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破滅悪魔セラさん、なぜか俺に懐いてます。  作者: 桐原悠真
GW外伝:青斗の実家

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外伝1話 見えない彼女が“いい彼女”をやると言い出した

「ねえ、青斗。GWってよく言ってるけど何?」


ソファに寝転がったまま、セラが顔だけこちらに向ける。


「会社が休みになるんだ」


「ただそれだけ?」


「まあ……だいたいはな」


セラは少し考えてから、体を起こした。


「それで?」


「それで?」


「GW、どうするの?」


「あー……実家に帰る予定」


一瞬、空気が止まる。


「……は?」


ゆっくりと、セラの目が細くなる。


「私は?」


「一緒に行くんだろ?」


間髪入れずに返す。


その瞬間、セラの機嫌が一気に戻る。


「わかってるじゃない」


満足そうに腕を組む。


「でもさ」


「ん?」


「実家ってことは――ちゃんとした服、必要よね?」


「……別に普段のでいいだろ」


「ダメに決まってるでしょ」


即答だった。


「私が“ただの女”に見えたらどうするの?」


「いや十分ただの――」


「青斗?」


にこり、と笑う。


逃げ場はない。


「……わかったよ」


小さくため息をつく。


「服くらい買う」


「“くらい”?」


「ちゃんと選ぶ」


「最初からそう言いなさい」


満足そうに頷くセラ。


「ねえ、今から行く?」


「今から?」


「GW前でしょ?遅いと無くなるわよ」


「そんな人気あるのかよ……」


「あるに決まってるでしょ」


立ち上がって、さっさと玄関に向かう。


「ほら、早く」


「……はいはい」


靴を履きながら、青斗はぼそっと呟く。


「どうせ見えないのに」


ぴたり、とセラの動きが止まる。


振り返る。


「……見えるわよ」


「は?」


「青斗には、ね」


一瞬だけ、視線を逸らす。


「……ちゃんと選びなさいよ」


「似合うって言わせるから」


その言葉に、青斗は少しだけ笑った。


「はいはい。任せろよ」


GWはまだ始まっていない。


でも――


もう、面倒で、少し楽しい時間は始まっていた。


「よく考えたら、お前さ……うちの親に見えないと思うけど」


青斗が、ふと現実に引き戻されたように言う。


セラは一瞬だけ瞬きをして――


「そんなこと関係ないでしょ」


即答だった。


「いや、関係あるだろ普通」


「ないわよ」


一歩、近づく。


「気持ちの問題よ。気持ちの問題」


当然のように言い切る。


「ちゃんとした服を着て、ちゃんとした態度でいればいいの」


「それで全部解決すると思ってるのか……」


「するわよ」


迷いがない。


むしろ、少し楽しそうですらある。


「だって――」


セラは、ふっと笑った。


「青斗の親なんでしょ?」


「なら、ちゃんと“いい子”でいればいいじゃない」


その言葉に、ほんの少しだけ間が空く。


青斗は、視線を逸らして頭をかいた。


「……まあ、そうかもしれないけどな」


ぼそっと呟く。


でも、その顔はどこか緩んでいた。


「ほら、決まりね」


セラは満足そうに頷く。


「服、ちゃんと選びなさいよ?」


「……はいはい」


青斗は小さくため息をついた。


けれど――


そのため息は、少しだけ軽かった。


「でも、お前本当は……服が欲しいだけなんじゃないのか?」


青斗がじっと見る。


(何故わかった?)


一瞬だけ、セラの思考が止まる。


「そんなわけないじゃない」


すぐに言い切る。


「私、新しい服が欲しいなーって思ってないわ」


「青斗のご両親に挨拶するから、必要ねって思っただけよ」


(本当は可愛い服欲しかっただけだけど)


「……あやしいな」


「まあ、いいけどさ」


ため息ひとつ。


「かわいい服を着てる方がいいでしょ?」


「別に俺、セラがジャージでもいいけど」


「え?」


あまりにも自然な一言だった。


「ジャージでもセラはかわいいからな」


一瞬、言葉が止まる。


それから――


「わかってるじゃない」


すぐに立て直す。


「やっぱり私が清楚系キャラなのもわかってたのね」


「清楚系?」


「そうよ」


胸を張る。


「悪魔ではそれで売ってるんだから」


「……売りきれてないんじゃ」


「清楚だとなかなか大変なのよ」


少しだけ、視線を逸らす。


「妖艶系が悪魔界では人気だからね」


「へえ」


青斗は軽く頷く。


そして――


「じゃあさ」


「今回は“清楚系”でいくんだろ?」


「当然でしょ」


即答だった。


「青斗の実家なんだから」


少しだけ、柔らかい声になる。


「ちゃんと“いい彼女”でいるわよ」


その言葉に、青斗は少しだけ目を細めた。


「……もう十分だろ」


「え?」


「今でも、十分いい彼女だと思うけど」


一瞬。


本当に一瞬だけ――


セラの動きが止まる。


「……当たり前でしょ」


そっぽを向く。


「もっと上を目指すだけよ」


でも、耳だけは少し赤かった。


「ほら。早く行くわよ」


セラは先に玄関へ向かう。


ためらいもなく、迷いもなく。


まるで――最初からそこに居るのが当然みたいに。


「……はいはい」


青斗は少し遅れて立ち上がる。


靴を履きながら、小さく息をつく。


「GWか……」


毎年、ただの連休だったはずなのに。


今年は、少しだけ違う。


「ねえ、青斗」


玄関から、声が飛んでくる。


「何色がいいと思う?」


「は?」


「服よ。清楚系」


真剣な声だった。


「……白とかじゃないのか」


「安直ね」


すぐに返ってくる。


「でも、まあ……悪くないわ」


その一言に、少しだけ笑う。


「結局それでいいんじゃねえか」


「違うわよ」


間髪入れずに否定。


「“似合うかどうか”が大事なの」


「なるほどな」


青斗は立ち上がる。


玄関へ向かう。


「じゃあ任せろ」


「ちゃんと選びなさいよ?」


「はいはい」


ドアを開ける。


春の空気が、少しだけ暖かい。


隣には――


見えないはずの、騒がしい存在。


でも。


「……楽しそうだな」


「当然でしょ」


即答だった。


「私がいるんだから」


青斗は、小さく笑った。


GWはまだ始まっていない。


けれど――


もう、ちゃんと始まっていた。

今回からセラのGW編です。


見えないのに「いい彼女をやる」と言い出すセラ。

正直、無茶だろと思いつつも――

こういうの、やっぱり嫌いじゃないんですよね。


次は服選び。

セラが本気を出します。

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