7話・幼少期の回想
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陽菜と葵は幼馴染である。葵が5月に生まれ、陽菜は翌年の2月に生まれた。元々陽菜達の母親同士が旧知の仲だったので自然と交流があった。
葵は陽菜よりも成長が早い分、陽菜のことを妹のように可愛がっていた。陽菜もそんな葵に対して姉、またはそれ以上に感じていた。
幼稚園に入園してから年少の頃は他の友達と一緒にいつも通り楽しく過ごしていた。だが、年中になり葵と別の組になってから歯車が狂い始めた。
――年中
「葵とお別れやだ……。」
「陽菜、組が別になっても休み時間は来るし、帰ったら一緒にいられるから大丈夫だよ。」
葵は陽菜を元気づけるために優しい口調で諭す。陽菜はこの言葉を聞いてもしばらく泣いていたが泣き疲れると渋々納得した。
「ねえ、あなた陽菜ちゃんって言うの? かわいい~。」
「お友達になりましょうよ。」
「一緒に遊ぼ!」
「うん!」
陽菜はすぐに友達が出来た。可愛いので色んな子にモテているようだ。
最初の頃の休憩時間は葵が様子を見に来ていたが、陽菜に友達が増えると安心したように来る頻度が減っていった。陽菜はそれに気づいていたが、帰った後は一緒に過ごせるし、葵自身も別の組の友達との付き合いが大事だと自身に言い聞かせていた。
「ねえ、この服可愛いよね~」
「可愛い〜。この雑誌どこから持ってきたの?」
「先生の机の上に置いてあったの!」
「陽菜ちゃんはどう?」
「うん、可愛い!」
「そういえば、陽菜ちゃんって好きな人いるの?」
「え? みんな好きだよ。」
「そうじゃなくって恋愛としてだよ!」
「そうそう、陽菜ちゃん天然だね。」
「うーん。分かんない!」
「そうなんだ。モテるのにもったいなーい。」
「私もモテたいなー。」
「きゃはは、むりむり。」
「そういえば、隣の組のあの子ダサくない。」
「分かる! なんか無理して着てる感あるよね!」
「……あはは。」
陽菜は話を合わせていた。
ある日、『世界解答』が無意識に発現した。この時の期間は脳の負担もなく自分の意志とは関係なく発動し続けていた。
「みんな、おはよー!」
いつも通り挨拶をすると。
「陽菜ちゃんおはよう! (また、今日もこの子かわいこぶって挨拶してる。)」
「おはよ! 陽菜ちゃん! (陽菜ちゃんと仲良くして周りの視線集めないと。)」
「今日も元気だね! おはよー! (楽しくないけど目立つためだからね。)」
(えっ? 何この声は……。)
陽菜は相手の本音が見える、聞こえる、脳に直接感じるようになった。
数日たっても一向に治らない。陽菜は、この本音を毎日浴び疲弊し始めるとともに能力に従って相手の気持ちを読み取って行動し始めた。
「そろそろお水飲もう!」
「この本面白かったよ~。」
「この服可愛いよね!」
最初はみんな素直に喜んで
「ありがと~。 (ちょうど喉渇いてたし助かる!)」
「へえ! じゃあ読んでみるね! (面白そうだ~。)」
「かわいい! (センスあるね!)」
しかしだんだんと周りの反応が変わり陽菜がいない時に
「ねえ陽菜ちゃんってなんか不気味じゃない。」
「分かる! なんか見透かされてる気がして気持ち悪い!」
「相変わらずモテるしね~。」
「ねえ、いっぺん陽菜ちゃんにちょっと嫌がらせしてみない。例えば聞こえない振りするとか。」
「賛成! ちょっと怒ってみたりもしてもいいよね!」
「じゃあ明日からスタートね!」
次の日から陽菜は無視されたり、八つ当たりされたりするようになった。『世界解答』のせいかおかげか、初日から嫌がらせをされていると気づいた。日にちが立てば元の関係に戻れると思っていたが、エスカレートしていく。
(なんで、なんで、みんな私をいじめるの……。)
陽菜は元気がどんどん無くなっていく。
(私はもう生きちゃいけないのかな……。)
