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破滅悪魔セラさん、なぜか俺に懐いてます。  作者: 桐原悠真
GW外伝:青斗の実家

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外伝3話 見えない彼女と電車に乗ったら、なぜか隣だけ誰も座らない

俺は電車に乗って、実家に向かう。


車内はそれなりに混んでいるのに――

なぜか、俺の隣だけがぽっかりと空いていた。


(……なんでだ?)


少しだけ違和感を覚える。


普通なら、誰か座ってもおかしくない。


それなのに。


誰も、座らない。


まるで――


「ここ、空いてませんよ」


そう言われているみたいに。


「何きょろきょろしてるのよ」


隣から、当たり前みたいに声がする。


「いや……」


視線を横に向ける。


もちろん、誰にも見えていないはずの場所。


そこに、セラは座っている。


「ちゃんと座ってるでしょ」


「……見えないけどな」


足を組んで、窓の外を眺めている――気がする。


(……いや)


これ。


よく考えたら。


「……普通にホラーじゃね?」


ぽつりと呟いた。


「失礼ね」


即答だった。


「私はちゃんとかわいい悪魔よ」


「そこじゃねえんだよ……」


視線を前に戻す。


でも。


誰も座らない理由は、もうわかってしまった。


(……いるんだよな、ここに)


見えないだけで。


確かに。


隣に。


子どもが、こっちに歩いてきた。


空いているはずの席を見て――立ち止まる。


「ここ、人座ってるから」


小さな声で、そう言った。


「お母さん、空いてないよ」


「え?」


母親は不思議そうに首をかしげる。


でも。


「……あ、ほんとだね」


なぜか納得して、別の席へと向かっていった。


「……」


その様子を、ぼんやり見ていると。


今度は、おばあちゃんが近づいてくる。


ゆっくりと。


俺の隣を見て――


ほんの一瞬、動きが止まった。


「……」


そして。


何も言わずに、別の席へ座った。


「……」


車内のざわめきは、いつも通りなのに。


この一角だけ、少しだけ温度が違う気がする。


「ねえ」


隣から、楽しそうな声がした。


「ちゃんと座ってるでしょ?」


「……」


「なあ、セラ」


「何?」


「これ――」


少しだけ、間を置く。


「なんか、普通にホラーじゃないか?」


「失礼ね」


即答だった。


「ちゃんとかわいいでしょ?」


「そこじゃねえんだよ……」


視線を前に戻す。


でも、もうわかってしまった。


ここは、空いていない。


ただ――


見えていないだけで。


どこに行っても――


俺の隣だけが、空いている。


「……」


明らかに、おかしい。


他は埋まっていくのに。


そこにだけ、人が来ない。


まるで最初から――


「ここは空いていない」


そう決まっているみたいに。


「何よ、その顔」


隣から、いつもの声。


「いや……」


視線を横に向ける。


当然のように、セラがいる――はずの場所。


(……見えてないんだよな?)


なのに。


避けられている。


誰も、近づかない。


理由なんて、説明されないのに。


「なあ、セラ」


「何?」


少しだけ、間を置く。


「これさ」


喉の奥で、言葉が引っかかる。


「……普通にホラーなんだが」


「失礼ね」


即答だった。


「ちゃんとかわいい悪魔よ?」


「だから、そこじゃねえんだよ……」


小さく息を吐く。


でも。


これはもう、気のせいじゃない。


「……いったい、どういうことだ」


ぽつりと呟く。


答えは、返ってこない。


ただ――


隣には、確かに“何か”がいる。


見えていないだけで。


「……もしかして」


ぽつりと呟く。


「皆、実は見えてるのか?」


「念のため聞くけど――見えてないんだよな?」


「そうよ」


あっさりと、セラは頷く。


「それがどうしたの?」


にっこりと笑う。


いつも通りの、軽い声。


でも。


その“いつも通り”が、少しだけ怖い。


「……いや」


視線を落とす。


じゃあ、何で。


誰も座らない。


何で、子どもは気づいて。


大人は、気づかないふりをする。


「……どこまで、見えてるんだ?」


答えは、ない。


あるいは――


答えたくないのかもしれない。


「ねえ」


セラが、少しだけ顔を近づける――気がした。


「考えすぎよ」


「……そうか?」


「そうよ」


即答だった。


「あなたは、普通にしてればいいの」


「普通、ね……」


小さく、息を吐く。


(見えてない)


そう、言ってる。


信じるしかない。


なのに――


「……見えてないんだよな?」


もう一度、確認してしまう。


自分でも、しつこいと思いながら。


「見えてないわよ」


セラは、少しだけ呆れたように笑った。


「少なくとも、“ちゃんとは”ね」


「……は?」


その一言に、思考が止まる。


「どういう意味だよ」


「さあ?」


セラは、楽しそうに笑う。


「あなたが考えてみれば?」


一瞬、間が空く。


「だって――」


軽く肩をすくめるように。


「本当に何も見えてなかったら、避けないでしょ?」


「……」


嫌な予感がした。


じわじわと。


逃げ場のない形で。


「……俺の親、どう思うんだろうな」


ぽつりと、漏れる。


実家。


家族。


“普通の人たち”。


そこに、これを持ち込んでいいのか。


「大丈夫よ」


セラが、軽く言う。


「きっと、ちゃんと受け入れてくれるわ」


その言葉は、優しいのに。


どこか――引っかかる。


「……何が起きるんだよ」


小さく呟く。


未来のことなんて、わからない。


でも。


ひとつだけ、確かなのは。


もう――


普通には、戻れないってことだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、見えない彼女と電車に乗る――ただそれだけの話のはずだったのですが、

書いているうちに「これ、普通に怖いな……?」と作者自身が思い始めた回でした。


本人にとってはただの“日常”なのに、

周りから見ると少しずつズレていく。

その違和感が、じわっと広がっていく感じを楽しんでもらえていたら嬉しいです。


セラは相変わらずマイペースですが、

今回の「少なくとも、“ちゃんとは”ね」という一言。

あれが、この先どう響いてくるのか――

少しだけ意識して読んでもらえると、より楽しめるかもしれません。


そして次は、実家。

“普通の人たち”の中に、この関係がどう入り込むのか。


何も起きないのか。

それとも、何かが起きてしまうのか。


引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。


よければブックマークや評価も、とても励みになります。


それでは、また次回で。

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