第15話 解放到達予測
ここには、あまりいたくないのよね。
何となく薄暗い。
それに、どこか嫌な臭気が立ち込めている。
別に真っ暗なわけじゃない。
なのに、ずっと薄暗く感じて気分が悪い。
破滅ポイントを重ねるたびに、だんだんそんな感じになっていた。
だから、青斗のところへ戻ろう。
破滅ポイントを得るたびに、ここにいると気分が悪くなる。
それも、よくわからない話だけど。
私……悪魔なのよね。
悪魔なのに、悪魔界が気分悪くなるって、どういうことかしら。
吐き気がしてくる。
やばいわね。
「大丈夫か?」
声をかけられた。
「あ……リュウ」
「戻ったのか。気分悪そうだけど」
「ここにいると気分悪くなるの」
「ああ……俺もだ」
「破滅ポイントだろ? 俺ももう少しなんだけどさ」
「今から人間界に行くところだ」
「一緒に行かないか」
「いいわよ」
「やべぇよな」
「うん」
二人とも、少しふらついていた。
「とにかく出るぞ」
悪魔界を出てから、リュウが言った。
「あのさ……俺、結構いっきに破滅ポイントの依頼引き受けた」
「私もなの」
「帰るの面倒だもんな」
「それに、帰りたくねぇし」
「気分悪くていられない」
「それ」
リュウが、小さく息を吐く。
「あのさ……もしかしたら、そろそろ終わるかもしれない」
「何か、何もわからないんだよな」
「何を願ったとかさ」
「私もよ」
「でも……人間界にいると、だんだん軽くなってくるんだけど」
「破滅ポイントが終わったら、もしかしたら悪魔界に戻らなくていいのかもしれないな」
「正直、どうなるのかはわからないけどな」
「なあ……お前もそんな感じじゃないのか?」
「そうかもしれないわね」
「その時は、人間界で普通に会うのもありだな」
「でも……会えるのかって話だけどさ」
「俺、セラくらいしか話す子いないし」
「私もよ。あとは数人」
「だよな」
「破滅ポイントのあれもあるのかもしれないよな。系統っていうかさ」
「本当は、破滅ポイントなんかどうなんだ? って感じだけど」
「まあ、それしかなかったんだろうから仕方ないよな」
「しかし……悪魔界は気持ちが悪い」
「たださ……悪魔界も、よくわからなくなってこないか?」
「ああ……わかるかも」
「私も、受けられる依頼は受けてきたから、終わらせたいわ」
「あなたと会えるのは、これで最後なのかしら」
「それとも……人間界で会えるのかしら」
「でも、人間界で会えるといいわね」
「あと……できれば協力もできたらいいけど、それもなかなかだからな」
「そうなのよね」
「でさ……どの辺の依頼受けたんだ?」
「B5地区」
「え? じゃあ隣だな。普通に会えるじゃん」
「なら、良かったら会おうぜ」
「うん」
「あ……あれで通信すればいいよね」
「ああ」
「じゃあ、またな」
「俺も通信するから」
「うん、またね」
リュウとは、破滅ポイントの同期みたいなものだった。
だいたい近くに住んでいて、時々話す悪魔。
まあ、近所のお兄ちゃんみたいな感じね。
そして、お友達。
破滅ポイントについて一緒に調べたり、わからないことを教え合ったりしていた仲で、普通に仲が良かった。
あと、数人の女の悪魔とも友達だけど、男の悪魔で話すのはリュウくらいだった。
リュウも、男の悪魔の友達はいたみたいだけど、女の悪魔で話しているのは私くらいだったと思う。
まあ、私たちが話していたのは、本当に住んでいる場所が近かったことと、同期だったことが大きい。
性格も合うし、気楽だしね。
私の清純派をわかってくれる、数少ない悪魔よ。
人間界へ戻った。
私は、少しだけ安心していた。
悪魔なのに。
それが、一番おかしかった。
通信端末を確認すると、新しい依頼通知が表示されていた。
そして、その横には。
『解放到達予測:残りわずか』
そう表示されていた。
もう少し。
私は、青斗のところへ帰る。
でも――。
私は、青斗のことが少しわからなくなっていた。
青斗と、なんで一緒にいたんだっけ。
今回は、破滅ポイント側の悪魔たちの日常寄りの話でした。
セラとリュウは、破滅ポイントの同期みたいな関係です。
特別な何かというより、近所でよく話す相手という感じでした。
そして少しずつ、“解放”が近づいています。
でも、それと同時に。
セラの中では、何かが少しずつ曖昧になり始めています。
次回から、また依頼側へ戻っていきます。
読んでいただきありがとうございました。




