咲耶と街の噂
***クルクリの街の噂***
最近、冒険者や商人の間で噂話が広がっている。それは、街外れの枯れ樹が青々と葉を茂らせ息を吹き返していると言う。
だが、街の住人ならば、この樹が枯れて早十年近く過ぎている事を知っていた。
ただでさえ街のシンボルの世界樹すら枯れているのに、街外れの枯れ樹が甦える筈がない!と、連日数人の見物人が出来ていた。
その中には、カンザールと親しい冒険者や人には姿を見せない精霊達もいた。
「なあ、こんな事が本当に?」
「自分の目で見ても信じられんがな。だが、事実だろ?」
一種の肝試しの様な有り様になり始めた感があるが、街の住人たちはこの不思議現象を事実として受け止め始めていた。
だが、どこの街にも陰は少なからずあるものだ。
「大変ですーー」
風の精霊達と仲が良いカンザールの元に、1つの情報がもたらされたのは、プランターの大まかな作業を終え、咲耶の力を借りる段階に来た時の事であった。
日々の日課に、なり始めた黒曜石砕きをやっていると、突如カンザールの周りが風に包まれる。カンザールは髪を抑え大人しくしていたが、次の瞬間にはクルードの元に走りだしていた。
「なんじゃカンザール。血相を変えよってからに……。何か精霊達が言ってきたのか?」
「そうなんです。咲耶様が癒してくださった街外れの樹が、何者かに切り倒されて樹の本体は打ち捨てられているようなのです。
「ほう……、せっかく咲耶様が活かしてくださった樹に対して、誰が馬鹿な事をしたんじゃ?」
カンザールよりもたらされた情報に、クルードの手元にあったレンガが脆く崩れてゆく。
その現場を目撃したカンザールは、顔を蒼白にしながらも目撃者が居ない事を告げ、冒険者ギルドも原因究明に乗り出している事を告げた。
「そうか……。じゃが、この事が咲耶様の耳に入っては、非常に悲しまれるぞ?」
「はい。わかっておりますよ、クルード」
ーーーはぁ〜ーーー
2人の間に深いため息が漏れるのであった…




