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4話・陽菜の母

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 「陽菜、あの能力使ったの?」


 葵の質問に陽菜は申し訳なさそうな表情をしている。


 「うん、ごめんなさい。あの時はあの『選択』しか助かる道は無いと思ったから。」


 葵は陽菜の表情を見て焦った。


 「わー、ごめんごめん。責めてるわけじゃないよ。ただ、陽菜の心配をしただけで。」


 葵は陽菜の頭を自分の肩に寄せて背中をさする。


 「もうあの時のトラウマは無くなった?」


 「うーん。今のところは大丈夫。ありがとう葵。」


 陽菜は無理に笑ってみた。


 「葵、何があっても葵だけは私を絶対に捨てないでくれる?」


 「もちろん! これまでも、これからもずっと大切な存在だよ。」



 「なんの話をしているの?」


 姫香が来て、不思議そうな表情をしている。


 「水野さん。陽菜に退院おめでとうって話だよ。」


 「そう……。葵、これからは私のことは姫香と呼んでいいわ。それと、ひなは私のものだから。」


「え? ああ、うん、ありがとう。これからはそう呼ばせてもらうね姫香。」


 葵は姫香の陽菜への態度の変化に衝撃を覚えた。しかし、陽菜を好きになる分は問題ないかと思い表情を戻した。


 「そういえば、ご褒美って何だったの?」


 陽菜は話題を変えて気になっていたことを聞いた。


 「ああ、ただのお菓子とメモ帳よ。ひなの分は後で渡すって言ってたわ。」


 「お菓子? どんなの?」


 「綿菓子だよ。陽菜は甘いもの好きだから多分美味しいはずだよ。」


 「そっかあ。楽しみ!」


 「ひな、私まだ食べてないからあげるわ。」


「ありがとう、ひめちゃん! せっかくだから後で私の貰ったら一緒に食べよ~。」



 学校に行くと陽菜は囲まれた。


  「ねえ、陽菜ちゃん! 中級魔法使ったって本当?」

  「魔物倒したって凄くない!? 怖くなかったの!?」

  「さすが学年1位!」

  「先生たちが調べたけど魔物出た理由分からなかったんだってね~。」


 「ごめんね〜。私途中から記憶ないの!」


 陽菜ははぐらかしつつ笑っている。


 「まだ体調が万全じゃないんだから、ひなを囲むのは止めなさい。」


 葵が止めようとしたが先に姫香が制止する。


  「あれ? 水野さんって下で呼ぶことあったっけ?」

  「なになに? なんかあっちゃった系?」

  「じゃあ水野さんから教えてよ!」


 「別に何もなかったわ!」


 「ほらみんな、陽菜と姫香をそんなに囲まないであげて。二瀬先生もうすぐ来るよ。」


 葵は姫香がデレるのは陽菜に対してだけなんだな〜と思った。それでも以前よりも柔らかくなった姫香を見て葵は微笑ましく思った。



 「おはようございます。天宮さんが今日から復帰できてよかったですね〜! 今日からまた全員揃ったので楽しく毎日を過ごしましょうね!」


 二瀬先生がHRをした後いつも通りの日常が再開した。



 「そういえば! ひめちゃんの家行ってみたい!」


 放課後に陽菜が突然姫香に言った。遠足前は姫香に友だち扱いされていなかったが、かなり仲良くなれた今なら行っても大丈夫だと思った。


 「……。駄目よ。」


 姫香は拒否した。陽菜はもしかして家庭の事情かなと察した。


 「無理言ってごめんね。じゃあ私の家に来てくれる? お母さんに紹介したいの!」


 「……それだったらいいわ。でも、失礼が無いかしら。」


 陽菜の誘いに乗った姫香は身だしなみを確認する。


 「姫香、陽菜のご両親は優しいから歓迎してくれるよ。」


 「うん! ひめちゃん可愛いからお母さんも喜ぶよ!」


 「ひなの方が可愛いわよ。……行くわ。」


 「嬉しい! じゃあ帰ろ!」


