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5話・姉と妹

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 ある日、少女が陽菜に声をかけてきた。


 「あの、すみません。天宮陽菜さんですよね?」


 陽菜は急に後ろから声をかけられて驚いたが、勇気を出して話しかけてくれたのかなと思って優しく対応した。


 「初めまして。どうしたのかな?」


 「あの、私は水野雫(みずのしずく)と言います。少しお話を伺っても構いませんか。」


「いいよ! ここじゃなんだしベンチにでも座ろうか!」


 (水野って名字はひめちゃんと同じだよね。関係あるのかな?)




 「あの、先ほどは突然声をかけてすみません。私は水野姫香の1つ下の妹なんです。」


 「そうなんだー! ひめちゃ……、姫香ちゃんの妹さんなんだね〜! ということは姫香ちゃんについて何か用があったのかな?」


 「はい。」


 どうやら青い目をした水野雫と言う少女は姫香の妹のようだ。陽菜はどんな用件なんだろうと疑問に思っている。


 「まずは、いつも姉と仲良くしていただいてありがとうございます。」


 「いやいや。こちらこそ姫香ちゃんにはかなりお世話になってるよ!」


 「姉は天宮さんに会ってからとても楽しそうにしていて、2年前の頃とは別人みたいです。」


 「……そっかあ。それならよかったよ!」


 「姉は両親から――」


 「ああ、ちょっと待って! その話は本人から以外は聞いちゃ駄目な気がする!」


 陽菜は雫が姫香のプライベートの核心に触れることを言おうとしていると思ったため制止した。


 「あ、ごめんなさい。そうですね……。浅慮でした。」


 「謝らないで~。」


 雫が申し訳なさそうに俯いたので陽菜はとりあえず話題を変えてみる。


 「そういえば、雫ちゃんって1つ下と言ってたけど、小2ってこと?」


 「はい。そうです。」


 「そうなんだ! 学校生活は楽しめてる?」


 「はい! 友だちもできてとても楽しいです。」


 「それなら良かった!」



 「ひな? なんで雫といるの?」


 話している途中声が聞こえ振り向くとそこには姫香がいた。姫香は嫌悪とまではいかないが嫌そうな表情をしている。


 「ごめんなさいお姉ちゃん。私が天宮さんを呼び止めたの。それじゃ私はこれで……。」


 「あ、うん。バイバイ。気を付けて帰ってね!」


 雫は姫香が来て早々と別れを告げ去っていった。


 「大丈夫! 家庭のことは聞いてないよ! さっきの話はね――。」


 陽菜は隠す方が問題がでるかもと思い正直に話した。


 「それならいいわ……。ううん、本当は私がひなに話すべきだったのよ……。」


 「無理しなくていいよ、ひめちゃん。」


 「話すわ……近いうちに。」


 「うん。ありがとう。」


 姫香は言い淀んだが少し決心したようだ。



――数日後


 「私も来てよかったの?」


 「問題ないわ。あなたはしばらく向こうを向いて壁のように振舞って……。じゃあ、話すわよ、ひな……。」


 「うん。無理そうだったら途中で切ってね?」


 姫香は大好きな陽菜に直接話すのは厳しいので陽菜と姫香の間に葵を挟んで、さらに目を瞑って話し始めた。


 「私の家系は代々、水または氷属性が得意属性よ。今までに一度も青系の目以外が生まれることは無かったわ。私が生まれるまでは。」


 「目?」


 「そうよ、例外はあるけれど得意属性は基本的に目と同じ系統なのよ。続けるわね、私の両親は系統にこだわりが有ったけど実力が有るなら他の属性でもいいと思ってる人たちなの。でも、見ての通り私には魔法の才能が無かった……。」


 「そんなこと無いよ! 現に今のひめちゃんは少なくとも平均以上の魔法の練度があるんだし!」


 「ありがとう、それはひなと出会えたおかげね。でも、当時は生活魔法すら使えない最底辺だった……。両親は嘆いたわ。なんで、私たちの子がこんな落ちぶれた欠陥品なんだって。」


 「っ……!」

 「え?」


 陽菜はあまりに衝撃的な言葉に声すら出ない。葵も壁役に徹していたがつい言葉を漏らしてしまうほどだ。


 「雫は1年半後に生まれたわ。彼女は青色の目で期待されていたわ。魔法のセンスもあってすぐに私を追い越していったわ。両親も私なんかいらない、というよりもただの物として扱い始めたわ。」


