16話・絶望の誕生日
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――陽菜の誕生日当日10時
「こんにちは、涼恵ちゃん。元気にしてた~。」
「いらっしゃい、燈火ちゃん。久しぶりね。毎日元気にお店でスイーツ作ってるわよ。燈火ちゃんは?」
「私も元気よ! 今日は娘のためにケーキ作ってパーティーに来てくれるんでしょ? 毎年のことだけどありがとうね~。」
「別にお礼なんていいわよ。陽菜ちゃんは私の子供みたいに感じてるんだから。……あなたこそ葵の誕生日の時にヴァイオリン弾いてくれたりしてるじゃない。」
「うふふっ、そうね!」
燈火は朝に涼恵の家に行った。お互い仕事で忙しいので会うのは数カ月ぶりだ。
「今、作ってる所?」
「そうよ。今回も自信作だから楽しみにしててね。」
「へえ、楽しみだわ〜。……あなたすっかり変わったわねえ。」
「何よ今更。」
「ふふっ。だって昔は私のこと大好きな甘えん坊だったじゃない。」
「……そりゃ大人になったんだもの。」
燈火は昔の涼恵を懐かしんでいる。
「昔は私達2人で色々冒険したわね〜。息も合って流石相棒って感じだったわ。」
「あなたは1人でどんどん前に行くから付いていくのに大変だったわよ。……結婚だって。」
「ん~? 最後聞き取れなかったわ。」
「何でもないわよ。それじゃあ今からケーキ作り始めるからまた夜にね。」
「ええ! 楽しみに待ってるわ! また後で~!」
涼恵は思うところがあったのか話を途中で切り上げた。また夜に会えるからその時にでも昔話を楽しめばいい、そう思っていた。
――6時間後
「ねえ、お母さんこれで完成?」
「ええ、これで完成よ。満足いくものが作れて良かった。あなたが手伝いたいって言った時は嬉しかったわよ。陽菜ちゃん喜んでくれるでしょうね。」
「だったらいいけど……。私が手伝った分去年より味落ちてないかな……?」
「味が落ちるわけなんてある訳ないでしょ。あなたが陽菜ちゃんのためを想って作った、その最高の隠し味があるんだから!」
今回葵はケーキ作りを半分手伝うことにした。去年までも手伝っていたがそれは最後の飾りつけくらいだった。母の指導があったとはいえ半分も作るのはかなり緊張していたが無事完成した。
「後はお父さんが帰ってきたら車にケーキ積んで行けばいいだけだよね?」
「そうよ。私達が持っていくから葵は先に行ってもいい――。あら、チャイムが鳴ったからちょっと待ってて。」
この後のことを話していると突然チャイムが鳴った。配達物かなと思ってドアを開くと銀髪の男と大柄の男がいた。
「初めまして。天宮陽菜の知り合いか?」
「えっ? あなたたちは誰ですか?」
「私たちは『星間治安組織群』に所属している組織の1つだ。今回天宮陽菜に協力していただきたいことがあり居場所を教えていただきたい。」
「『星間治安組織群』ってまさかあの?」
「そうだ。宇宙の至るところの犯罪者、犯罪組織を取り締まる独立した組織の集まりだ。私はその中の組織の1つ、『深淵の救済』のトップ、呪戒 禍津。隣にいる男は2番目の者で破砕レンジと言う。ご協力いただこう。」
禍津は『星間治安組織群』に所属する組織の1つだと言った。天宮陽菜に関する情報提供を涼恵に求めている。
「そうですか……。陽菜ちゃんは――」
「ちょっと待ってお母さん!」
涼恵が納得して陽菜のことを言おうとすると葵は何か引っかかり止めた。
「どうしたのよ葵?」
「本当にこの人たちが『星間治安組織群』っていうのに所属しているか証拠はないし、目的も言ってないのに陽菜のこと話すのは危険だよ……。」
「それもそうね……。」
葵は持論を涼恵に伝えた。
「折角、私自ら下手に出て聞いてやったんだがな。仕方ない実力行使とするか。やれ、レンジ」
「了解。」
「葵!?」
禍津は葵の直感により、すぐに聞けないと悟るとレンジに命令し葵を人質に取った。
「ここからは質問ではなく命令だ。抵抗するなよ、さもなくばお前の娘が命を落とすことになるからな。」
「あなた達は何が目的なの!?」
「言っただろう。天宮陽菜の居場所を知りたいだけだ。人質の娘が天宮陽菜に会ったことがあるのは2週間前に把握済みだ。」
「わ、分かったわ。言ったら娘は解放してくれるのよね……。」
「ああ、もちろん。正直に言えばお前たちには何もしないと約束しよう。」
「だ、駄目だよお母さん! 陽菜が危険な目に遭っちゃう!」
禍津の要求を飲むことにした涼恵。娘を人質に取られている以上従うしかないと決意している。その様子を見た葵は必死にもがいているが、
「葵、ごめんなさい……。あなたを失うことだけは絶対にしたくないの……。陽菜ちゃんの居場所は――。」
――20分後
「お母さん、葵まだかなあ。葵もケーキ作るって言ったから一旦帰っちゃったけど早く来てほしいな~。」
「陽菜は本当に葵ちゃんのことが好きね〜。昔の私と涼恵ちゃんと同じくらい? いやそれ以上ね!」
「大好きだよ! お母さんと涼恵さんの話聞きたい!」
「後で涼恵ちゃんが来てからにしましょうか。あの子の前で話したらきっと、からかいがいもあるだろうし。ふふっ。」
「あははっ! 涼恵さんをからかい過ぎないでね~。」
「陽菜〜。お母さん~。もうすぐ玄関の飾りつけ終わりそうだから。」
陽菜と燈火が話していると、父が玄関の作業が終わりそうだと伝えてきた。
「お父さんありがと〜。終わったら一緒にテレビ見よ!」
「分かったぞ〜。すぐ終えるからな!」
「ピンポーン」
父が作業を早く終わらそうとしている時インターホンが鳴った。
「はい、僕が出るよ。こんにちは。」
「ふっ。お前に興味はない。上級・破滅の鎌」
「なんだおま――。ぐふっ……。」
「邪魔だ。」
インターホンを鳴らした男達は禍津とレンジだ。禍津は即上級魔法で陽菜の父を殺害した。そして部屋の中まで突き飛ばし道を空け入ってきた。
「な、何の音。あ、あなた……!?」
「お前でもない。上級――。」
「上級・業火の壁」
燈火は禍津が唱える前に上級魔法で壁を作り陽菜の場所に戻り連れて逃げようとした。
「レンジ、外に出て回り込め。絶対に逃がすな。」
「もし逃げようとしたら?」
「娘だけ生かしておけば問題ない。あいつだけは私のあの魔法以外で殺してはいけないからな。」
「オーケーだ。ようやくだな。」
「ああ、ようやく御対面できる。『世界解答』に。ふふふ……俺がもうすぐこの宇宙の世界を支配できる。」
禍津が陽菜と邂逅するまであと数秒……。