 陽菜達は一度帰宅した後、集合場所に集まり陽菜の家に向かった。



 「ここが私の家! 大丈夫! 取って食われたりはしないよ~。」


 「そ、そうね……。だ、大丈夫よ……。」


 陽菜は姫香に向かって言った。姫香は緊張しているようなので冗談を言ってほぐしてみる。


 「じゃあ、開けるね。お母さんただいま~」


 「陽菜、おかえり。葵ちゃんと、その子がいつも言ってる姫香ちゃん? 私の名前は天宮燈火(あまみやとうか)よ! いらっしゃい!」


 「こんにちは。お邪魔します。」


 「こ、こここ、こんにちは。お、お邪魔します、ひなのお母さま。」


 「緊張しなくていいのよ〜! 陽菜からは毎日たっぷりお話聞かせてもらってるわ。」


 「そ、そうなんですね……。」


 緊張している姫香を陽菜と葵が見て和んでいる。


 リビングで4人でおしゃべりは続いた。



 1時間くらいして姫香の緊張も収まってきたころ


 (そういえば、ひなのお母さまの目は赤色なのね。ひなの目が緑色なのに何で得意なのは火属性だと思っていたけど謎が解けたわ。だとしたら、私と同じ……。)


 一部例外もあるが、基本的に魔法が使える者は目の色と同じタイプの属性が得意である。姫香は最近まで特に気にしていなかったが、陽菜に懐き始めてから目をよく見るようになったので少し疑問だった。



 その後3人で陽菜の部屋に行った。

 陽菜の部屋はぬいぐるみや人形、シール帳等があり可愛らしい雰囲気であった。


 「お母さん優しかったでしょ!」


 「ええ。とても優しいお母様だったわ。」


 陽菜は自慢の母を姫香と合わせられて満足なようだ。


 「葵は、ひなの家に何度も来たことがあるのかしら?」


 「うん。陽菜が生まれた時からの幼馴染だからね。数えきれないほどあるよ。」


 「ずるい。と言いたいところだけど許すわ。これからいっぱい来ればいいもの。ひなが良いのならだけど……。」


 葵の発言に圧倒された姫香だが何とか踏みとどまる。


 「大歓迎だよ! これからもいっぱい仲良くしてね!」






——月日が過ぎ小3になった。


 「今年もクラス一緒だったね!」


 「クラス替えは3年に1回だから来年だよ。」


 「私は、ひなさえ一緒のクラスになれればいいわ。」


 「あはは、姫香はいっつも陽菜のこと一途だね。」


 3人で仲良く話していると担任が来た。


 「みなさん、おはようございます。今年で私がみんなを受け持つのは3回目ですね。来年になったらクラス替えで皆さんの中でも別れてしまうこともあるので今学年いっぱい後悔の無い1年にしましょうね!」


  「先生、分かれるのやだー。」

  「私は新しい出会いも楽しみだなあ。」

  「それは裏切りだろー!」


 二瀬先生の言葉を聞いて和気あいあいとおしゃべりしている児童たち。


 (来年も葵やひめちゃんと一緒のクラスになれるかな?)


 熊の魔物を倒して以来、『世界解答(ワールドアンサー)』を使っていない陽菜だが、この時ばかりは少し使いたくなる気持ちもあるのだった。


 「大丈夫。絶対とは言えないけれどきっとなれるよ。」


 前の席の葵が陽菜の含んだ表情を見て励ますためにいつものように優しく撫でる。


 「ありがとう、葵。大丈夫。」


 この時には私の『選択』で起きる未来など一切想像できなかったのだ。

登場人物


天宮陽菜(あまみやひな)

若草色の髪色でセミロングのワンサイドアップ。眼の色は緑。

得意属性は火

明るく優しい性格で困っている人を放っておけない。

2月の早生まれ


相沢葵(あいざわあおい)

紺色のロングヘア。眼の色は青

得意属性は水

陽菜が生まれた時からの幼馴染。

5月生まれ


水野姫香(みずのひめか)

黄色のロングヘアで毛先をふんわりと巻いている。眼の色は黄色

得意属性は雷

陽菜たちとは小1で初めて出会う

4月生まれ

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