 「……。」


 陽菜は聞いているだけでもこんなにも辛いのに、一体姫香はどこまで耐えてきたのだろうと考えると涙が止まらなくなっていた。葵はそれを見て姫香に一旦話を中断してもらおうと思ったが陽菜は制止した。自分よりも辛いのは姫香だという目を見せて。


 「私は死にたかったわ……。いつまでこの地獄の日々が続くのだろうって。でもそんな時に出会ったのがひな、あなたなのよ。」


 「私?」


 「そうよ。私はあの時誰も信じられなかった。自分のことさえどうでも良くなっていたけれど、あなたはずっと私のことを気にかけてくれたわね……。最初はただの偽善者だと思って鬱陶しかったわ。でも、ずっと声をかけ続けてくれた。魔物が出た時だって、自分の命よりも私のことを優先してくれた。私は初めて優しさを受け入れることができた。」


 姫香の声は震えているが先ほどよりも柔らかくなってきている。


 「だから、もう死にたいなんて思ってないわ。ひな、私はあなたと生きていたい。この先もずっと。」


 「ひめちゃん!」


 葵は陽菜の行動を予測して道を空けると陽菜は耐えきれず動いて姫香にハグした。陽菜も姫香も涙を溢れさせながらそのままの状態がしばらく続いた。



 落ち着いた後、姫香は言った。


 「もちろん、葵あなたにも少しは感謝してるわ。」


 「どういたしまして。」


 葵も流していた涙をぬぐい微笑んでいる。




――数日後


 「お久しぶりです。天宮さん。」


 「1週間ぶりかな。誘ってくれてありがとう、雫ちゃん。」


 陽菜は雫に誘われベンチに座っている。勿論、雫に誘われたことは姫香には言っている。


 「この前はすみませんでした。」


 「も~謝るのは禁止だよ!」


 すぐに頭を下げようとする雫に陽菜は笑って止める。


 「姉は両親に宣言していました。『私はこれからどんどん強くなる。誰よりもひなを守るために!』って。」


 「そんなこと言ったんだ……!」


 「両親は唐突なことに面を食らっていました。姉の目を見た時には覚悟に気圧されてました。徐々に両親の態度も変わってきてます。私もその場にいましたがとても嬉しかったです。」


 「覚悟かあ……。姫香ちゃんはやっぱり凄いな〜! そういえば雫ちゃんって姫香ちゃんの事大好きだよね!」


 「えっ! 隠してるつもりだったんですけど。分かりやすいですか……?」


 「分かりやすいよ! だって、姫香ちゃんの話をしている時ずっと声のトーンや顔の表情がかなり活き活きしてるよ!」


 「うぅ……。恥ずかしいです。でも天宮さんと話せて本当に良かったです。最近は生まれた時の頃みたいにいっぱい話しかけてくれるんですよ。内容は魔法のレッスンをしてほしいってだけなんですけどね!」


 雫は楽しそうに笑っている。陽菜は姉妹って大変なんだろうけど良いなあと思った。


 「あ、この後に家庭教師が来るので今日はここで失礼します。今日は来ていただきありがとうございました。……本当に、本当にありがとうございました!」


 「うん! 頑張ってね! こちらこそありがとう! またね!」


 雫の姿が見えなくなるまで陽菜は手を振った。


 「これからも姉妹仲良くなれたらいいなあ……。」


 (今回ひめちゃんの秘密を知ることになったけど……。)


 「私も話すべきだよね。『世界解答(ワールドアンサー)』についてを……。」

登場人物


天宮陽菜(あまみやひな)

若草色の髪色でセミロングのワンサイドアップ。眼の色は緑。

得意属性は火

明るく優しい性格で困っている人を放っておけない。

2月の早生まれ


相沢葵(あいざわあおい)

紺色のロングヘア。眼の色は青

得意属性は水

陽菜が生まれた時からの幼馴染。

5月生まれ


水野姫香(みずのひめか)

黄色のロングヘアで毛先をふんわりと巻いている。眼の色は黄色

得意属性は雷

陽菜たちとは小1で初めて出会う

4月生まれ

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