2話・スタンプラリー
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——遠足当日
「あ! おはよー! 姫香ちゃん!」
「水野さん、おはよう。」
「……おはよう。」
待ち合わせ場所で陽菜は朝から元気な声で姫香に挨拶した。
葵も姫香が来たことに安堵しつつ微笑んで挨拶をする。
一緒の班になった後、陽菜達は姫香の家を知るために帰る時について行こうとしたが断られたので待ち合わせ場所を近所の公園に指定された。
「私が来ないって考えなかったの?」
姫香は当てつけっぽく言ってみると。
「確かに! 体調不良になる可能性あったもんね〜。でも、無事集まれたし万々歳だね!」
「そうじゃなくて、私があなたたちを無視して無断欠席するかもしれなかったでしょ。」
「え〜。でも来てくれたよね!」
「……っ!」
陽菜のポジティブさに姫香はぐいぐい押される。
「陽菜、水野さん、そろそろ行かないと送れちゃうよ。」
「そうだね〜。姫香ちゃん行こっか!」
「ええ……。」
道中、陽菜は楽しそうに色んな話を2人にしているとあっという間に集合場所に着いた。
「陽菜ちゃん、葵ちゃん、それから水野さんおはよー!」
「3人ともおはよー!」
「時間あと10分だよ。」
「みんなおはよー! 来るまでの間盛り上がっちゃって歩くペース遅くなっちゃった!」
「おはよう。陽菜のおかげで歩いてる間も楽しかったよ。」
「……おはよう。」
陽菜達が着いた時は集合時間の10分前のようだ。とりあえず無事間に合ったことに陽菜は満足げな様子である。
10分後に点呼をした後、二瀬先生はバスの入り口の横に立って案内した。
「バスの座席はこの前決めた場所に座ってくださいね。場所分からない子がいたら私が座席表を持ってるから聞いてください。」
「先生、座席交換しちゃだめ? 私窓側がいいー。」
「それ賛成!」
「え~決まった席でいいじゃん。」
「もー。みんなこの前決めた席に座ってくださいね。」
二瀬先生は苦笑しつつ児童たちに注意した。
「私達の席は一番後ろだね! 後ろは5人席で葵が真ん中、姫香ちゃんが右の窓側、私は2人の間~。」
「水野さん、乗り物酔い大丈夫? 私酔い止め持ってるから体調悪くなったら言ってね。」
「ええ、大丈夫よ。」
「私貰おうかな!」
「陽菜は私よりも酔いにくいでしょ~。」
「そうだっけ! あはは!」
葵が姫香に気をかけていると、陽菜は嬉しそうにして話に混ざる。
「葵ちゃん、今日向こうに行ったら何するんだっけ?」
「着いたらご飯食べたーい。何時に着くの~?」
反対側の席で同じ班の2人が葵に聞いた
「確か1時間後の午前10時くらいに着いてから点呼を取ってレクリエーションをするんじゃなかったかな。昼食は正午だから後3時間我慢してね……?」
「ええー!? 後3時間もご飯食べれないの!! じゃあ先生に交渉しよう!」
「駄目だよ〜。また怒られちゃうよ……。」
「昼食といえば、今日はお弁当だから外で食べるのかな? 卵焼きなら一緒に作っていいよってお母さんが言ってくれて作ったから後で葵たちに食べて欲しいなあ。」
「陽菜頑張ったんだね。後で楽しみにしてるね。」
陽菜は葵に褒められたことに嬉しがりつつ姫香にも笑って頭を揺らしている。姫香自身は会話に混ざろうとしていなかったが隣の陽菜が姫香の目の前に顔を向けて反応を見ている。
「分かったわよ。後で食べるから向こう向いてて。」
「うん! えへへ~。」
バスが着くまでの間、陽菜は定期的に姫香にも話題を振って楽しそうな表情をしている。
(まだ着いてもないのにこんなに元気なんて、こいつ遠足が本格的に始まったらどんだけハイテンションになるのかしら……。)
ため息交じりに額に手を当てて姫香は適当に陽菜に相槌を打ち続けた。
——到着後
先生たちが点呼を取り始めた。全員そろっているのを確認すると、平坦な場所に荷物を置きに少し歩くようだ。
この山は標高もかなり低くなだらかな場所であるため遠足にうってつけの場所だった。魔物の様なものもここ十数年は目撃されておらずこの山の範囲内は索敵魔法が常に働いており迷子になる心配もないみたいだ。
「みんな、もうすぐ着きますよ」
