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青の年代記〜山奥の少年が、いつか世界を変える話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

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陽暦1491年10月〜決勝トーナメント①

 今日はやや雲の多い闘技場。

 しかし蒸し暑く、観客たちは手に手に仰ぐものを持って見守っている。


「やあ、リョウくん。君の剣も相当な業物だと思うのだが、銘を聞かせてもらえるかな?」

 アーサー・グレイウスは鞘から剣を抜きながら目の前で立てて見せる。


 お互いの間合いはまだまだ遠い。


「俺の剣は蒼雷剣ジンライって名付けてる」

 リョウが鞘からジンライを抜くと、刀身がうっすら青く輝いている。


「やはり先祖伝来のものなのかな?私の剣はディリアの国宝に指定されている“光牙剣マクウス”という。800年前、建国王が白獅子マクウスを討伐し、その牙から鍛えられし剣だ」


「こいつは、自分でモンスターを討伐して手に入れたんだよ。国宝とかそんな大層なモンじゃねぇ」


「ふふ、そうかい。では、力比べといこうか」

 そう言うと、アーサーは祝詞を唱え始める。


「……封じられし牙、今こそその鎖を断ち切り、目の前の敵に喰らい付かん。聖ディリアの名の下に、集え、聖なる光の刃!」

 刀身に刻まれた青い文字が輝き、徐々にその段階が上がっていく。


 ゴォゴォと刀身から立ち上る光芒。

 10メートル以上の高さまで上っていく。


 “今、結構な隙に見えるけど……真っ向勝負だ!“

 リョウはアーサーの武器の威力が気になるので受けて立つことにする。


 “さあ、ジンライ、その力を見せてみろ!ヤツの牙、打ち砕くぞ!”


 握る柄に力を込めるリョウ。


 ブゥゥ……ゥゥンと揺らぎ、青い閃電を放ち始める蒼雷剣の刀身。

 輝きが一層増し、刀身の周りにバチッ、バチチッと電光が走り始める。

 剣を横に寝かせ、飛んでくる刃を叩き落とす構え。


「おおおお!」

「魔剣勝負だ!」

「良いぞヤーマス人!」

「死ぬなよー!」

「てか俺たち巻き込まれないか……?」


 観客席、光の刃の予想範囲から少しずつ人が離れていく。



「やはり!見立て通りの威力か!行くぞリョウくん!」

 アーサーは剣を上段に構え、一歩踏み出して振り下ろした。


「聖、光、刃!」

 剣の軌跡から巨大な輝く光の刃が生まれ、風を切り裂き、闘技場の石畳を砕きながらリョウの眼前に迫り来る。


 リョウは目の前の光の刃を見据えていた。


「うぉりゃああぁぁぁ!」


 自らに届く前に、蒼雷剣ジンライにシマーを集中させ、飛び上がりながら切り上げた。


 ぶつかり合う光の力場と青い雷の力場。

 爆発的な閃光が球状に膨れ上がり、同時に行き場のない膨大な魔力が破裂して凄まじい爆発音が起こった。


 観客席を突風が襲う。

 身を低くして耐える観客たち。


 飛び上がって切り上げたリョウの剣先から天を突き抜けるような青い稲光。

 上空の雲を貫いてどこまでも上がっていく。


「何が、起こっていたんだ」

「相殺したのか……?」


 観客たちは身を起こして見る。


 リョウとアーサーは2人とも無事で立っている。


「……なぜ今ので無傷なんだい?」

 アーサーは荒い息を吐き、唖然としながらリョウに尋ねた。


「今の全力だったのか?」

 リョウは正眼に剣を構えた。


「……まさか。次は剣技を乗せる。」


「応!」


 アーサーは両手で上段に光牙剣マクウスを掲げる。

 これまで建国王のみが光牙剣マクウスの本領を発揮できたと言われていた。

 しかし現ディリア王はアーサーの実力がそれに迫ると信じてこの舞台に送り出した。


「では、行くぞ……ハアァァァ…!」

 アーサーの周囲が眩しく輝き始め、円筒状に光の柱が宙に上る。


 割れた石畳の小さな破片が空中に浮かび上がっていく。



「これは凄まじい……」

「暴発したら周囲が吹っ飛んじゃうわね」


 アラカンダルとシオリが身を低くして眩しそうに見ている。



「リョウ……大丈夫か……」

 心配そうに見つめるゼルダン。



「三賢人、五老聖、七魔導……完全にこの神剣の封印を解く。時の狭間に置かれし獅子の王の咆哮!今ここに顕現せん……」


 刀身の文字が全て完全に光を放っている。

 剣が光と闇の反転明滅を繰り返す。

 剣の位置もわずかブレては戻るを繰り返しているように見える。


 アーサーが剣先で三角形と逆三角形をなぞる。

 二つの三角形の頂点が光の輪で結ばれていく。


 背筋がゾクッとなるリョウ。


 “ああ、ジンライと命をやり取りしたときと同じだ“


 思い出す肩の傷。

 

 ”いくぜ、蒼雷剣ジンライ!ドラゴンはライオンなんかに負けねぇだろ!“


「ハァァァァァァ……!」


 リョウのシマーが体中から螺旋円状に溢れ出し、その直後にリョウと蒼雷剣ジンライを覆うように収束する。

 正眼に構えた輝く剣が青い稲妻をまとっている。


 大観衆は輝く舞台を固唾を飲んで見守っている。

 アーサーとリョウの延長線上の観客は全員退避していた。


「今こそ輝け!獅子咆哮破!」


 アーサーが浮かび上がった六芒星の中心を真っ直ぐに突いた。

 そこから放たれたマクウスの輝きは、極太の光の奔流となってリョウを襲う。


「いくぞジンライッ!」

 リョウは手の中の蒼雷剣ジンライが喜びに震えているのを感じていた。


「ズアリャァァァッ!」

 リョウは一歩踏み出し、迫り来る光の奔流に蒼雷剣を叩きつけた。

 

 凄まじい雷鳴が轟く。


 その剣から稲妻が走り、光の奔流を押し返しながら真っ二つに切り裂いた。

 低い姿勢で地面まで深く突き刺さる剣の先端。


 ジンライの先端から放たれた稲妻の剣は、そのままアーサーに到達した。

 

 アーサーの金属鎧が一瞬輝く。


 大きく跳ねるアーサーの体。

 皮膚が一部焦げている。


 剣を落として前のめりに崩れ落ちる。


 素早く駆け寄るリョウ。


「……参ったな……」

 呟きながら目を閉じるアーサー。


 地面に激突する前にリョウが抱き止める。


 アーサーは意識を失ってしまったが、まだ息は有った。

 胸を撫で下ろすリョウ。


「し、勝者!リョウ!」

 審判が手を挙げる。

 駆け寄る救護班。



 大歓声の観客席。


「すげぇぇぇぇぞ!」

「お前、そんな、馬鹿な!」

「ただの魔剣じゃない!?」

「超特級の神遺武装だ!」



 蒼雷剣ジンライを鞘に納め、静かに舞台を下りるリョウ。


 遠巻きに眺める決勝に残った闘技者たち。


 無意識に己の武器を握っている。


 ”ーーーあれを正面から受けられる者がいるのか?“


 誰しもが言葉を発せなくなっていた。


 


 


 


 

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