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3話・ひなとひめ

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——正午


 「じゃあ、回収したのでお昼休みが終わったら配りますね。全員無事にスタンプ集められたようで良かったです。」


 二瀬(ふたせ)先生が安堵した表情を浮かべながらシートを回収した後、昼食の時間になった。


 「ねえ、姫香ちゃん! 何か気になる事でもあった?」


 「……別に何もないわよ。」


 「じゃあ今からお弁当食べよ〜。卵焼き食べてね!」


 陽菜は不思議そうに姫香をのぞき込んでいたが特に問題なさそうだと分かり昼食の準備をし始めた。


 「陽菜、こっち。」


 「ひんやりして気持ちいいね!」


 葵は食べる前に陽菜の手を生活魔法の水で綺麗にした。


 「水野さんもする?」


 「私は水道で洗って来たからいい。」


 「そっか。ブルーシートもひけたし班の他の2人が戻ってきたら食べようか。」



  「ごめん。ちょっとお手洗い混んでたから遅れちゃった。」

  「いやー。めちゃめちゃ混んでたね! 早くご飯食べよう! バスの時からずっと食べたかったからお腹が背中にくっついちゃうよ!! 陽菜ちゃんの卵焼きもーらい。おいしー!」


 「陽菜、私も貰うね。いただきます。」


 「うん! どうかな?」


 「美味しいよ。陽菜の頑張った味がする。」


 「ありがとう! 頑張って作ったかいがあったよ! 姫香ちゃんもはいどーぞ?」


 「……いただきます。…………おいしい。」


 「やった!」


 姫香は一口食べた後美味しさで頬が緩んだが、一呼吸おいて味を伝えた。

 陽菜はみんながおいしそうに食べてくれたことに安心して少し嬉し泣きをしている。



 昼食が終わった後姫香はお手洗いに行くふりをして5つ目のスタンプの地点へ向かった。先ほど感じた違和感を少し調べたかったからだ。


 「結界とはいえ空気穴があるからさっきは風が吹いたのだと思ったけどやっぱり普通に破れてる。」


 姫香は一部破れた結界を眺めた。姫香は木々の間から何かが見えて外へと歩み始めた。




 「ねえ、二瀬先生。スタンプの位置が地図と違ってたよ?」


 「……? 天宮さん、どういうこと?」


 陽菜が説明した後、二瀬先生が少し考え込み見に行くことに。



 スタンプの地点に着くと


 「私達が置いたところと全然違うわね……。これは魔物生成装置!?」


 「魔物生成装置?」


 「魔力を注ぐことで魔物が発生するものよ。私すぐに他の先生を呼んでくるから!」


 「魔力を注ぐ? ――っ!」


 二瀬先生が陽菜に伝えた時、陽菜は結界の破れを見つけてしまう。陽菜は不穏な空気を感じた。今ここで行動を起こさないと一生後悔してしまう。

 直感で感じた陽菜の体は外へと動いていた。


 「天宮さんどうしたの! そっちは駄目よ!」


 (結界の破れが小さくて大人じゃ通れない……。他の教師たちに伝えて早く何とかしないと。)


 二瀬先生は結界は多人数の魔法なので自身の魔力だけでは壊せないことを悟ると即座に他の教師たちを呼ぶべく走り出した。



 「やっぱりさっきのは見間違えだったのかしら。」


 姫香は少しの間歩いていたが何も見つけられない。諦めて帰ろうとした時


 「グオオオオオオ!」


 「何!?」


 そこに現れたのは大型の熊の様な生き物


 「熊? いや魔力があるから魔物!?」


 熊に似た魔物は姫香が逃げる前に爪を飛ばして木々をなぎ倒した。


 「逃げ場が!」


 姫香は逃げる先を封じられ動揺した。姫香は初級どころか生活魔法すら使えないので勝てるはずもない。普段は表情に乏しい姫香の顔が絶望に歪んだ。


 (私はここで死ぬ。)


 そう確信していたその時


 「初級・火球(ファイアボール)」


 視界の外から火の玉が飛んできて魔物に直撃


 「姫香ちゃん、大丈夫!?」


 陽菜が必死に走って追いついた。姫香の顔が少し緩んだが


 「グオオオオ!」


 魔物は平気そうにしているどころか獲物が増えたので喜んでいるかのようだ。


 「姫香ちゃん、あの魔物が生まれた原因は多分私のせい。だから姫香ちゃんだけでも逃げて。火球(ファイアボール)」


 そう言ってふさがれていた木を燃やして灰にした。


 (違う。私がここに来たから。)


