咲耶と気になる青年
「その本の中身は何が書かれているの?」
「興味があるの?」
咲耶は突然現れた青年に驚くが、この場所が黄竜の里である事を思いだし、精霊や人外のものかもしれないと考えた。
「貴方はカーモスの知り合いなの?」
「ん。知ってるよ。随分と昔からの知り合いさ。それよりもさ、こんな所で1人で読書なんて淋しいだろ。良かったら一緒に見させてくれないか」
カーモスの知り合いと言う青年は、咲耶が何か言う前に横に座り、咲耶の本を食い入る様に見つめる。その視線は、大好きな物を見つけた者の特有の眼差しだ。
咲耶は1人の時間を早々に諦め、一緒に見れる様にゆっくりとページを開いてゆく。
青年には地球の字が理解出来ない為、興味ある形をした石や不思議な色合いの石があれば、咲耶に説明を求めてきた。
最初は自分の時間を奪われて嫌々だった咲耶も、青年の熱心な問いかけに対して次第に笑顔で答え初めていた。
そうする内に空が夕闇に染まり初め、時間がかなり経過している事に気がつく咲耶。
「もうこんな時間なのね。早く帰らないとみんなが心配して探しに来るかも?」
「え〜、もうお終いなの? もっと知りたい事がたくさんあるのにー」
咲耶の言葉に青年は憤慨していたが、何か良い事を思いついたのか、表情をすぐに変え咲耶に問いかけてきた。
「ねえ、カーモスから聞いたんだけど、君って絵を実体化出来るんだろ?」
「まあ、出来るわね。」
「じゃあさ、今日出会った記念に何か石を創ってくれないかな?」
青年の突飛な申し出に、咲耶は断りを入れようと考える。今日会ったばかりの者にそこまでしてやる義理は無いと思ったからだ。だが、最終的には咲耶は折れる事にした。
それが何故なのか自分でもよく分からないのだが、叶えてあげても良いかって気持ちになっていたのだ。
「じゃあ、どんな石がいいの? 貴方が今求めている事を教えてくれる?」
「分かった。それじゃあ……」
咲耶の質問に青年は、色々と注文をつける。色合いは綺麗で、もっと咲耶と仲良くなれる様にとか、癒される石が欲しいなど、際限無く求めてき始めたので、咲耶は3個までに決めさせる事にした。
「え〜、ちょっと少な過ぎない?」
「いいえ、それ以上創っていたら帰りが遅くなって、仲間たちが探しに来てしまうわ。」
「分かったよ。じゃあ、これとかどうかな?」
落ち込んだと思ったら、直ぐに態度を変え咲耶に聞いてくる青年。本当に変わった人物だと思いつつ、石選びに付き合ってやる咲耶だった。




