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1話・過去の選択

1章完結しました!

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——小4冬


 「お母さん、起きてよ……。お願い目を覚まして……。」


 少女は泣きながらずっと言い続けても、動くことのなくなった母の体を揺すり続ける。

 既に父が扉の前で亡くなっており、母は数秒前に命を落とした。


 「ついに、この日が来た。俺が世界を支配するための始まりの日が。お前が『世界解答(ワールドアンサー)』でこの世界線を『選択』してくれたことに感謝だな。」


 両親を殺した銀髪の男が高笑いして言った。男は渇望していたものを手に入れられる瞬間に体中から喜びが沸き上がっており身震いをした。その後、手を少女に近づけ魔法を発動しようとする。


 「私が『選択』? そんなはずは……。」


 少女は現状を飲み込めず意識が深く沈み始めた。






——3年半前(小1春)


 「姫香ちゃん、今日の授業も終わったし一緒に帰ろ! 今日の授業も面白かったね~。」


 若草色の髪の少女、天宮陽菜(あまみやひな)が太陽のような笑顔で提案した。


 「私みたいな落ちこぼれに構わずにほかの人を誘ったら。あなたみたいな優等生はもっといい相手がいるでしょう。」


 そう言って断ろうとしたのは水野姫香(みずのひめか)という少女。姫香はあからさまに嫌そうな表情をして顔を背ける。


 「陽菜、水野さん嫌がってるんだから困らせちゃだめだよ。」


 陽菜の生まれた時からの幼馴染である相沢葵(あいざわあおい)が、落ち着いた口調で陽菜を優しく静止しようとする。


 「葵! でも、下校は集団で帰りましょうって先生が言ってたよ!」


 陽菜はもっともなことを言ったように得意げな表情をしている。

 葵はその表情を見て少し呆れつつ愛おしそうに撫でた。


 (なんで私なんかをずっと誘うのかしら……。私以外にも児童は沢山いるのに。私なんかと構う時間よりも他の子と仲良くなった方が有意義であるというのに……。)


 姫香は内心厄介なことに巻き込まれたことに不満気であるが、陽菜が一向に行こうとしないのを見て


 「分かったわよ。今日だけは帰ってあげてもいいわ。ただし、明日は絶対に一緒には帰らないわ。」


とため息をつきつつ言った。


 「そういえば、もうすぐ遠足があるんだって! 楽しみだね〜。葵と姫香ちゃんも一緒の班になってくれるよね!!」


 「待ちなさい。なんで急に一緒の班に決めつけられなきゃならないの。だいたい今日の下校だって渋々受け入れてあげただけなんだけど。」


 「私はもちろん一緒の班がいいよ。水野さんもせっかくなんだし一緒の班になろうよ。どのみち誰かとは組まないといけないんだし。」


 「な、相沢。あなたまでそんなこと!?」

 (そういえば、担任が1班5人と言ってたわね……。)


 激しく拒否する姫香だが、葵に的確なことは言われ言葉に詰まる。


 「さすが葵! 私、姫香ちゃんと一緒の班がいいから断っても毎日誘うよ!」


 「毎日って天宮、あなたいったいどこまで強引に!?」




 ——翌日


 HR後、二瀬教子(ふたせきょうこ)先生が授業を始めた


 「今日は、魔法について勉強をしましょう。みんなは魔法についてどこまで知ってるかな?」


  「はーい先生。おとーさんが今日起きるときに目覚まし代わりに枕を揺らしてたよ。」

  「私の親は花に水やりしてました。」

  「私知らなーい。」


 二瀬先生の問いに児童たちが色々な回答をしているとニコニコした先生が板書し始めた。


 「みんなが言ってるように人々みんな生活魔法を使って生活をより便利にしています。魔法には生活魔法のような身近に触れるものから、戦闘用の魔法まで沢山あります。

 その中の戦闘用の魔法について今回は学んでみましょう!

