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第十二話 本当の姿

 レオン様の痛々しい姿に絶句していると、ユリウス様はゆっくりとレオン様の隣に立った。


「こいつ、油断してるとすぐに無理しやがる。だから、看病ついでに見張っていろ。それが、嬢ちゃんが出来る、ワシへの最大の手伝いだ」


「…………」


 近くで見ると、火傷以外にも、大小様々な傷があるのがわかった。それも、新しいものから古いものまで、多種多様だ。


 ――私は、心のどこかで、レオン様はとても強いから、私から見たら酷いケガに見えても、本当に大丈夫かと思っていた。


 でも、そんなの勘違いも甚だしかった。レオン様は、こんなにボロボロになるまで、頑張り続けていたんだ……。


「んじゃ、ワシはちょっと薬を取ってくるから、こいつのことを見ておいてくれ」


「……はい」


 空返事した私は、レオン様の枕元に腰を下ろして、自分の愚かさに項垂れていると、レオン様が目をゆっくりと開けた。


「……セシリア? どうしてここに?」


「レオン様……あなた……」


「……? どういうことだ? 普段は、薬で傷を見えなくしているのに……」


「どういうことですか?」


「いや、こちらの話だ。それより、どうしてセシリアがここにいる?」


「ユリウス様に、お手伝いできることはないか聞いたら……ここに連れてきてもらいました」


「そうか。叔父上の仕業か……」


 呆れたように溜息を漏らすレオン様は、静かに体を起こした。


「気にするな。火傷もあるが、ほとんどが古傷だ」


「古傷だとしても、こんなになるまで無茶をしていたってことじゃないですか!」


「無茶? それは違う。俺は国の王として、そして民を守る騎士として、生きていただけだ。これは、その証でしかない」


「っ……! こんなに傷付いたら、死んじゃうかもしれないんですよ! 死んじゃったら、全部終わりなんですよ!? 死んじゃったら、悲しむ人がいるんですよ!! ありがとうも、ごめんなさいも言えなくなるんです!!」


「…………」


「会いたくても……二度と、会えなくなるんです……!」


「セシリア……」


 もう、自分の感情がぐちゃぐちゃになっちゃって……ただ子供のように、泣きじゃくることしか出来なくなっていた。


「無茶しないで……! 私、頑張るから……だから、お願い……!」


「どうしてそこまで心配をする? 俺は、お前にそこまで心配されるほど、親交が深いわけでもない」


「私は、誰かが傷つくのも……悲しむのも、嫌なんです……! それに、あなたは私の大切な人だから! だから、だから……!」


「っ……!? そ、そうか……それは、悪かった」


 嗚咽を漏らす私の頭に、包帯が巻かれたレオン様の手が、ポンッと乗る。


 それは、何度もレオン様にされていることなのに、今の彼にされると、とても悲しくなって、余計に涙が流れ続けた――



 ****



■ユリウス視点■


「ふーっ……」


 レオンの部屋を後にしたワシは、部屋の前で壁に寄りかかりながら、煙草に火をつけた。


「はっ、あんな大きな声を出されたら、丸聞こえだっての。それに、捨て身の救出をした嬢ちゃんが、そんなことを言える立場か?」


 あんなの、性格の悪い奴が聞いていたら、ブーメラン発言だって馬鹿にするだろうな。

 まったく、熱弁するのは構わねえが、少しは自分のことを考えて喋りやがれ。


「人のことには過敏だけど、自分のことはおざなりになってしまう……あの子達は、そういう優しい子なんだよ。だからこそ……放っておくと壊れてしまうから、あたしら大人が見守る必要があるのさ」


「はぁ……わからねえな。人間なんて、いつかは死ぬもんだろ。なら、最後まで自分の好きなことをして生きなきゃ、もったいねーわ。つくづく、損な生き方をしていやがる」


「酒と煙草と研究ばかりの、色気の欠片もないアンタよりかは、立派な生き方だと思うけどねぇ」


「ほっとけ。って、いつの間にいたんだ?」


 あまりにも自然に会話に混ざりやがるから、普通に返事をしちまったじゃねえか。


「心配だから、様子を見に来たんだよ」


「暇人か?」


「本当に可愛げが無い男だねぇ。小さい頃は、聖女の修行をしているあたしの後ろを、ユリアーナ姉様~って呼びながら、毎日ついて回っていたのに」


「歳を取ると、そうやって昔のことを掘り返すことしか出来なくなんのか。あーやだやだ」


 ワシは大きく肩をすくめてから、ユリアーナに背中を向けた。


「ったく、本当は誰よりもお人好しのくせに、悪態ばっかりついて」


「あぁ? なにブツブツ言ってやがる。ついにお迎えに来た天使と、仲良くお喋りか?」


「お黙り! あたしは、あと五十年は現役さ!」


「そこまでいったら、もはやバケモノじゃねえか。頼むからさっさと成仏してくれや」


 これ以上、妖怪ババアと話していたら、凡人であるワシの時間が奪われちまう。

 さーって、部屋に戻って、研究ついでに薬を作ってやっか。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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