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青の年代記〜山奥でひたすら修行した少年が、いつか英雄になる話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

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陽暦1490年10月〜同期生たち⑦ 裏切り

 ジンとリョウは相手を一人一人観察した。

「どう思う?」

 ジンがリョウに尋ねる。

「厄介なのはいない」

 即答するリョウ。

 頷きあう2人。

 

「じゃあ、パパッと行ってくる。2分後に来て」

 ジンはそうファルクたちに言うと、リョウと2人で木陰の間を素早く進み、ローブの不審者集団に近づく。


 5人組の男だ。

 地理案内板の位置を動かしている。


「こんにちは!僕ら騎士です。看板動かして、何をしてるんですか?」

 王都騎士団の紋章の入った剣を見せつけてつつ、ジンとリョウが木陰からいきなり集団の前に現れた。

 物凄い笑顔。

 毒気を抜かれる男たち。

 不意を打たれて動揺している。


「騎士団で防犯で回ってるんだけど、怪しいキミたち、危ないもの持ってない?」


「そ、そんなもんねぇよ?」

 先頭の男が動揺したまま口にする。


「じゃあ、持ち物見せられるよね!はい、出して、出せない?ローブの上から触るよ……」

 あっという間に相手の隙をついて近づいているジンとリョウ。

 有無を言わせずローブの上から相手の腰を触る。

 

 これは、人の心理を利用した“空白の15秒”。

 不意を打たれた人間はなぜかその間、相手を受け入れる習性があることをジンたちは実習中に学んでいた。


「あれっ?これは剣だなぁ?こっちは槍?キミ達は冒険者?登録証見せてくれない?無いなら不法所持になっちゃうけど?」

 ほぼ決め打ちのシナリオで難癖をつけるジン。


 ローブの男たちはもたついている間、話し合う暇もないまま一気に詰め寄られた。

 言い訳もできずどうしようもなくなり、お互いに目配せする。

 

 その動きをリョウもジンも見逃さない。


「いや、今から出しますよ登録証……」

 ローブの下に手を入れて、剣を抜こうとする先頭の男。


 分かっていてそのまま抜かせるリョウとジン。

 先頭の男の動きに呼応して武器を抜き始める後ろの4人。


 だが既に間合いが近すぎる。


 先頭の男が小剣を前に突き出して構えようとした瞬間、ジンがその定まっていない腕を手刀で横薙ぎにした。

 二の腕にある急所のツボを強打され、武器を取り落とす男。

 痛みのあまり前屈みになる。


「はい、お前ら逮捕ね」

 そう言ってジンは男の顔を膝で蹴り上げた。

 後方に吹っ飛ぶ男。


「は?」

 ファルクが思わず声を漏らした。


 後方にいる4人が動揺している隙に、リョウは別の男の後方に回り、武器を持つ手を握って足をかけ、前に押し倒して顔面を地面に強打させた。


 その脇の男が槍をローブの下から出して構えようとしている。

 しかしリョウはその男がもたついている間に既に起き上がっており、手元を制すると同時に喉元に軽く中指を立てた一本拳を差し込んでいた。


「ゲハッ!」


 前のめりに倒れ込む槍の男。


「テメェ!」

 ダガーを取り出した別の男。


「やれんのか?」

 リョウが手首を前に返してアピールする。

 相手は素人に毛の生えたくらいの動き。


「クソが!」

 男が体当たりで突いてこようとした瞬間、ジンは死角からその男の足をかけた。

 ダガーを持ったまま転ぶ男。

 倒れた拍子にその刃で手を切ってしまう。


「あーあ、危ないもの持ってるから」

 他人事のようなジン。


 リョウがそのままその男の首筋に手刀を落とす。


 最後に残った男は折りたたみの弓を取り出そうとしていたが、前に捨てた。


「もの分かりいいじゃん?」 

 リョウはそう言いながら、相手の動きから目を離さない。

 まだ何か諦めていないように見える。


 思いっきり気迫を込めて相手を睨みつける。


「手を頭の後ろに回して跪け」


 男は一瞬悩んだが、今度こそ諦めて言う通りにした。


 

 ファルクとアルマが走って来た。


 “手際良すぎんだろ……”


 2人とも驚きつつ、男たちを縄で縛ってお互いに結ぶ。


 見るとそのうち3人のローブが一部焼け焦げている。


「お前ら……こないだの炎の矢、覚えてるかい?」

 ファルク班長が静かに怒りを表した。


 男たちは完全に沈黙している。


 

 付近を探すと小屋があり、男たちの馬、荷車があった。

 小屋の中には武器や服、貴金属などがごちゃっと散らかっている。


「さて、お前ら、死霊屋敷を利用した追い剥ぎで間違いないな?」

 ファルク班長の質問はただの確認に過ぎない。


 男たちは皆黙っていて答えない。

 アルマが精神集中して相手の頭を触る。


 死んだ旅人から金品を奪っているイメージの断片。


「班長、こいつら真っ黒」

 アルマがげんなりして言う。


「さて、よく聞け。こないだ、あのタイミングで行動を起こしたのは、何故だ?」

 ジンがゆっくり、落ち着いて問いただす。


「……タイミングに意味なんてねぇよ」

 弓の男が不貞腐れて答える。


 アルマが男の頭に手を置いて精神を集中した。


 不意に浮かぶ2班の”バルド・ハーケン“の顔。

 金貨のイメージの断片。


「はぁ!?」

 知っている顔に驚いてへたり込むアルマ。


「……何が見えたの?」

 ジンが聞いた。


「2班のバルド・ハーケン……と金貨のイメージ……」


 ”バルド・ハーケン“はジェイナス王子の不興を買って辺境送りにされたハーケン子爵家の長男。

 一瞬目を閉じて考えるジン。


「……そうか……。さて、嘘は通じないことは分かっただろう?お前に金貨を握らせたヤツ、具体的になんて言った?」


 ジンは懐から”背に毛の生えたナイフ“を取り出して、何か薬品をかけ始めた。

 そこにいきなり指をボキボキ鳴らし始めるリョウ。


 震え上がる男。


「……集団の最後の方、金持ちばかりだぞって言って、金貨10枚くれたんだ。それだけだ」


 アルマが精神感応を使ったが、その言葉に嘘の匂いは無い。


 同期生の騎士にあるまじき卑劣な裏切り行為を知り、3班の男たちは今、やるせ無い怒りに身を震わせていた。

 


 


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