表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼の手の神官が総溺愛されるまで  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/28

第3章 価値【3】

 デラに案内されて訪れた勉強部屋は、勉強のためだけに使うとは思えないほど広く、清潔感のある部屋だった。実家で閉じ込められていた部屋とは比べものにならないほど綺麗で、ここでならきっと勉強を楽しむことができる。イテルにはそう感じられた。

「イテル様はお勉強がお好きですか?」

 デラの問いに、イテルは正直に頷く。するとデラは、羨ましそうな表情になった。

「あたしはどうしても勉強が嫌いでした。宮廷に仕えるために頑張りましたけど」

 デラは元々、宮廷に仕える侍女だったらしい。レイシーの要望を受けて神殿に来たのかもしれない。どういった基準でデラが選ばれたのかはわからないが、レイシーは、イテルにはデラが合うと思ったのだろう。

「もしレイシー様にそのおつもりがあるなら、イテル様も王立魔道学院に通われるといいかもしれませんね」

 イテルは首を傾げた。おそらく学校のことだが、あの狭く薄汚い部屋で過ごしていたイテルは、その学校のことをよく知らなかった。

 そんなイテルの表情から察したのか、デラは笑みを深める。

「王立魔道学院は、この辺一帯で最も大きな魔法学校です。公国の外からも若者が集まって来るんですよ」

「イテル様は実家でも勉強をしていたようですし」エイカーが言う。「魔法を学べば通えると思うっスよ」

 イテルは学校に通いたいとずっと思っていた。学校に通ってもっと勉強したい。それが叶うことはないと思い、諦めていた。

『良い案かもしれないな』と、ミィ。『王立魔道学院の卒業資格はあって損ではない』

(王立魔道学院の卒業資格?)

『王立魔道学院を卒業した者に与えられる資格だ。それを持っているだけで、様々なものが有利になるのだよ』

 それだけ王立魔道学院が権威のある学校ということだ。公国の外からも若者たちが集まって来るのなら、相当に大きな学校なのだろう。

(どうして公国の学校なのに王立なの?)

『もとはコートラス王国の学校だったのだよ。領地として公国領だったから、公国の学校になったんだ』

 フラール公国がかつてコートラス王国の領地だったことはイテルも知っている。それはイテルの生まれるより前のことだが、国史の教本にそう書かれていた。フラール公国は決して広い国ではないが、異能者を保護するという点でそれなりの権威を持つことも。

「みんな、ちゃんと勉強してて偉いっスね。自分は学校の成績はからっきしだったっスよ」

 エイカーが腕を組んで言う。すべての若者が意欲的に勉強するわけではないこともイテルは知っている。イテルは意欲的だったのではなく、両親から与えられた唯一のものが勉強道具だったというだけだ。

「エイカーは家が騎士の家だから」と、デラ。「騎士道に関しては厳しかったのでしょう」

「そっスね。そのおかげでイテル様の護衛に選ばれたんスから、無意味ではなかったっスよ」

 エイカーは明るく笑う。それが本心であることは、イテルにもよくわかった。

 コンコンコン、と軽やかなノックの音がした。デラが応対に出ると、顔を覗かせたのは満面の笑みを浮かべた男性だった。背が高く、赤色の混ざった金髪が特徴的な男性だ。

「はぁい、イテルちゃん」

 随分とご機嫌だ。ミィが「変わり者」と言っていたのは、この口調のことを言っているのかもしれない。イテルはそう考えたが、男性に嫌な印象は懐かなかった。

「このお方が、イテル様の教育係のフロント様です」デラが言う。「一般教養から魔法学まで、幅広い授業ができるんですよ」

「未来の神官様の教育係になれて光栄よ」

 イテルは曖昧に頷いた。自分の教育係になったことが光栄なことなのかどうかわからなかった。確かに未来の神官だが、もし神官の道を選ばなかったら、フロントの授業はすべて無駄になってしまうのか。それだけが少し心配だった。

「街の小等部で習う部分から始めるわ。すでに勉強しているところもあるだろうけれどね。まずは魔力を測らせてもらうわね。それから授業内容を決めさせてもらうわ」

 実にてきぱきとした教育係だ。すでにフロントの頭の中では、イテルの授業が完璧に想定されているのだろう。きっと、イテルがそれに付いて行けるかどうかはこれから魔力を計測してから決めるのだ。

「魔法の練習は初級から始めるわ。イテルちゃんが楽しんで学べるよう、アタシも努めさせてもらうわね」

 フロントは明るく笑う。ただ勉強できるだけでもイテルにはありがたいことだが、それを楽しめるようにしてもらえる。イテルにはそれだけで充分すぎるくらいだった。

「レイシー様もきっと、王立魔道学院を見越しているはずよ。そのつもりで勉強しましょうね」

 イテルは頷いた。先ほどデラが言っていた通りだ。

「アタシの授業に慣れてきたら、発声練習もしましょ。アタシたちもミィの声が聞こえたら話が早かったんだけどね。とにかく、楽しんで勉強しましょうね」

 神官の素質がない者にもミィの声が聞こえれば、イテルは発声練習をする必要がなくなる。それで困ることはなかったかもしれないが、イテルはレイシーと、デラとエイカーとも話をしたい。発声練習は頑張りたいところだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