると、私の隣に立ち、肩を抱いて引き寄せた。
「ちょうどいい。今この時を持って、ここに宣言する。彼女の未来の名は、セシリア・ヴァルハザードだ。これは、絶対不変の未来だ。そのことを、しかと胸に刻むように」
まっすぐ前を見て話すレオン様を近くで見つめていたら、なぜか胸の奥が、ドキドキと高鳴っていた。
ドキドキは、それだけじゃない。
私は――未来の名前を呼んでもらえた。
その影響で、なんていうか……うまく言葉に出来ないんだけど、体がムズムズして……とにかく嬉しいの!
「……あの、レイモンド様。先程の発言って……わたくしのことを、捨てるってことですわよね?」
「えっ? あ、いや……あれは、彼女を手に入れるための口実で……決して、君を捨てるわけじゃなくてでな! なぜなら、私が愛しているのは、世界でただ一人――」
「あなたみたいな、嘘つきで酷い人と婚約なんて、ごめんですわっ!!」
「ふべしっ!!」
彼の婚約者である女性は、彼の頬に強烈なビンタをお見舞いすると、そのまま泣きながら、会場を走り去っていった。
……彼女には、悪いことをしちゃったな……いや、考え方によっては、あんな酷い人と結婚をする前に、人となりを知れたから、良かった……のかも?
まあ、なんにせよ……大きなケガ人は出なくて、本当によかった!
あと、ここだけの話……レイモンド様がビンタされた時、スカッとしちゃった……ふふっ、この気持ちは、お墓まで持っていかないとね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
読んでいただいた方々に、お願いがございます。5秒もかからないので、ぜひ☆による評価、ブックマークをよろしくお願いします!!!!
ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタッチすることで出来ます!




