外伝6話 かわいいって言っただけなのに、何かおかしい
セラは、なぜこんなにもうちの家族に受け入れられているんだ。
明らかにおかしい。
それに、まるで最初から知っていたかのようでもある。
俺も、最初からそうだったのか?
いや、違う。
初めて会ったはずだった。
なのに――どこかで会ったことがあるような気がした。
いや、そうじゃない。
俺は、こいつを放っておけなかったんだ。
一人で赤石を見ていたセラを。
あの時、どうして声をかけたのかは、今でもわからない。
でも、声をかけてしまった。
それに――悪魔のくせに、嫌いにはなれない。
もし、うちの家族がセラのことを悪魔だと知ってしまったとしても。
きっと、同じなのだろう。
何となくだけど、母さんたちは言いそうだ。
「それがどうしたの?」
と。
「なあ、お前さ……悪魔だから受け入れられてるのか?」
「は? そんなわけないでしょ」
「それに、天使ならともかく。私、反対側なんだけど」
「魅了系なんて、私が持ってると思う?」
「……」
「そうよ。ないのよ、そういう仕様」
あっさり言い切る。
「残念ながらね」
「だから――モテないのよ」
「……は?」
「あいつら、すぐ言うのよ。魅惑系だの、魅了系だのって」
「私が清楚系なのをいいことに、勝手に決めつけてさ」
「ほんと、失礼よね」
腕を組んで、ふんと鼻を鳴らす。
「酷いと思わない?」
(……いや、そこじゃないだろ)
「清楚系の方が、本当はいいはずよ」
「お前が清楚系?」
「そうよ。どう見ても清楚系でしょ」
「……」
(ありえない)
(でも、言ったら怒られる)
「……あっちの世界、辛辣なんだな」
「そうなのよ」
深く頷く。
「なぜか私、浮いてるから。友達も二人しかいないわ」
「……少なくないか?」
「質重視よ」
きっぱり。
「もちろん、同じように清楚系」
「……」
(絶対、何かが違う)
「その二人も……同じこと言ってないか?」
「言ってるわよ。だから安心できるの」
「やっぱりその二人もモテないのよ」
「本当に、男がわかってないのよ」
「私達は――最高にかわいくて、清楚なのに」
「……」
「自分で言うか?」
一拍。
「言うでしょ?」
当然みたいに返してくる。
「誰も言ってくれないんだから」
「……ああ」
「だから、自分で言うしかないのよ」
胸を張る。
「自己評価は大事でしょ?」
「方向性って知ってるか?」
「まあ、お前はかわいいよ」
「そういうところもな」
そう言って、少しだけ笑った。
「……なかなか、いいこと言うじゃない」
セラは、わずかに目を細める。
「やっぱり青斗は、わかってくれるのね」
「お母さんたちにも、みんなにかわいいって言われたわ」
「……だろうな」
あっさりと返す。
「でしょ?」
得意げに胸を張る。
(やっぱり、変だよな)
家族も、こいつも。
なのに――
(……嫌じゃない)
「橙也くんは、ちゃんとわかってくれたみたいで。きっちり褒めてくれたから」
「いい子確定よ」
「……」
「そういうものなのか?」
「当たり前でしょう」
迷いがない。
「兄より良くできてる弟ね、って言っておいたから」
「そうしたら、嬉しそうだったわ」
(……あいつ、チョロすぎないか?)
「……それ、あいつが喜んでいいやつか?」
「いいに決まってるでしょ」
「評価が上がったのよ?」
「いや、基準が怖いんだが」
「厳しい世界で生きてるのよ、私たち」
「……さっき“清楚系”って言ってなかったか?」
「でもさ……俺の方がいい子じゃないか?」
「ちゃんと泊めてやってるんだし」
「養ってるぞ」
「そうね。その点は、ちゃんと感謝してるわ」
少しだけ真面目な顔で言う。
「ありがとう」
「おう」
短く返す。
一拍。
「……それに」
セラが、小さく続ける。
「青斗は――最初に声をかけてくれた人だもの」
「……」
(ああ、そうか)
理由なんて、案外それだけでいいのかもしれない。
「でも、やっぱり青斗の家族はいい人ね」
「ちゃんと、受け入れてくれた」
少しだけ、柔らかく笑う。
「私、こんなところで――こんなふうになると思わなかったわ」
「……早く、ちゃんと終わらせないとね」
「終わらせる?」
「うん。まあ、その辺はまた今度」
「……お前さ」
少しだけ、踏み込む。
「その“終わり”って、どうなるんだ?」
セラは、少しだけ考えてから――
笑った。
今回も読んでいただきありがとうございます。
セラは相変わらずマイペースですが、
青斗の方がじわじわ振り回されてきてる気がします。
「清楚系とは……?」ってなった方、たぶん正常です。
それと、さらっと出てきた話については、
今はあまり深く考えなくても大丈夫です。
そのうち、ちゃんと触れるタイミングが来ます。
とはいえ――
青斗が感じている“ちょっとした違和感”は、
そのまま覚えておいてもらえると嬉しいです。
次回も、もう少しだけ踏み込むかもしれません。
引き続きよろしくお願いします。




