13話・葵の母
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――小4の冬
「そういえば陽菜の誕生日もうすぐだよね。」
「ん~? もう2月なんだね!」
「今年も一緒にお互いの両親交えてパーティーするんだから忘れないでよ。」
マイペースな陽菜を見て葵は笑いながら頭を撫でる。
「忘れて無いよ! ……多分!」
「あははっ! 何それ!」
「誕生日といえば葵のお母さんが作ってくれるケーキだよね! どんなケーキ今年は食べれるかな~!」
「お母さんは私にも秘密に作るからね〜。陽菜の好みのケーキ作ってくれたらいいんだけど。」
「私は何でもおいしいよ!」
陽菜は葵の母のケーキを楽しみにしている。葵の母はパティシエで毎年こだわりのケーキを作っている。
(私も今年はケーキ作りを手伝おうかな? 陽菜の喜ぶ顔が見たいな。)
「ねえ、陽菜どんな味――」
「ああー! 葵に言うの忘れてた!」
「っ! どうしたの急に!?」
「実はね! 今週の土曜日に二瀬先生と面会できるようになったの!」
「面会? どういうこと?」
「二瀬先生のご両親から聞いたんだけど、先生が真面目に過ごしていて模範囚になったみたいなの。だから私のような他人でも更生の促進として認められるなら面会して良くなったの!」
「模範囚……。まあ確かに理屈は分かったけど。……どうして陽菜が二瀬先生のご両親とコンタクト取れてるの?」
「それはね! あの事件の後、先生のご両親が謝罪に来てくれたでしょ? その時にメッセージ先交換しておいたの! それ以降たまに連絡取ってるよ!」
(いつの間に……。この子の行動力はいつも凄いな……。)
陽菜に聞きたかったことを忘れてしまうほどの衝撃的な内容を唐突に葵は聞いた。あまりの衝撃に少し頭で整理するまで呑み込めなかった。
「葵も行くでしょ?」
「えっ私も!?」
「もちろん! 本当はひめちゃんも誘いたかったけど、ひめちゃんから来てくれるまでは連絡を取らないって決めたし……。」
「そうよね……。でも行ってどうするの? 何か渡す物でもあるの?」
「それいいね! 何を渡せるかなあ。手紙とかかな?」
「……。もしかしてただ行くだけだったの?」
「うん! そうだよ!」
「……。」
陽菜の提案に何か意図があるのか聞いたが何もなさそうだ。葵はその答えを聞いて唖然としている。
「明後日の土曜日14時が面会時間だから先に葵の家に行くね!」
「明後日……。分かったよ。じゃあ10時くらいで良いかな? お昼は私の家で食べてから行く?」
「食べたーい! じゃあ10時ね! 了解!」
葵の家の料理を食べられると思った陽菜は上機嫌に返事をした。
――土曜日10時
「お邪魔しまーす!」
「陽菜、おはよう。」
「陽菜ちゃん来たのね。おはよう。」
「おはよう葵! 涼恵さんもおはようございまーす!」
葵の家に着くと玄関で出迎えてくれたのは葵と葵の母である相沢涼恵だ。
「ねえねえ涼恵さん、再来週の私の誕生日にまたケーキ作ってくれるんですか?」
「ええ。今回作るものは決まってるのよ。楽しみにしててね。」
「やったー! ありがとうございます!」
「陽菜、私の部屋に行くよ。お母さんは午後の仕込みがあるからね。」
「はーい! 涼恵さんまた後で!」
陽菜はどんなケーキになるんだろ〜と目を輝かせながら葵に付いて行った。
「そういえば、二瀬先生に会いに行って何の話をするの? 手紙は一応私も書いたけど……。」
「それはね~~~。」
「ふふ、そんなに貯めるようなこと?」
「もちろん! 二瀬先生が行っちゃってからの1年間のことだよ!」
「1年間?」
「そう! 小4にもなると魔法の授業も少し本格化してきたし、毎年恒例の運動会とか遠足とかあったでしょ~。」
「確かに、魔法は今まで座学が多かったけど少し実習も増えたね。でも、運動会も遠足は去年までと特に変わらなかった気がするけど……。」
「葵は勝ち負けにあんまり興味ないの〜? 遠足も今年は遊園地に行ったんだよ!」
「うーん……。」
(陽菜と一緒にいれば別に勝ち負けとかも興味ないし、場所もどこだって良いからなあ……。)
「葵はクールすぎるんだよぉ。」
「そうでもないと思うけど……。」
思ったよりも葵の反応が薄く見えるので不満げな陽菜。
「夏の時は……。……まあいいや。」
夏祭りの時の葵の態度と今の態度を比較しようとしたが恥ずかしくなってやめた。
「あ、あとね! 誕生日のことだけどいつも通り私の家で19時からするみたい!」
「分かった。ちょうど2週間後の土曜だから朝から陽菜の家に遊びに行こうかな?」
「おっけー! 楽しみにしてるね!」
――正午
「涼恵さんの料理は格別ですね!」
「あらあら、ありがとう。美味しそうに食べてもらうと作った甲斐があるわ。」
いただきますをした後、陽菜は美味しそうに料理を頬張った。
「燈火ちゃんは元気?」
「お母さんですか? はい! いつも元気にヴァイオリン教えてくれてますよ!」
「そう。良かったわ。最近忙しくて会えてないから……。」
涼恵は陽菜の母の様子を気にかけているようだ。
「お母さんは陽菜のお母さんと友達だったんだよね?」
「ええ。葵と陽菜ちゃんみたいに幼馴染だったわ。」
「幼馴染って良いですよね〜。私も葵とずっと仲良しでいたいなあ~。」
「そうね……。あなた達2人だったらずっと一緒に仲良くいられるわよ……。」
涼恵は儚げな表情をしながら2人を見ていた。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま。」
「はい、お粗末さまでした。」
「涼恵さん、今日はお忙しい中ありがとうございました! また来ますね! 午後のお仕事も頑張ってください! じゃあ葵そろそろ行こっか!」
「怪我しない様に気を付けていきなさいね。葵も陽菜ちゃんに迷惑かけちゃだめよ?」
「うん分かってるよ。じゃあ行ってきます。」
陽菜達は涼恵に見送られて出かけて行った。
見送っている涼恵はぽつりと呟いた。
「あの2人だったらきっと……。私と燈火とは違う未来を……。」




