咲耶とクルードの好物2
「たっだいま〜って、なんや先に夕食しとったんかいな?」
勢いよく居間の扉を開けて、カザミが帰ってきた。
「ん? 遅い帰宅じゃったな。まだ食べ始めたばかりじゃから、文句を言う暇があるなら、お前も空いている席に着かんか。」
大きめの器に野菜や好物の肉を手早く入れながら、入り口に突っ立っているカザミに声を掛けるクルード。
本日の夕食は、ドゥーロが聞いてきた通りすき焼きになった。
今までは咲耶1人の生活で良かったので、小さ目の鍋でことが済んでいたが、大所帯になってからは鍋の量が断然足りない。
そこは手際の良いクロガネが、何処から調達してきたらしい土鍋を咲耶に提供した。
「この大きめのサイズ、お店に使われているくらいの大きさだね。 それを2つも?」
白地に黒い模様の入った鍋が2つ、キッチンのコンロのに用意するクロガネ。
「本来ならば、もう少し大きめの器がほしがったのですが、探してもこれ以上は無く、取り急ぎ用意致しました。後、もしかしたらすき焼きはクルードが好物なので、足りなくなる恐れがあります。」
「そうなんだ。じゃあ、気合を入れて用意しないとね。特にクルードとカンザールは、力仕事から帰ってくるのだから、肉も野菜も沢山準備しておかないとね」
そう言うと咲耶は、クロガネが補充した冷蔵庫の中から牛肉と豆腐、春菊やネギなどすき焼きの定番の具材を切り分け、すき焼きの準備を済ませてしまう。
「下準備までしておけば、皆が帰ってきてから温めるだけでいいから、慌てる事もないよね。」
「はい。ですが、こんなにも準備していても、クルードに掛かればあっと言う間になくなるのでしょうね。」
その姿を想像してしまったクロガネは、小さなため息を漏らす。
そして帰宅したクルードは、予想通りウキウキとすき焼きが準備される居間に陣取るのだった。
「まあ、人様の好物に口出しはせえへんけど、もうちょい待って欲しかったわぁ〜」
そうぼやきながらも、空いている席に腰を下ろすカザミだった。




