咲耶と4人の密談
「クロガネはん、例の件の報告は何かきとりますか?」
「いや、眷属達に証拠集めをさせていますが、未だに犯人像が掴めていない状態です。ですが、私はあの者ではないかと思っています。」
「もしかして、ウチら2人が知ってる奴?」
カザミの言葉に、クロガネは力強くうなずく。
クロガネ達は今、クルクリにあるカンザールの酒場で話し合いを行なっていた。
咲耶の家で話せば、いつ咲耶に聞かれるかもしれないという危険性がある為だ。
口実はクルード達が食事をとりに帰って来ないからか、心配なので差し入れをするというのが建前で、本当は今クルクリの街で広がっている話の信憑性を確認しにきた為だ。
「貴方の方は如何でしたか? 冒険者ギルドは動いていましたか?」
カンザールの職場から勝手に酒とグラスを拝借し、2人分の酒を用意していたカザミ。
氷の入ってないグラスをクロガネに手渡しながら、かぶりを振る。
「あれは側から見ても動いてまへんわ。冒険者達は噂話が好きやから、酒のつまみ程度の興味話やし、獣人やエルフの冒険者は落胆しとったわ。」
カザミからグラスを受け取り、一気にあおる。クルクリの酒はカザミの持つ酒には到底及ばないが、素朴な味わいが気に入っているクロガネ。だが、今の状況では味わって呑むことすら出来なかった。
「もしも、もしもやけど。ウチらの予想しているアイツが犯人やって分かったら……」
「ふっ、その先は愚問でしょう?」
カザミ達のグラスが木っ端微塵に砕け散る。冷たく刺すような殺気に、庭で作業をしていたクルード達が様子を見にやって来て程だ。
「あーー。この状況は、お前たちも知ってしまったんじゃな?」
「そうかもしれませんが、我が酒場の備品を壊すのは勘弁していただきたかったものです」
やれやれとため息をこぼす育成組の2人に対して、冷たい視線をぶつけるクロガネ達。
「で、今後の方針はどうするつもりなんじゃ? それを話し合う為にワシらに差し入れするという体裁を作って来たんじゃろう?」
「はい。今後の事ですがーー」
その後4人は、ドゥーロが呼びに来るまで、綿密な打ち合わせをしたのである。
今、4人の中にあるのは、『咲耶を悲しませる原因を早急に取り除く!』この一言に尽きるのであった。




