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侍女ジェシカの驚愕

侍女ジェシカ視点の第1~2話の内容になります。

「お嬢様、お久しぶりです」


「久しぶりね。ジェシカ。元気そうで何よりだわ」


「お嬢様こそ、その何というか‥‥成長されましたね」


 7年ぶりに再会したお嬢様のお胸が大変なことになっていました。


 そうそれは大玉のメロンをお二つ紐で括って首から吊るしてその上から修道服を着ているのかと思うような光景です。きっと私の目は大きく見開かれている事でしょう。

 お嬢様が18歳の時に別れた時のお身体は凄く細く、すぐにでも手折れる可憐なお花のような感じでしたが、今は‥‥。

 お嬢様はこちらで『大地と農耕の神』の信仰に目覚めたと聞いています。その恩恵や加護なのでしょうか?

 私は内心の驚きを何とか心のうちに留めお嬢様の全身を見やります。

 お胸はこれでもかと存在感を主張し、お腰周りも肉付き良く、されど腰周りはキュッとくびれ、修道服が途轍もない事になっています。これは犯罪なのではないでしょうか?

 それを証拠にお嬢様の背後に控えている修道院の関係者一同の内、下男、衛士の男たちの目線は自然を装いお嬢様のお尻やお腰やお胸に行っています。

 じーーと凝視するわけでもなくチラチラッという風でもなく不躾な視線にならないギリギリのラインで自然を装っているのは、ここ数年で彼らが身に付けた技術なのでしょう。


「困りましたね。聞いてはいましたが、想定を上回る成長です。持ってきたドレスでは対応できませんね」


 侍女長はお嬢様と定期的にやり取りしており、生活に必要なものなどをお送りしたようです。その中の肌着のサイズがだんだんと大きくなっていたという事はお聞きしていましたし今回、急遽私が派遣される段でも既成のドレスで多少サイズ直しして着られそうなものを用意してきたのですが、全部無駄になりました。

 お嬢様がちょっと困ったような顔をされています。

 お嬢様は何も悪くありません。私と侍女長の想定が甘かっただけですからそんな顔をされないでください。


「お着替えをしていただこうと思ってドレスを用意してきましたが、これは近くの街で一旦ドレスをお作りしないといけませんね」


「そうね。大きい街まではこのままの格好で行くしかないわね」


 とりあえず、下男と衛士に一睨みすると男たちはバツが悪そうに視線をお嬢様から外します。修道女たち特に修道院長は申し訳なさそうな顔をしています。まぁ、普段から注意はしてくれているのでしょうが、この体が目の前にあって見るなというのも確かに難しい事でしょう。


「少々、お待ちくださいませ」


 私は車内で使うつもりで用意していた雲綿羊のショールを持ち出そうと馬車の方を振り向きます。

 伯爵家の騎士は良く訓練されていますのでお嬢様のお姿を見ても動揺する者は‥‥、一人だけいました。馬車の後方右側の馬上の騎士だけボケッと口を開け、お嬢様のお胸に視線が固定されています。


 馬車のステップを態と音を大きめに立てて登れば「ハッ」とした様子でその騎士が視線を外します。

 あの騎士は隊長に後で報告します。


 その騎士の隊長は修道院長に小袋と手紙を渡しています。きっと寄進と今までのお礼状でしょう。


 雲綿羊のショールでお身体を隠せるよう肩に掛けるとお嬢様はふんわりと笑ってくれます。

 あぁ、お笑いになると18歳の頃の面影が‥‥。


 お嬢様は振り返り修道院の建物を見上げそれから並んだ皆さんに別れを告げます。


「今までありがとうございました」


「元気でね」


 修道女の皆さまの名残惜しそうなお顔と男の方たちの名残惜しそうな顔の意味合いの違いは考えないようにしますが、数人の方たちの表情などの違いは後で侍女長へ報告を上げておきましょう。

 修道院長、顔色は良いが眼下は窪み、手足は細い。

 若い修道女の一人、健康そうだが思い詰めた顔をしている。顔立ちからして報告にあった男爵家の令嬢か?

 神官、終始お嬢様のお顔を凝視していた。あの顔は思慕? それとも憧憬?