二瀬先生が児童たちに言った。先生はクラスごとに分かれて歩いている為、全員着いてきているかどうかこまめに目視で確認しつつ、後ろにいるサポートの教師と定期的にコンタクトを取っている。
平坦な場所に出た後、ブルーシートにみんな自分の荷物を置いた。周りを見渡すと、澄んだ空、緑豊かな原っぱ、差し込む光と共に心地よい風。
「葵! 姫香ちゃん! この景色を見るだけでも楽しいね!」
「確かに。天気も晴れて良かったね。普段山になんて来ないから新鮮に感じるよ。水野さんは山来たことある?」
「無いわ。」
「じゃあ同じだ。ふふっ。」
「そうね。」
姫香は素っ気無い対応をしているが、葵は変わらず微笑んでいる。
「みんな、荷物を置いたら集まってね。今から班ごとにスタンプラリーを渡します。範囲外には出られないように結界魔法を張ってるから安心して集めましょうね。全部埋められた班にはご褒美があります。」
「スタンプラリーって何?」
「ただ単にスタンプ押して回るだけでしょ。」
「ご褒美欲しいな~。」
ざわめき始めた児童たち。
「ご褒美は最後まで内緒です。全員分あるからみんなで協力しつつ5個のスタンプを集めてください。期限は正午の昼食までですよ。じゃあ班ごとにシート配りますね。」
陽菜が貰いに行った。貰ったシートを眺めると簡易的な地図と大まかな場所が記されていた。
「こんな地図じゃ分かんないよー」
「確かに難しそう……。」
うなだれる友達に陽菜は宥める。
「まあまあ、みんなで協力して良いみたいだからきっと集まるよ! それに宝探しみたいで楽しそうだよ!」
「陽菜ちゃんが言うなら頑張ってみる!」
「そうだね……。やってみないと分からないもんね!」
(バカバカしい、地図があるなら簡単でしょ。)
姫香は呆れつつその光景を眺めている。
「水野さんはどこから行きたい?」
自信がありそうだったので活躍をみんなに見せてあげたい思いのもと、葵は姫香に振ってみた。
「え?……分かったわ。とりあえずこの地図の右端からでいいんじゃないかしら。」
姫香は葵に促されたことに少し意表を突かれたがすぐに自分の考えを伝えた。
「姫香ちゃんの言うとおりに行ってみよ〜。地図は姫香ちゃんが持っててね!」
――正午20分前
「姫香ちゃんの活躍で残り1つ! 流石姫香ちゃん!!」
「ただ地図の通りに行ってるだけよ。」
「そんなことないよ水野さん。地図にはあくまで目印しか書いてないんだから隠されてるように置かれてるスタンプを順調に見つけられてるのは凄いよ。」
「……。でも残り1つがなかなか見つからないわね。」
「ポイントはここらへんなんだけどね〜。他の班の子たちとも協力して探してるのに全然見つからないね!」
4個のスタンプは姫香によって簡単に見つけられた。他の班とも情報共有しつつ動いているが同じく残り1個が中々見つからない。タイムリミットが近づいていることに焦りが起き始めた。
「ねえ、もしかして5つ目は無くてご褒美なんて用意してないんじゃない。」
「二瀬先生に限ってそれは無いでしょ。」
「でも、全員分用意できてるなんてありえるかな?」
児童たちが疑問を投げ合っていると、
「姫香ちゃん、葵、あったよ~。」
陽菜ののんびりした声が通る。
「陽菜見つけたの?」
「うん! あそこの物陰に魔力流し込んだら出てきたの!」
「他の地点も少し地図から離れてたけど、ここは大きく外れてるわね。」
(なんでそんな場所に……。しかも、魔力を通さないと見つからないなんて魔力をまともに扱えるのは小1だとあいつと相沢くらいしかいないわ……。担任たちは本当は渡したくなかった……?)
姫香は見つかった場所に疑問を抱いていたが、陽菜達には伝えず心の中に収めた。
「少し寒いわね……。」
結界の隙間からの風になびかれつつ姫香は陽菜達と少し離れたところに立っていた。
登場人物
天宮陽菜
若草色の髪色でセミロングのワンサイドアップ。眼の色は緑。
得意属性は火
明るく優しい性格で困っている人を放っておけない。
2月の早生まれ
相沢葵
紺色のロングヘア。眼の色は青
得意属性は水
陽菜が生まれた時からの幼馴染。
5月生まれ
水野姫香
黄色のロングヘアで毛先をふんわりと巻いている。眼の色は黄色
得意属性は雷
陽菜たちとは小1で初めて出会う
4月生まれ