 「天宮、たとえそうだとしてもこの状況を招いたのは私だから……。あなたのような将来有望なものがここで死ぬ意味が無いわ!」


 姫香は逃げない。


 (姫香ちゃんは逃げる意思がないみたい。じゃあどうすれば。何とか魔物を気絶させたら先生たちが間に合うかも……。)


 「初級・火弾(ファイアバレット)」


 陽菜は球体状から弾丸状に細く貫くように変え、何とか密度を上げて心臓を少しでも止めようと撃ち込んだ。


「グゥゥゥゥ!」


ほんの少し効いたようだが激高して爪を撃ってきた。


 「痛っ!」

 「くっ!」


 陽菜達は必死に避けるが足や腕をかすっていく。直撃していないのにかなり大怪我に。


 (私があの装置に気づいてもっと早く二瀬先生に伝えていたら……。)


 陽菜は後悔してうつむく。


 「天宮さん、ごめんなさい。私のせいで。」


 「姫香ちゃん……。」


 いつもとは違う姫香の言動に陽菜の頭は限界を迎える。


 (私の体はどうなってもいい。姫香ちゃんを助けられたら。ごめん……葵。使うね。)


 「『世界解答(ワールドアンサー)』」


 陽菜の目は突如煌めきユニークスキルを発動した。


 「分かる……。あいつの弱点。それに見える……。多くの未来が。」


 陽菜は魔法で自己治癒をして魔物の前に向かった。魔物は一瞬茫然としたが近距離で直接貫こうとした。


 「その攻撃を回避する世界線を見たよ。」


 陽菜は攻撃の来るタイミングや位置を把握しているかのように避け懐に潜り込むj。


  「この攻撃を避ける世界線はもうないよ。」

  「中級(ミディム)・炎弾(フレイムバレット)」




――


 目を覚ますと見慣れない天井。体を動かそうとしたが少し痛みを感じる。


 「陽菜が目を覚ましました!」


 葵が珍しく叫んで誰かに伝えている。


 「生きていて良かった……。」


 涙を流しながら陽菜の手を握っている姫香。


 「どうなったの?」


 寝起きで頭が回らない陽菜に二瀬先生は言った。


 「あなたが魔物を倒したのよ。よく生きていてくれました……。」


 どうやら、中級魔法で魔物の心臓を貫いたようだ。

 初級までしか魔法が使えないのに中級魔法が発現したのは世界解答(ワールドアンサー)の自動魔法構築によるものだろうと陽菜は納得した。

 先生たちは陽菜のユニークスキルを知らないので火事場の馬鹿力あるいは奇跡のようなものだと言っている。


 「ひな、ごめんなさい。」


 姫香は再び陽菜に謝った。


 「えっ?……こっちこそごめんね姫香ちゃん。生きていてくれてありがとう。」


 陽菜は姫香に名前で呼ばれたことに一瞬驚いたが、謝罪と感謝を微笑んで伝えた。



 医師が来て検査した後明日には退院していいと言われた。葵はたどたどしい姫香を見て陽菜と2人きりにしてあげた。


 「ひな、なんで結界の外に来たの……?」


 「それは、なんか嫌な予感がして。」


 「なんで私を助けてくれたの?いつもひなには素っ気無い態度をしているし、私なんか学年でもかなり下の落ちこぼれなのに……。」


 「大切な友達だもん!」


 陽菜はしっかりと姫香の目を見て言った。


 「私なんかとか言わないで。姫香ちゃんは他の誰にも代え様がない私の大切な姫香ちゃんだもん!落ちこぼれとか天才とかそんなのは関係ない。私はあなたのことが大好きだから!」


 「ありがとう……。」


 姫香は大粒の涙を流し陽菜に頭を撫でられた。



——10分後


 落ち着いた姫香は陽菜にお願いをしてみた。


 「ひな、私も相……葵みたいに呼んでほしい……。」


 「うーん……。じゃあ……ひめちゃん!」


 「ひめ?」


 「うん! ひなとひめって一文字違いだしお揃いに感じて良い感じ!」


 「分かった。」


 姫香は少し考えたが納得したようで陽菜に向けて笑顔を向けた。



——退院後


 葵が陽菜を呼んで深刻そうにして言った。


 「陽菜、あの能力使ったの?」

登場人物


天宮陽菜(あまみやひな)

若草色の髪色でセミロングのワンサイドアップ。眼の色は緑。

得意属性は火

明るく優しい性格で困っている人を放っておけない。

2月の早生まれ


相沢葵(あいざわあおい)

紺色のロングヘア。眼の色は青

得意属性は水

陽菜が生まれた時からの幼馴染。

5月生まれ


水野姫香(みずのひめか)

黄色のロングヘアで毛先をふんわりと巻いている。眼の色は黄色

得意属性は雷

陽菜たちとは小1で初めて出会う

4月生まれ

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