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青の年代記〜山奥の少年が、いつか世界を変える話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

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陽暦1491年10月〜国際武闘大会⑥

「始め!」

 試合開始の掛け声。


 アーサーは体の横に剣を立てて半身の構え。


 レオンは盾を胸の辺りに突き出し、剣を体の後ろに隠している。

 シマーが輝きを増す。


「魔法の準備に入ったぞ」

 ゼルダンがリョウに言う。


 レオンの後ろに回した剣の周りにモヤモヤっと力場が7つ形成され、徐々に尖った氷の塊になった。


「おおっ!」

 驚くゼルダン。

 同時に魔法を多数発動させることは至難の技だ。

 


「ふんっ!」

 剣を横に払うレオン。

 同時に猛烈な速度で氷塊群がアーサーを襲う。


 目を閉じながら何か呟いているアーサー。

「神剣よ……封印を解き……今、捧げる……」


「なんだ!?」

 ゼルダンの目にはアーサーの剣の魔力が加速度的に増大していく様がハッキリ見えた。


 剣から激しい光が一気に噴き上がる。


 目を見開くアーサー。


「ハアァッ!」


 気合いと共に一歩踏み込み、輝く剣を斜めに豪快に振り下ろした。


 剣から放たれた光は巨大な弧を描き、白い奔流となって闘技場を駆け抜けた。

 

 その光の奔流は飛来する氷塊すべてを消し飛ばす。 

 その勢いのままレオン・ヴァイスの小盾を両断した上、左腕と皮鎧の胸を切り裂いた。


「グウッ!」

 血飛沫を上げつつ後方に吹き飛ばされたレオン。



 その光の奔流の勢いは止まらず、観客席の石壁にぶつかる。

 ズビシッ!という破壊音とともに裂け目が生じる石壁。

「わぁっ!」

「うおおっ?」

 破片が跳ね、飛び退く周辺の観客たち。


 騒然とする観客席。


 体を起こそうとするレオン。

 腕が震えて支えきれずに立ち上がれない。

「……なんだ……その剣は……」


「文字通り、伝家の宝刀ってヤツさ」

 アーサーは剣を前に突き出した。

 刀身は輝いたままだ。


「……神遺武装か……」

 そう言うとレオンの目の光は失われ、もたげていた上半身は力なく地面に落ちた。


「勝者、アーサー・グレイウス!」

 ざわつく会場に審判の声が響く。

 


「威力の調節が難しいんだよな……」

 アーサーはそう言うと剣を鞘に納め、試合場からスタスタと下りる。


 遠巻きに見る観客たち。


 アッバーク国王周辺に人が集まっている。

 王が何事か話した後、取り巻きの集団がアーサーとリョウを睨みつけていた。



「……ねぇ、アレ、どうすんのさ」

 シオリがアラカンダルの腕を掴む。


「あのようなものの対処法を、俺は知らん」

 肩をすくめて軽く笑うアラカンダル。


「魔剣とかのレベルじゃないわよ……そうか、あれが神遺武装ってヤツかな……?」


「まさに人智を超えているな」


「でも勝たなきゃでしょ」


「……ああ」



 腰に提げた蒼雷剣ジンライがカタカタと震えている。

 リョウは柄をギュッと握りしめた。


 剣から伝わる僅かに高揚しているような感覚。


 "アイツと戦いたがってるていうのかジンライ"


「ゼルダンの目から見てあの剣はどうだ?」


「人の力では無い。俺があの出力の光魔法を放てば2発目には衰弱死だ」


「じゃあ、やっぱりアレも神遺武装なんだろうな」


「……一つの大会に2本も揃うとは……偶然か……?」

 



「次の試合、リン・シュエフォン対ジークハルト・アイゼン!前へ!」

 審判による呼び出し。

 予選の第一試合があらかた終了するタイミング。


 リン・シュエフォンはセキサイが普段着ているようなヤンホァの国民服。

 リョウより上背があり、均整のとれた体格。

 鋭い目付きが印象的な男。

 棍を手にしている。


 対するジークハルト・アイゼンは2メートル超で岩のような大男。

 ガチガチに金属鎧を着て、顔を兜で覆っており、右手に見たことない大きな小手を嵌めている。

 武器は長柄の槍で穂先の横に斧が付いている。



「そんな棒切れはこの鎧には通じんぞ」

 ジークハルトがリンに言う。


「は、そんな鉄板ごときで俺の棍を防げるものかよ」

 鼻で笑うリン。


「抜かせ」

 兜の下から覗く口元が凶悪に笑う。

 その時ジークハルトは右小手をチラッと見た。


 "なにかある"

