卒業。
北風の中に春一番が混ざり、寒暖を繰り返しながらもどんどん暖かくなる3月。
この時期は雨も多く、植物たちの先々の季節の為の恵みの雨になる。
その雨を受けるたくさんの植物たちの中の梅も終わりを迎え、桃の花が可愛く咲き、桜の蕾も膨らみ、ちらほらと花を付ける頃・・・
その頃は色々な人の人生の分岐点が多い季節でもある。
「むっちゃーん、受かったw」
「あー、ATV(地元ローカルTV)で名前見たよ、おめでと。」
「なーんだ、つまんない」
「いいじゃん、TVに名前乗るんだからw」
昔はネットなど無い時代だったから、地方のローカルTVで学校ごとの合格者が放送されてた。
バックが学校の画像でBGMが校歌。そこに合格者の名前が延々と出てくる異様な番組だ。
「これでむっちゃんと一緒の学校だね、」
「1年だけだけどな、」
「年だけは追い越せないからなあ・・・」
「まあ、うちの学校の高校生活を楽しんでくれ、面白くないかもだけど、」
「そう言えば制服頼んだよ。」
「んじゃ早速制服えっちかあ!俺の糊付けでパリパリになっちゃうな・・・・」
「むっちゃん・・・・・」
「晶子達が入れば俺らも次は卒業か、どうなんのかなぁー・・・」
月日ってのはどんどん過ぎて行くのだ。
受験の結果、晶子は泉美高校商業家庭科に合格。信男と美紀と和の妹の美玖は光農業高校合格。
残念ながら、秋雄ちゃんの妹の正絵ちゃんと斉藤恵子ちゃん、トシの彼女の友惠ちゃんは若女へ進学となった。
皆、別々の進路とはなるが、女子達は意外と結束があって学校が離れても意外とつるんでたりする。
なので、別れと言うより交友の和が拡がって行く・・・そんな感じだ。
そして、進路が決まればあとは卒業式を残すばかりとなる。
「むっちゃん!バイクで学校迎え来て?」
「卒業式は保護者来るのに流石にそれは出来ないだろ・・・・」
・・この頃は校内暴力で荒れた時期で、中学校の卒業式に何故か警察も来ていた・・って時期。
晶子の時期はそうでもなかったのだが、その前年の代は荒れていて、先生の前にいきなり2Fから机が落ちて来た。とか、
先生と殴り合い・・とかバイクが校庭に侵入は日常茶飯事であった。
俺の代の校内では卒業式は何もなかったけど、三中の奴らが二中にバイク数台で乗り込んできて、二中の皆で卒業記念の紅白饅頭をぶん投げまくった。てのがあった位かねえ・・・・
桜の花の咲く3月の或る平日、若葉第二中学校の入り口に「第OO回卒業式」と言う看板が掲げられた。
晶子たちもとうとう卒業となる。
父兄や来賓、はたまた警察も来ているので俺はちょっと離れた所で待機。
学校から出ていく卒業生を晶子を待ちながらぼーっと眺める。
皆でワイワイ笑顔な胸に花を付けた集団、
泣いてる女子達、一人で卒業証書片手に帰る奴、様々な人間模様がある。
俺は1人で・・って奴だった気がするなw
そのうちに晶子さん達集団が来た。
良くドラマでは男女一緒で・・・ですが、なんで男子は男子、女子は女子で固まるんですかね?