 馬車は走りだし、進行方向に向かって右側の席にお嬢様が座り、その斜め向かいに進行方向に背を向けて私が座ります。

 昔通りにお嬢様と馬車に乗れることに心が浮き浮きとしてきます。


「私も詳しい事は伺っておりませんが、お嬢様の婚約者様でしたダレン・ランドン様が生きてらっしゃったという事しか‥‥、本当は執事のギャリバンさんも来られればよかったのですが、何せ急だったもので取り急ぎ私が参った次第です。」


 とりあえず、知っていることだけでもお嬢様と情報を共有しておきます。


「構わないわ。とりあえず帰ってからお父様から詳しい事は聞くから。それよりみんなは元気?」


「はい、伯爵様も奥様も小伯爵様もお変わりないです」


「使用人の皆も変わりない?」


「はい。7年前から何人かは顔ぶれは変わりましたが、主だったものは昔のままです。皆、お嬢様のお帰りを心待ちにしております」


「そう、良かったわ。その、ジェシカはその、お嫁には行っていないの?」


「はい。今では侍女長の片腕として日々、励んでおります。あ、でもこれからはお嬢様の専属に戻していただくように来る前に伝えてあります」


 実際は伯爵家や実家から何度も婚約の打診は来ていた。子爵家の次女とはいえ家格の高いブーマー伯爵家でお嬢様の専属侍女までなっていればお話はそれこそいくらでも来ていた。

 お嬢様が修道院に入るといった時、本当であれば私もお嬢様と一緒に修道院に入るつもりだった。

 しかしお嬢様の一人で行くという意志は固く、私は折れるしかなかった。

 だから私はいつの日かお嬢様がお戻りになる日が来ると信じ伯爵家に残ることを選んだ。

 そして今、私は勝利したのだ。


「そう、うれしいわ」


 お嬢様のその笑顔だけで私は救われます。


 馬車は田舎の整備されていない道をガタゴトと進んでいく。




 私はジェシカ・ドナヒュー27歳、ドナヒュー子爵家の次女で今はブーマー伯爵家で侍女をしています。13歳でブーマー家に上がり、年が近い事もあったのでしょうミーガンお嬢様の専属の侍女見習いとなりました。

 初めて見たミーガンお嬢様はそれはもう可愛らしいお嬢様でした。艶がありちょっと癖のある栗色の髪がくるんと巻いて、小さいお顔にはちょっと垂れ目のヘーゼルナッツのような榛色のお目目、上品で可愛らしい少女らしいデイドレスを着たお身体は細く、抱きしめたら容易く折れてしまいそうでした。


「わたしはミーガン、あなたが私の侍女になってくれるジェシカ? これからよろしくね」


 と初めての紹介の時ににっこり笑って私を見上げてきて私の心臓は撃ち抜かれました。

 実家には実直な兄としっかり者の姉、うるさく走り回る弟が二人いましたが妹はいませんでした。

 ミーガンお嬢様を目にした時、私は勝手に決めました。この私の妹を私が何が有ろうとしっかり守っていこうと。それは今日も忘れられず私の胸に残っている思いです。




 お嬢様は外の景色を眺め物憂げな表情を浮かべています。永く居た修道院を離れ、惜別の気持ちに囚われているのでしょう出発してから今まで話しかけずにおきました。

 ですが、そろそろ町が見えてきました。


「お嬢様、本日はこちら領地の男爵様の館に逗留の依頼をいたしております」


「解りました。私からも昨日知らせを出してあります。着いてご挨拶したら近隣の畑に『大地祝福:テラ・グレイス』を掛ける話もしなければなりません」


「‥‥お嬢様は本当に『大地と農耕の神』の神官になられたのですね」


 5年前、そのことの連絡を神殿から受けた伯爵家は一騒動有りました。

『大地と農耕の神』といえば主神である『光と創造と繁栄の神』の次に信者が多く勢力のある神です。家の中からその神官が出ることは喜ばしい事であり、神殿との繋がりも深くなります。

 旦那様は神殿との繋がりを太くするために動き始め、奥様は還俗させて呼び戻そうと動かれ、小侯爵様は二人を何とか宥めていました。


 冷静に考えれば『大地と農耕の神』の修道院にいる修道女が神官になったという事ですので対外的には状況に大きな変化はありません。


 しかしもう二年、修道院にいる娘から手紙の一枚も来ないのです。旦那様も奥様も喧嘩別れしたことをとても悔やんでおられました。


 ここで唯一、お嬢様との連絡手段である侍女長が動きました。


「旦那様、奥様、次に出すお手紙でお嬢様のお気持ちをお聞きしてみます。その返事によってどうするかお考えいただくのが宜しいかと」



 ***


 ミーガンお嬢様

 必要なものはございますか?

 また、何か変わったことはございますか?