帰った後、葵や両親の前では陽菜はいつも通りに元気にふるまっていた。
「隣の組の陽菜ちゃんって葵ちゃんの友達でしょ。」
「うん、そうだけど。」
「最近、いじめられているらしいよ……。理由は分かんないけど。」
「ちょ、ちょっと待って! それ本当!?」
「本当だよ。この前通りかかった時見かけちゃったの。」
友達から隣の組の様子が最近おかしいよと言われるまで葵は気付くことが出来なかった。葵が気づいた時には既に限界寸前だった。
「陽菜! 大丈夫!?」
葵が探して回って見つかったのは倉庫の裏。
「葵……?」
「そうよ! 怪我はない!?」
「……うん。」
「何があったの? ううん、とりあえずひとまず……。」
葵は陽菜を抱きしめて安心させようとした。陽菜からの回す手には一切力が入っていない。
「私が悪いの……私が、私……が……。」
それしか言わない陽菜を葵はしばらく抱きしめたまま背中をさすり続けた。
数十分このままでいると、陽菜もだんだん落ち着いてきたようで葵に話し始めた。
「急に全部分かるようになったの。好きとか嫌いとかの情報や、その人だけが知ってる情報や過去。他には複数の未来……。こんな化け物みたいな能力を持った私がすべて悪いの。だから他の子たちが私をいじめるのは当然なの……。」
「そんなこと無いよ陽菜。何があってもいじめる方が悪いの絶対に。」
「葵のことだって全部分かるんだよ? 気持ち悪いでしょ、私のこと……。」
「陽菜! 私は何があってもあなたの味方。だからそんなこと言わないで。」
葵は抱きしめる力を強める。
「陽菜、もうしばらく我慢して。私が絶対にこのいじめを無くすから。」
葵は決断した。何をしてでも陽菜を傷つける物を排除すると。
「こんにちは!」
「なによ。あなた誰?」
「知り合い?」
「いや、私は知らない。」
「私は、隣の組の相沢葵って言います。ちょっと聞きたいことがあって。来てもらってもいいかな?」
「隣の組の子が何の用よ。まあいいわ、私達忙しいんだから手短にしてよね。」
葵は3人を連れて行った。
「率直に聞くけど、あなたたちが陽菜をいじめてるんでしょう?」
「はあ? いきなり何言いだすのよ。」
「こいつ陽菜の知り合い?」
「しらばっくれても目撃者はうちの組にいるのよ。陽菜に謝ったあと今後一切関わらないことを約束してくれたら見逃してあげるけど。」
葵は録音機と小型カメラを持ってきており、相手が不用意な発言をしたらそれで脅して無理やり関わらせないようにするはずだった。
「ふーん。だとしたら何? 何で謝らないといけない訳?」
「そうだそうだ! それにちょっとじゃれ合っただけだし!」
「そうよ。たまたま手があの子の体に当たっただけよ。」
「ちょっと待って! 手ってまさかあの子に暴力を振るったの!?」
葵が聞いていた話では陽菜が無視されたり、嫌味を言われてたことだった。
「だから手が当たっただけよ。」
「あなたたち、陽菜を、誰にでも優しくて、明るくて太陽のようなあの子を傷つけたというの……!?」
「うるさいなあ! ちょっと教育していただけだよ!」
「太陽ってあんな気持ち悪いやつのどこが。」
葵は目の前にいる3人を人として認識できなくなり始めていた。
「そう、話が分からなかったら脅すだけのつもりだったけど。あなたたちみたいなものは存在しては駄目だね……。初級・水刃」
「ひっ!? あなた私たちを殺す気!?」
初弾は外れたが、殺す気で魔法を使って来た葵に3人は恐怖で顔が歪む。
「じょ、冗談だよ! さっきのは! 私たちが陽菜ちゃんに暴力なんか振るうわけないじゃん!」
「そ、そうだよ!! だから話し合おう?」
葵にはそんな言葉などもう響かない。私が犯罪者になってでも陽菜に対して危害を加えたこの3人を消す。それしか頭に無かった。
「次は外さない。あなたたち3人を殺す。初級・水刃――。」