 魔法のランクには、初級、中級、上級、最上級のくくりがあります。」


  「初級だったら陽菜ちゃんが使えてたよね~」

  「そういえば、この前見せてくれたね! あの火球綺麗だったなあ」


 友達たちが陽菜のことを例に挙げて談笑し始めたので、陽菜は


 「うん、私の得意な火属性だけだけどね!」


 と少し恥ずかしそうにしながら笑って言った。

 葵は陽菜の表情を見て優しく微笑んでいる。


 (私なんかまだ生活魔法どころか発現すらできないのに……。)


 姫香は自分の無力さを感じながら陽菜を見ずに少しの間俯いてから、先生の次の説明を待った。


 「天宮さん凄いわね〜! みんなも卒業までに初級魔法を使いこなせるように毎日コツコツ頑張りましょうね!」


 二瀬先生は驚きの表情をした後、他の児童達をみて笑って両腕でガッツポーズした。


 「続いては——」



 授業が終わった後の休憩時間に陽菜の周りにはいつも彼女の友人たちが集まる。

 姫香はそんな風景を気にせず次の授業の準備をしようとしていると、


 「ねえ、姫香ちゃん! 一緒の班になってくれるよね!」


 (っ!? 本当に来た、こいつ昨日の言葉通りに毎日誘うつもり!?)

 昨日の言葉通りに誘いに来た陽菜に動揺した。


 「あなた、他に友達が多いんだから私じゃなくてそいつらを誘えばいいでしょう。昨日帰ってあげたのは帰り道が同じだからよ。私とあなたが一緒の班になったところで楽しくないわよ。」


 論理的に答えようとした姫香に対して


 「そんなことないよ! 私は姫香ちゃんのこと友達だと思ってるし、もっと仲良くなりたいもん! それに、楽しくないかどうかなんてなってみないと分からないでしょ〜。姫香ちゃんを楽しませられるように頑張るよ!!」


 陽菜は自分の気持ちをストレートに伝えた。




——1週間後


 班分けを決める授業が始まった。目的は近くの山へのピクニックで、自然との触れ合いや、同じクラスだけでなく他のクラスとの交流を深めることのようだ。小1なので引率してくれる先生も多く、今までに事故が起きたこともないので保護者達も安心している。


 「班は1班5人にしてくださいね! みんな喧嘩せずに決めましょうね!」


 二瀬先生が言った後にすぐにみんな仲良しの子を誘い始める。


 (本当は、班分けはランダムにした方がいいと思うんだけどなあ……。)


 二瀬先生はトラブルや誘われない子が出ないようにと祈りつつ教育課程をチェックする。


  「ねえ陽菜ちゃん! 私と一緒の班になろ~!」

  「私も陽菜ちゃんがいい!」


 陽菜は明るく優しい性格のため友人が多いこともあって沢山誘われている。


 「私は葵と姫香ちゃんが先約だからあと2人しか一緒になれないよ~。」

 と言って囲まれたことに戸惑っていると、葵が陽菜の手を引いて抜け出した。


 「陽菜は今日も人気だね。」


 「もお、からかわないでよ〜。姫香ちゃんの席に早く行こ!」


 ぷくっと頬を膨らませた陽菜の頭を優しく葵は撫でる。


 (早く、この時間が終わってくれないかしら。)

 姫香は賑やかな教室を見ないようにして机に伏せている。


 「姫香ちゃん! 来たよ~!」

 「水野さん、私たちと一緒の班になってくれるか決めた?」


 2人の言葉を聞き


 「分かったわ。一緒の班になってあげる。」

 (当日休めばよいか。)


 そう思って、承諾した姫香を陽菜は


 「やったー!! じゃあ当日は現地集合らしいから先に家にお迎えに行くね!!」


 と言って抱き着いた。


 「えっ家に来る? 聞き間違いじゃないわよね。」


 「ううん、行くよ! 姫香ちゃんの家知らないから今日帰るときに付いてくね!」


 「そうだね、陽菜と一緒に私も迎えに行くよ。」


 2人の対応に姫香は頭を悩ませる。


 (どうやら私は『選択』を誤ってしまったようね……。)

 姫香は自身の『選択』を受け入れ、当日まで陽菜への沢山のコミュニケーションを受け続けることになった。


登場人物


天宮陽菜(あまみやひな)

若草色の髪色でセミロングのワンサイドアップ。眼の色は緑。

得意属性は火

明るく優しい性格で困っている人を放っておけない。

2月の早生まれ


相沢葵(あいざわあおい)

紺色のロングヘア。眼の色は青

得意属性は水

陽菜が生まれた時からの幼馴染。

5月生まれ


水野姫香(みずのひめか)

黄色のロングヘアで毛先をふんわりと巻いている。眼の色は黄色

得意属性は雷

陽菜たちとは小1で初めて出会う

4月生まれ

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