「おー、揃ってるね皆。お疲れ。みんなおめでとさん、少しは泣いたか?w」
「ううん、全然w むっちゃんさん、ありがとね。これで中学校で会うのは最後だね、」
「いや溝口家で会うだろけどな(笑」
「むっちゃーん、終わったー!次はおな高だよ。」
っと胸に花を付けた晶子が笑顔で俺の所に来た。
「花束後輩から貰ったべ?あと卒業証書は?」
「荷物全部親に渡した。」
「・・・邪魔になるけど晶子にこれ・・卒業おめでと、」
最近付けたロケットカウルの中に隠しといた凄く小さい花束を上げました。薔薇2本とカスミソウちょっとのw
「バイクじゃ邪魔になるからなあ・・・その大きさだw」
「うわ、嬉しい。ありがと」
友達は「彼氏優しいねーヒューヒュー」
「私らにはー?」とか言ってます。
「だべ?おめーらのはバイクじゃ持ってこれねーべ、人数分w」と言っといた。
晶子はバイクに「よっ・・・と、」と乗り込みヘルメットを被ります。
「んじゃな、皆。また溝口家でな。新しい制服姿俺に見せろよ。それ見たら惚れっちゃうかもしんねーけど、」
と言ってエンジンを掛ける。
最近はCBXも水色塗装のタンクセットを外し(集会仕様)2型の黒/赤塗装のタンクセットにテールカウルだけBEETに変えた。
それにコミネのデュアルカウルを純正カラーにして低めにセットしてレーシーにした。
「んじゃ行くか・・花束はロケットのステーの所に付けとくわ、」
「卒業記念のバイクって感じだねw」
「んじゃ卒業記念にご飯いく?」
「うん。」
エンジンを掛け、中学校から若葉町駅近くまで晶子の通った通学路をなぞり、駅からは道を替え兄貴たちのたまり場の1つであるステーキ屋さんに向かう。
晶子が中学校の制服でCBXへ乗るのも今日が最後。
「バイクに花束飾れて走ってるのって卒業っぽくていいね、」
「カウルからちょっとしか見えないけどな、」
他の中学とかも卒業式だったのだろう。町には花を胸に付けた学生が多くいて、それを見る様にしてバイクを走らせる。
駅から5分程度で店屋に着く。
バイクを止め、ステーキハウス「マウンテン」へ花束持って入る。
「カランカラン・・・」「こんちゃーっす」平日なので先輩たちはいなかった。
柔兄貴の同級で副店長の洋子さんが
「いらっしゃい。あれ?今日二中の卒業式?私なんかもう5年前か・・・年取る訳よねえ・・・」
と、言ってた。
「貴女まだ20歳でしょ?」と突っ込みたくなりましたがね・・・
「洋子さん取り敢えず今日あるお勧めのケーキを2つ、卒業記念でw」
「はーい、」
その後、色々と晶子と話をした。
女の後輩から「憧れてました」とか「寂しいです」とか言われて色々花束を貰って嬉しかった事・・・
なんでも、俺と2人で街をバイクで流してる姿に憧れてた子もいるって、
前に晶子が俺と千恵に思った事じゃん・・・・言わなかったけど、
寄せ書きじゃないけど1枚づつに分かれる可愛いノートにクラスの一人ひとり全員分1枚づつ書いてもらったり、書いてあげたりした事・・・
友達と学校がバラバラになるのがちょっと寂しい事・・・・
色々と話していた。
でも高校とは違いまだ皆地元から離れる訳じゃないからなー・・・バス通だから若葉駅で会うだろし、
「で、男子から告白とかされた?」
晶子がニヤニヤしながら
「むっちゃーーん?もー、焼きもちー?w」
っと言われたので「そりゃー気にはなるだろ、」と言っといた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺の時ってどうだったんだろう?
高校が決まり、同級との別れも新しい出会いもなにも深く考えずに流れに任されるように生きてた気がする。
まあこの位の年齢の奴は皆そうだとは思うけど、
不安も無かったけど希望も無かった気がするなあ、
あ、「彼女作りたい」ってのはあった(笑)
1年の時は彼女出来なかったけど2年で「転生」っぽい出来事が出来た結果、千恵と付き合い、そして別れ、今は「晶子」がいる。
転生前は1人でいる事が当たり前になり「1人でいる事の寂しさ」、「他人と同じことを経験する楽しさ」色々な人間らしさが消えていたんだよな・・・
その発端はその高校入学からの「流れで生きてたせい」なのかもしれないよな・・・
そう考えると前世よりはましな面もあるのかな?クラスでも、学校でも。
漠然としてるけど、前世より少しでも良い風に変わって行くようにはしないとだなあ・・・
「・・・・むっちゃん、むっちゃん、どうしたの?ぼけっとして、」
「あ、晶子と付き合って良かったな、って思ってた。」
「あー、私って凄く可愛いからねwそれででしょ?」
そう言われた。
そして2人で顔を合わせて笑うのであった。




