咲耶と青年の名前はー
「ふふっ。嬉しいなぁ〜。咲耶と一緒のペンダント!」
「ほら、着けてあげるから大人しくしていてくれる?」
「うん。」
青年の弾む姿に、悪い気はせずにいた。
青年の首元で虹色に輝く水晶のペンダントが、軽く揺れる。
「この世界で、咲耶と2人だけのペンダント!」
水晶に触れては、ニコニコと破顔している青年に、無くさない様にと言いくるめる。
「今回は上手く出来たけど、次も同じ物が出来るとは限らないから、無くさない様にね。さて、そろそろ本当に帰らなくては……」
あまりにも長居してしまい、クロガネ達が捜しに来かねない頃合いになってきた。
まあ、扉を使えばあっという間なのだが、遅すぎる帰宅は、追及される原因にしかならない。
「そっか……。じゃあ、またここに来た時、時間があれば会ってくれるかい?」
「まあ、私の作業を邪魔しなければ、居ても良いけど、観ているだけでは退屈なんじゃないの?」
「そんな事はないよ」
咲耶の問いに、勢いよくかぶりを振る青年。
「咲耶と一緒に居たいだけだから、隣りにいさせて?」
ね? っと、首を軽く傾げながら頼み込む青年に、咲耶は少し見惚れる。
咲耶の周りには、美形に近い者達が揃いぶみしている為、見慣れている筈だったが、青年と居る時だけは少し落ち着かなかったり、気持ちが安らいだ様になる。アンバランスな感覚になる咲耶。
それがどんな名前の感情なのか知る由もない咲耶。とりあえず今は、隣りに居る時間を共有できる事が素直に嬉しいと思う事にした。
「じゃあ、今日の所は本当に帰るから。また時間をつくって来れる様にするね。」
「うん。楽しみにしてるよ。」
扉に手を掛ける咲耶に、手を振って見送る青年。
空間を繋いだ先では、クロガネの声が微かに聞こえる。やはり咲耶を探していりようだ。
「じゃあね……って、あれ? もう居なくなってる……」
一緒の間に姿を消してしまった青年。名前を聞きそびれてしまった事に今更ながら気がつくが、また、次の機会に聞く事にして、現実問題に向き合うのだった。




