12話・花火
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「葵? どうしたの困ったような顔をして。」
「ううん。何もないよ!」
「それならいいんだけど……?」
葵の表情を見た陽菜が不思議そうに聞いた。さっき話していたのと関係あるのかな? と思ったが葵の言葉を聞いて一先ずは納得した。
「それよりみんな集まったんだし屋台どんどん回ろうか。」
「射的しにいこ!」
「良いね!」
葵が話を切り替えるようにして言った。
射的の屋台に着いた。
「1回300円で倒した景品が貰えるぜ。弾は3発だ。」
「はーい。あの猫のぬいぐるみ大きいね~。」
「陽菜? あれが欲しいの?」
「うん!」
「葵ちゃん、挑戦して取ってあげたら!」
「葵ちゃんのかっこいいとこ見たーい。」
ルールを説明してもらった後、陽菜は大きな猫のぬいぐるみを見ていた。明らかに1発当てるだけでは倒れなさそうな重量感だ。
その様子を見て、友達が葵に挑戦するように囃し立てる。
「分かった。1回だけ挑戦してみる。」
「葵! 頑張ってね!」
(正直あれを倒せる気はしないけど……。陽菜が応援してくれてるし頑張りたいな。)
挑戦することにした葵はコルク銃を渡してもらい構える。射的をしたことがないのでどんな風に狙っていいかも分からないが応援を背に奮起している。
「葵ちゃん似合ってる~。」
「良いとこ見せちゃえ!」
「よし、1発目。」
1発目を撃ってみてぬいぐるみに当たったが全く落ちそうにない。
「ああ、惜し~。」
「当てたのはナイス!」
「当たったけど動かない……。2発目。」
2発目も当たったが数ミリ動く程度。
「後が無くなっちゃった……。」
「ラスト頑張れ~。」
「3発目。」
最後の3発目を撃ったが動いたかどうかも分からない程度だった。落ち込む葵に陽菜は近寄った。
「葵、お疲れ〜! 倒せるほうが珍しいんだから落ち込まないで! 3発全部当ててかっこ良かったよ!」
「陽菜……。うん、ありがとう。」
「葵ちゃんの雄姿を見れたし私達もあそぼ~。」
葵は取れる確率の方が少ないと分かっていたが取れなかったことに少し落ち込んだ。そんな葵をすぐに陽菜は慰めた。その後、他の子たちも挑戦し小さなお菓子や景品を取っていた。
「陽菜ちゃんもやってみて。」
「うん、分かった! 構え方はこうかな?」
「私も詳しくないけど多分合ってるよ。」
「ありがとう! よーし取るぞ~。」
陽菜は3発中1個景品を取った。最初の2発は葵と同じ様にぬいぐるみを狙って当てたが少し動いたくらい。最後に取ったのはカチューシャだった。
「お〜。おめでとう陽菜ちゃん!」
「最後に的変えたんだね!」
「取れて良かった! 葵がこれ付けて~。」
「私?」
「そう! 葵に似合うと思ったから取りたかったの!」
「そっか……。ありがとう陽菜。じゃあ付けるね。」
「わあ〜。可愛い!」
陽菜にもらったカチューシャを葵は付けてみた。普段可愛すぎるものは葵はあまり身に付けないので少し恥ずかしかった。しかし、陽菜が喜んでいるのを見ると和やかな気持ちになった。
その後、金魚すくい、輪投げ、ヨーヨー釣り、くじ引き等色々屋台を回った。
「ねえ、葵ちゃん! 結局いつもとアピール変わってないんじゃない?」
「そうそう。もっと陽菜ちゃんにアピールしないと!」
「そうは言われてもどうしたらいいか……。」
ひそひそ声で指摘される葵。確かに普段と変わらない感じで陽菜に接しているが、そもそも私からやるって言ったわけじゃないしな……と困っている。
「みんな〜。そろそろ花火の時間だよ! 見やすい場所を確保しに行こ! 葵、手貸して?」
「わっ! びっくりした。」
「もお、葵。そんな驚いた顔しないでよ〜。さっきから様子変だよ? 今を楽しも!」
「今を楽しむ……。そうだね!」
陽菜は花火の時間をみんなに伝える。葵の表情を見ていた陽菜は、そういえば食べもの買いに行った後から手を繋いでないと思って葵の手を握った。
「花火の場所は向こうだからあの辺がいいんじゃないかな?」
「早く行かないと良い場所無くなっちゃうね~。」
「よーし行こう! みんなはぐれない様にゆっくり行こうね!」
少し歩いた後花火が良く見えそうな場所に着いた。
「何とか場所に着いたけどここだと人多くて狭いね~。」
「確かに。」
「うーん。じゃあ、私と葵は別の場所で見るよ!」
「えっ?」
「陽菜ちゃん、大丈夫だよ! 狭くても全員――」
「それがいいんじゃない! せっかくだから2人きりで見てきなよ!」
「良いね!」
陽菜が葵と別の場所に見に行くと言った時、最初友達は止めようとした。しかし、よく考えると2人きりにさせることができると思って他の子達が陽菜に同意した。
「じゃあ、葵行こ!」
「うん、転ばないようにね。」
元気いっぱいで葵の手を引っ張って歩いていく陽菜の姿に葵は幸せな気持ちになった。
「ここがいいんじゃないかな? さっきの場所よりも遠いけど人はかなり少ないし。」
「確かに人は少ないね。……陽菜、他の子たちと分かれて良かったの? 私だけとじゃ楽しさも減っちゃうんじゃない?」
「何を言ってるの葵? そんなことあるはず無いでしょ〜! 他の子たちとの楽しみは減っちゃうかもしれないけど、その分葵と一緒にいられる楽しみが大きくなってるよ。」
葵のまさかの言葉に陽菜はびっくりしているが、その後笑ってそれは違うということを言った。
「さっきから色々話してたのってそういうことなの?」
「……あっ! それはまた別の話だよ。」
「それだったらよかったけど、私に言えない話なの……?」
陽菜はさっきから友達とひそひそ話していたことにずっと疑問を抱いて悶々としていた。葵は話すかどうか悩んだが打ち明けることに。
「さっきまでの話は……。陽菜にアピールしなさいって話だよ……。」
「アピール……?」
「そう、私がもっとアピールしないと陽菜のこと取られちゃうよっていう話……。」
陽菜は最初何を言われたか分からなさそうにしていた。その後理解が追いつくと顔を赤らめて目をそらした。
「うぅ……。聞かない方が良かったかな?」
「どうだろう……。でも、話してみて分かった。私は陽菜を誰にも渡したくないよ。」
「……っ! そ、そうなんだ……。わ、私も――。」
「ヒュー……。ドンッ!」
陽菜が言おうとしたその時花火が始まって声がかき消された。
「陽菜? 今なんて言ったの?」
「な、何でもないよ……。花火始まっちゃったし見よ?」
花火が終わるまでお互い無言で見続ける。握っている手はより強く固くなっている。時々2人はお互いの顔を横目で見る。この時間が長く続けばいいな、そう願って。
――花火が終わった後
「終わっちゃったね……。みんなの所に戻ろうか……。」
「そうだね……。」
「ねえ、葵……。二瀬先生やひめちゃん達が戻ってくるまで耐えられるのは葵のおかげだよ。これだけは言えるの。葵、大好きだよ……。」
「あっ……。私も大好きだよ陽菜。」
お互い大好きだと伝えた2人。いまはそれ以上のことは言えないけれど、きっといつかは。