その僅かな視線をリンは見逃さなかった。

 


「始め!」

 審判の掛け声と同時に棍を下段に構えたまま前に出るリン。


 徐々に体がボヤけ、残像が増えていく。


「影歩の応用!」

 それを見てリョウは叫ぶ。


「小手先の技は、俺には通じんぞ!」


 ジークハルトは両手持ちの重いポールウェポンを縦横無尽に振り回す。

 試合場内に風が巻き起こる。


「おおっ!」

「スゲェ!」

「あれじゃ近寄れねぇぞ」

 どよめく観衆。


 リンは何も無い場所を歩くかの如く前に出る。


 竜巻のようなポールウェポンの猛攻が幻であるかのようにすり抜け、一切当たらない。


「なんだ!?」

 リョウは目を凝らす。


 リンは攻撃を完全に見切っていた。

 当たる直前、ミリ単位の精度で避け続けている。


「おのれ!ちょこまかと!」

 ジークハルトは狙いすまして突くが、全く当たらない。


 "コイツの動きは疾すぎる!"


いつの間にか眼前にいるリン。


「貴様の動きは雑に過ぎるな」


 左足でジークハルトの足の甲を金属性ブーツの上から踏みつける。


 ズドム!という重い音と共に金属性のブーツが凹む。

 その勢いで会場の石畳が割れた。


「ヌォッ!」

 足の甲に鈍い痛みが走り続ける。


 足先からバランスが崩れたジークハルトを、リンは金属鎧の上から棍で幾度も叩きつける。

 ゴシッ、ガツッと重い音が響き渡る。

 

 ふらつくジークハルト。


「クソがァァァーッ!」

 狂気をはらんだ叫びと共に右小手を突き出すジークハルト。


 拳を開いたと思いきや、突然掌に穴が開く。

 そこが爆発した。

 凄まじい爆風と衝撃波が前方に噴出しリンを襲う。


 ーーーいない。


「隠し種は終わりか?」

 リンはジークハルトの背後から膝裏を蹴る。


 膝から崩れ落ちる。

 体勢が低くなったジークハルト。


「フッ!」


 一瞬リンの動きが止まり、直後、兜の上に静かに棍を振り下ろした。


 ガッ、という音。


 2人の動きが止まる。


 1秒後、糸の切れた操り人形の如く、ジークハルトの体は横倒しになった。


 白目を剥いてピクリとも動かない。


 試合場を後にするリン。


「し、勝者、リン・シュエフォン!」

 審判が救護班に合図を出す。



「浸透剄を棍で打ったのか……?」

 リョウは信じられないといった顔。


「ヤツはシマーの発動すらしていない」

 ゼルダンも目を見開いていた。

 


 リン・シュエフォンは試合場から下りる際、リョウとゼルダンを睨みつけた。


「……ダンマ流武術など華林武術ホァリンウーシュウの真似事。それを教えてやる」


 すれ違いざまに吐き捨てるリン。


「華林武術?」 


 リンはリョウの声を無視して控室に歩み去って行った。


「なんだアイツ……」



 各リーグ二試合目に入った。

 うっすら汗をかいているアヤメ。


 "今日は体が動く"


 そう思った刹那、アラカンダルの剛剣が金属盾をひしゃげさせた先刻の光景を思い出す。


 暗くなるアヤメの表情。

 

「同年代に稽古の量で負けてると思うかい?」

 タケルは腕組みし、微笑みながらアヤメに声をかけた。


 アヤメの脳裏に苦しかった稽古の日々が蘇る。

 しかし自ら望んで乗り越えてきた道。


 顔を自らの両手で叩く。


 深呼吸を一つ。

 長く息を吐き終えた頃には落ち着きを取り戻した顔。


「……ありがと、タケルちゃん」


「大丈夫、磨いた技は裏切らないよ」


「行ってくる!」



「次戦、アラカンダル・エラ・カリス対、アヤメ・サギモリ!」


 アヤメは全身から紫色のシマーを立ち上らせながら、アラカンダルの待つ試合場に駆け上った。

 


 


 


 







 

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