9話・偽りの教師
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「何を言ってるの水野さん。もしかしてなりきりゲームかな? 先生が犯人役かしら?」
「とぼけないで。ゲームなんかじゃない。」
「だったら証拠でもあるの? 先生疑われると悲しいわ……。」
姫香の言っていることは戯言だと言わんとする二瀬先生に、姫香は根拠を述べた。
「魔物発生装置が現場にあったわよね。あれにあなたのマナを感じたわ。」
※マナとは魔法を使うための個人ごとの固有エネルギーである。
「そんなものがあったの? でも見つからなかったわよ。後日検証では森から熊の魔物が突如発生したって聞いたけど。」
「それはあなたが隠蔽したからでしょ。私とひながそれを見ているわ。」
「天宮さんは何も言ってなかったわよ?」
「それは、ひなが戦いの後に即気絶して入院したから言わなかっただけよ。少なくとも私は見たし、あの時魔物発生装置と敗れた結界のマナは一致していたわ。」
「だったら、なんで今なのかな? 事件当時に説明すれば良かったわよね。」
姫香の根拠があったとしても今言うのはおかしいと二瀬先生は突っ込む。
「当時はあなたのマナを知らなかったからよ。あなたは普段は魔法を使わないからつい最近知ることがあっただけ。」
「最近?」
「ええ。この前私たちの背後から隠れて見てたわよね。普段は全く見せようとしないマナが漏れ出てたわよ。」
「!?」
姫香はこの間に陽菜が秘密を告白してくれた後に後ろから見ていた不審な人物に気づいていた。さらに、それが二瀬先生であることも知っていた。
「まさか、隠蔽魔法を使っていたのにバレていたとはね。凄いね〜水野さん。2年前は落ちこぼれだったあなたがここまで成長するとは思わなかったわ。」
「認めるわけね。」
「ええそうよ。私があの魔物を作ったの。まあ、正確に言えばあの魔物は天宮さんが起動したときにできたから私は装置をあの場所に設置しただけだけど。」
「じゃあ私はこれで。初級・閃透」
姫香は証拠を取れたので帰ろうとした。勿論魔法を使って迅速に。罠は二瀬が来るまでに調べており無いはずだった。
「逃げられないよ?」
「なっ……! どうして。扉を通り抜けられない!?」
「ああ、ごめんごめん。中級の隠蔽魔法使ってるから分からなかったか。じゃあ解除するね。」
二瀬先生が魔法を解除した後、姫香は周りを見て絶句した。
「中級!? ……それに植物にこの部屋が覆われている!?」
「そうだよ。私の得意属性は植物系。隠蔽魔法はあくまで魔道具を使ってるだけ。今まで児童達には初級魔法程度しか私は使えないって言ってたけど嘘よ。もう逃げられることは無いわよ。そうだちょっとスマホ借りるわね。」
二瀬先生は姫香のスマホを取って陽菜にメッセージを送った。
「天宮さんにこの部屋に来るように送ったわ。どうせあなたが、私の手伝いは今日じゃなくなったとか言ったんでしょうけど。」
「ひな、来ちゃ駄目……。」
「早く来ないかしら! 楽しみだわ~!」
二瀬先生のことを甘く見ていた姫香は激しく後悔した。
「まだ殺さないの?」
「ん? ああ、あなたのこと? 安心して、天宮さんが来たら目の前であなたのこと殺してあげるから。」
(ひなが来る前に何か策を考えないと……。)
姫香の初級魔法程度ではこの部屋から逃げられないから拘束するだけ無駄と思っているのか二瀬先生は鼻歌を歌いながら何もしてこない。
――20分後
「二瀬先生〜。遅れてすみませんでした!」
そう言って陽菜は入ってきた。
「天宮さん、大丈夫よ〜。あれ? 相沢さんも来てくれたのね。」
「はい。陽菜が急に走り出したので付いてきちゃいました。」
「ひな、葵逃げなさい!」
急に姫香の声が響くと入り口のドアに植物が出てきた。陽菜達が入る前に一度部屋の中を隠蔽魔法でまた消していたようだ。
「これはどういうことですか、先生?」
陽菜が呆然と立ち尽くしていると隣の葵が先生に疑問を投げかけた。
「天宮さんへのサプライズよ~!」
「先生、いつもと雰囲気違いますね……?」
二瀬先生が答えると、いつもと様子が違うことに陽菜は不審に思っている。
