咲耶と自分の好きな物
「よし、こんな所じゃないかな」
「これはこれは……、やはり練習とは必要なのですね。」
咲耶の能力のおかげで、ゆきから受けた深い傷は跡形もなく塞がっていた。
自信なさげな咲耶に対して、クロガネはちょっと失礼な発言をこぼす。
「まあ、何事も練習は必要だと言う事だね。能力でもそうだし、お菓子作りや料理だって同じ事が当てはまるでしょ?」
「そう…ですね……。やはり練習を頑張りさえすれば、上達するのです。」
「そうだね?」
なんだか咲耶とクロガネで、練習という意味合いに温度差が感じられるが、そこはあえて気にしない事にした。
「さて、これでやっと居間に行っても周りの者たちからは変な目で見られる事はなくなりました。」
「でも、今からだとお茶の時間と言うより、晩ご飯の時間に近いよね。他の皆はまだプランター作りをしているの?」
「はい、カンザールとクルードはプランターの枠造りで、カザミはホワイトになり情報収集を兼ねてギルドに顔を出しています。」
咲耶が里に行っている間にも、着実にプランター作りは進んでいるようだ。
でも、カザミは何故このタイミングでギルドに行ったのだろうか。少し気になった咲耶は、カザミの事を尋ねてみた。
「そういえば、どうしてカザミはギルドに?」
「ああっ、それはカンザールの助言があってですね。登録したばかりのホワイトならば、こまめに顔出しし依頼を受けた方が印象が良くなると言われたのですよ。まあその他にも、我々に必要な情報が集める事も出来るし、一石二鳥と言う事です。」
咲耶達は大地再生の為に、篭りがちな作業が多い。やはり1人くらいは外側の情報を得る事が出来る人物が必要なのだ。その点、カザミはうってつけである。他の者と摩擦なく周りに溶け込む技術、周りに少し壁を作る咲耶も見習わねばならない所であった。
「じゃあ、晩ご飯は私が作ろうかな。クロガネにも迷惑をかけてしまったから、お詫びの意味も込めてちょっと頑張ってみるよ。クロガネは何が食べたい?」
「え? 私ですかーー」
咲耶の不意打ちの質問に、戸惑ってしまうクロガネ。
「和風でも洋風でも良いよ。多少難しい物でも本を見ながら作れると思うし。」
「そうですね。ん〜、悩みます。」
自問自答するクロガネに、ちょっと冷たい視線をむけるゆきの姿があった。




