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青の年代記〜山奥で仲間とひたすら修行した少年が、いつか英雄になる話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

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陽暦1490年7月〜騎士実習13

 リョウたち三人は、騎士団本部を出てポンド詰所に戻る。

 ちらほら当番の騎士たちが起きてきていた。


「なんだお前ら、朝っぱらからどこに行ってた?」

 先輩の1人が訝しがって尋ねて来た。


「ちょっとランニングす」

 リョウが誤魔化すと、アルマとセラは不自然なほど頷く。


「ふん、掃除やっとけよ」

 先輩騎士はあまり興味なさそうに言う。

 まだ詰所内に変わったことはない。



 リョウたちが何事もなかったかのように掃除をしていると、小隊長室から怒号が聞こえてきた。

「無い!あれが無いぞ!」

 皆で慌てて小隊長室に行くと、パレス小隊長が恐慌を来している。

 

「賊に入られた!鍵も壊れてる!」

 傍目にも哀れなほど動揺した姿で、扉書棚の書類をぶちまけているパレス小隊長。

 

 その取り乱しように、場の空気がざわつく。

 

 リョウたち三人は「あちゃー、もうバレたか」という顔でお互い黙って見つめる。



 そこにキース騎士が近づいて来た。


「お前ら、昨晩ここで怪しい行動をしていたな」

 キース騎士は、リョウたちの前に立ち、確信を持って追及してくる。


「そうでしたっけ?」

 とぼけるリョウ。


「な、なにィ!、貴様らか手紙を盗んだのは!?事と次第によっては許さんぞ!」

 パレス小隊長は頬を紅潮させて、詰め寄って来る。


「ーー許されないのはアンタだよ」

 まさかのリョウの返答。

 パレスの目にいやに落ち着いて見える。

 アルマもセラも、のっけから喧嘩腰のリョウに驚いた。


「な、な、何おう!キサマァ!」

 人前でアンタ呼ばわりされて怒り心頭なパレス小隊長は、激昂してリョウの顔面に右拳を繰り出した。

 パシッと言う音が響いたが、リョウはその拳を左手で受け止めていた。



「小隊長、孤児院への嫌がらせの相談に対応させなかったそうですね?」

 低く、淡々とした声で、リョウがパレス小隊長に質問する。


 意外な展開に周りの騎士たちも息を呑む。


「な、何のことだ!?」

 その質問に目が泳いだ小隊長を見てリョウは確信する。


「……嘘。答える気、ない」

 アルマが一歩前にでる。


「今、ここで話してください」

  

 一瞬の間。

 しかしパレス小隊長は口を閉ざしたままだ。


「……そうですか」

 リョウの手にわずかに力がこもる。

 ミシっと嫌な音がした。


「ぐあっ……!」

 苦悶の叫びを上げる小隊長。


「セラちゃん」


「あっ、あっ、ハイ」

 淡い光が拳を包み、痛みが引いていく。


 周囲の騎士たちがざわめいた。


「骨は折ってないです。何で、“明日への扉”の相談を無視したんです?」


「痛たたたァ!」


「理由を。被害は軽くない」


「い、言うからやめろ!」


「どうぞ」


「エ、エンリケの、頼みだからだ!」


「やっぱそうでしたか」

 リョウが手を離す。


 セラがそっと治癒魔法をかけ直す。

 その手はわずかに震えていた。


「おい……リョウ、お前……」

 

 キース騎士が呟く。

 

 その場の誰も前に踏み込まない。

 リョウの異質な雰囲気にその場の誰もが呑まれている。


 

 その時だった。

 早朝ににつかわしくない多数の馬の蹄の音。

 

「それまでぃ!」


 バルガン団長の怒声とともに、ライリー副団長、その他、普段見かけない騎士たちが揃ってポンド詰所に押しかけて包囲する。

 護送馬車まで引いてある。


「パレスを確保!邪魔する者は、敵とみなす!」

 ライリー副団長の指揮で、ポンド詰所の騎士たちはパレス小隊長から遠ざけられる。


「な、何を!キサマ、離せ!」

 パレス小隊長は詰所内の小隊長室まで、引きずられるように運ばれていく。



 パレス小隊長は椅子に座らされ、そのまま縄を掛けられた。

「団長、これは何かの間違いだ!」

 パレスは必死に何か考えながら、隙がないか窺う。


 しかし、バルガン団長は、パレス小隊長を真っ直ぐに見据えたまま、懐から封書を取り出した。

 

「これが何だか、お前が一番良く知っているな、パレス」


 一気に血の気が引くパレス。


「お前はクビだ。そして騎士団への背任行為ーーその責を負え」


「違法収集だ!証拠にならん!」


 バルガン団長は座ったままのパレスの目を見つめ、おもむろに顔面を蹴飛ばした。

「そんな理屈が通用する段階か」


 椅子ごと倒れるパレス。


「お前には今から本部の地下でいろいろ吐いてもらうぞ」


「チクショウ……平民どもが……」

 人権が守られない立場にいきなり突き落とされ、絶望の表情のパレス。


「おーい!コイツを本部に連行だ」

 バルガンが声を上げると、小隊長室に特命騎士たちが集まって来て、椅子ごとパレス小隊長を抱え上げ、外の馬車に押し込んだ。

 金属製の重い扉が閉まる。



「エンリケ一家と繋がってるって言ってました。ところで本部の地下って何があるんですか?」

 リョウがバルガン団長に聞いたが、団長は「お前はまだ知らなくていい」と言ってニヤッと笑う。


「アルマ!お前は、取調べを覚えろ。この後も付き合え」


「うひぃ!」

 絶望の表情のアルマ。


「そんな喜ぶな、ガハハハ!」

 バルガン団長はアルマの肩を叩いて騎士団本部へ帰った。


 セラは何も言わなかった。 

 ただ、自分の手を見つめている。


 

 リョウはそんな2人を横目に、静かに息を吐いた。


 

 ーー時間の猶予はない。


 騎士団本部への帰路、空気はどことなく沈んでいた。

 




 


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