「天宮さんだけだったら私一人でも何とかできたけど相沢さんもいたら自信ないからこれ使うわね! 上級魔物よ!」
そう言って先生が出したのはウツボカズラに似た魔物。
「……っ! 中級・炎の槍」
陽菜は即座に中級魔法で攻撃すると弱点なのかそこそこ効いているようだ。
「思っていたよりも何倍もあなた出力が高いわね。並の使い手の中級魔法だったら弱点だとしても効かないはずなのに。だったらこうしようかしら?」
「きゃっ!」
二瀬先生は陽菜の攻撃を見てすぐに姫香を人質にすることにした。
「先生。あなたは何が目的なんですか?」
葵は中級魔法を撃とうとしていたがやめて聞いた。
「私の目的? それはね、天宮さんの絶望した顔を見ることよ。」
「え……。」
予想もしていない二瀬先生の言葉に陽菜は言葉を失った。
「私はね、子供がだーい嫌いなのよ! 特に天宮さんみたいな人な優等生はね。」
「そんな……。嘘ですよね……先生?」
尊敬していた二瀬先生からの嫌いという言葉に陽菜はひどく傷ついた。
「天宮さんは気付いてないかもしれないから言うと、2年前の魔物は私が天宮さんに作らせたのよ?」
「どういうことですか、先生!」
二瀬先生が言った衝撃の事実に言葉の出ない陽菜の代わりに葵が詰め寄った。
「あの時の計画のパターンは水野さんが先に結界外へ行ったことで崩れたわ。本来は先に私が天宮さんに言って外に行ってもらい魔物に殺されるパターンと、あのまま気付かずに他の犠牲者が出た後、天宮さんに『あなたが作ったのよ』と言って絶望させるパターンだったのよ。」
「嘘だ……。嘘だ! 先生はそんなこと言わない! あなたは偽物の先生だ……!」
陽菜は二瀬先生の言葉を拒絶して偽物だと決めつけた。
「偽物なんて悲しいなあ。」
「先生。なんで陽菜なの? あなたの言動からすると一番のターゲットは陽菜であるように聞こえるんだけど。」
「それはね、天宮さんが眩しいくらいの存在だからよ。私とは正反対で……。」
「キュエエイィィィィィー!!!」
「え?」
葵の質問に二瀬先生が想いを馳せていると突然、魔物が暴走し始めた。
「どういうことなの!? ……まさか天宮さんの魔法によるダメージが大きくて形を保つために暴走しているというの!?」
二瀬先生は自問自答している。
「先生! 暴走ってどういうことですか?」
「あなたが作ったんなら止められるでしょう。」
葵と姫香が困惑していた二瀬先生に向かって言った。
「駄目よ。元々中級魔法が限界の私にこの上級魔物を作る力は足りてなかった。だから長い日数をかけてゆっくり少しずつ作ったわ。だから通常時は命令は聞くけど暴走時なんて不可能だわ!」
「そんな危ないものなんで作ったのよ!」
「暴走なんてほとんどない事例だもの……!」
姫香は非難を浴びせたが二瀬先生も予想外の事態だったようでパニックになっていた。
「えっ!? ちょっと待っ――。」
二瀬先生が暴走した魔物に突如丸呑みにされた。それと同時に入り口の植物の力が弱まり開いた。
「自業自得ね。ひな、葵逃げるわよ。」
「そうだね……。陽菜、立てる?」
「……。」
姫香と葵は逃げるために陽菜を立たせた。しかし、
「……。ひめちゃん、葵。まだ、先生は生きてる。私、先生を助けたい!」
「ひな、何を言って!? 助ける意味なんてないじゃない!」
「意味なんてないのかもしれないね……。でも、私は助けたいの! 先生は確かに悪いことをしてたし幻滅もしたよ。でも、先生の言ってることが全部正しいとは思えない! だって、この3年の間先生と過ごしてきたけどすべてが偽りの気持ちで接していたとは思えないもん!」
「陽菜、仮に助けたられたとしても後悔するかもしれないよ。」
「後悔したっていいよ。私は先生に罪を償ってまた戻ってきてほしいから!」
「……分かった。協力するよ、陽菜。いいよね、姫香?」
「それがひなの選択って言うのなら異論は無いわ。」
「ありがとう……! 二人とも!」
陽菜は今まで過ごした先生との思い出に突き動かされる。姫香と葵はその思いに応じることを選んだ。
果たして、陽菜の選ぶ「選択」が正解となるのだろうか。