 ***


 侍女長

 封筒と便箋、大き目の肌着を三着お願いします。

 日々、変わらず心安らかに過ごしております。


 ***



 その返信によって伯爵家の騒動は終わったそうです。

 お嬢様が心安らかに過ごされているなら外部からはもう何も言うまいと。

 私は人伝に聞いてお嬢様を還俗させるチャンスだったのにと臍を嚙みましたがお嬢様の気持ちも大切にしたい気持ちもあり、複雑でした。


「そうね。初めに伝えておくけれど、これから王都に戻る間、私の立場は『還俗した元修道女の伯爵令嬢』と『大地と農耕の神』の神官の二つになるわ。町々では教会や町の有力者に招かれることもあるし、男爵領での『祝福』もそうだけど怪我や病気の方がいた場合はその治療も行ってゆきますから行程が予定通りにいかないこともあります。伯爵令嬢と神官の立場にどちらが上も下もない事を知っておいてほしいの。これは後で護衛の騎士たちにも伝えておくわ」


「解りました。お嬢様、その、失礼になるかもしれませんがしっかりして落ち着かれましたね」


 本当にあの優しくてどちらかという優柔不断で自分で何かを決めることが得意でなかったお嬢様が‥‥。


「っふふ、私ももう25歳よ。ジェシカが知っている18歳の頃とは違うわ」


「その7年をお嬢様のお側でお仕えできなかったのが残念でなりません」


「‥‥そうだ。そのお嬢様も変えましょう。25歳でお嬢様っていうのもね。これからは名前で呼んで」


 そんな、お嬢様はいつまで経っても私のお嬢様です。

 ですが、お嬢様がそう望むなら致し方ありません。


「‥‥解りました。ミーガン様」


 馬車は小さい町中に入ってきました。

 昨日来たときは大騒ぎでした。ここらでは見ない立派な馬車と四騎の騎馬、何人かの大人たち仕事を放りだしてひれ伏し、子供たちは騎馬の後ろを追いかけ回っていました。

 今日は男爵が触れを出したのでしょう深々と頭を下げるのみです。


 男爵家の館前では男爵様と婦人と5歳くらいの男の子、使用人が並んで礼をしています。

 昨日泊まった時に聞いた話では男爵とお嬢様は顔見知りでこちらの館にもお嬢様が来たことがあるという事でしたので数人の男性使用人たちの様子に目を配らせます。

 礼を解かれた後も必要以上に顔を上げず、お嬢様を視界に入れないようにしているようです。きっと事前にキッチリ言い含められているのでしょう。

 しかしこのお嬢様の女神のようなお姿を視界に入れないというのはそれはそれで無礼の様にも感じてしまいます。

 どうするのが正解なのでしょう?


「ミーガン嬢、ようこそいらっしゃいました。大したおもてなしも叶いませんが、どうぞごゆっくりお過ごしください」


「この度は急なお願いで申し訳ありませんがよろしく‥‥」


「ミーガン様! 本当にいなくなっちゃうの?」


 お嬢様が男爵様に返礼しているところに男爵様の足元から男の子が飛び出してきてお嬢様の膝に抱き着き見上げています。


 あぁ、知っています。

 お嬢様はこういう可愛らしい男の子にお願いされると弱いという事を。

 小さい時からそうでした。

 子供たちのお茶会に行っても、わがままや駄々を捏ねる小さい男の子が居ればその相手を良くしていました。


 膝を落として髪を撫でてあげながらやさしく抱きしめてあげているお嬢さまの顔はとても幸せそうで止めることも憚られます。

 まだ、5歳くらいで純粋な気持ちしか持っていないでしょうから問題ありませんが、これが意味が解ってやっているエロガキならしばき倒しているところです。

 ですが男の子の顔はお嬢様の豊満な胸に埋もれてしまっています。

 後々これはこの子のトラウマになったりしないでしょうか?

 こんな最上級のお胸に顔を埋めてヤダヤダと顔を振って、羨ましい‥‥あれ、私はそういう風な趣味はございませんよ。ありませんよね?


「ヤダ!」


 見かねた男爵様が近寄って来て男の子の両脇に手を入れひょいと持ち上げて行きます。


「息子がご無礼を働きました。申し訳ありません」


「気になさらないでください」


 愚図る息子を使用人に預け、男爵様は館に私たちを招き入れます。


「手の込んだ物はありませんが、夕食には神の祝福を受けたこの地の野菜や果実の料理をご用意いたしましたので、ご堪能ください」



挿絵(By みてみん)



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