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青の年代記〜山奥で仲間とひたすら修行した少年が、いつか英雄になる話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

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陽暦1490年9月〜ライデル動乱15 エピローグ

 黒の傭兵団は即日投降した。


 ライデルとその夫人、息子たちは捕縛され、王都に移送された。


 病床の王の前まで引っ立てられ、そこで王の署名した「国家反逆罪によるライデル伯爵の死刑及び家名取り潰し」の書面をオード師が読み上げる。


 ライデル元伯爵は即日絞首刑となった。


 かつて一州に威を張った伯爵は、誰に看取られる事もなく、その名を失った。


 夫人とその家族は、一部手回りの品以外の財産を没収され、国外追放となった。

 また、荘園は王家に没収され、ジェイナス王子の管轄となった。


「さて、契約も満了した。西へ帰るか」

 ライデル元伯爵の処刑から一週間後、“暁月”はブリッジウエスト市からそのまま“文化の道”を西に進んで行く。


「あの日のこと、いつか思い出す気がするわ」

 馬上のシオリが呟く。


「ああ」

 アラカンダルは、強い目をした黒髪の若い騎士のことを思い出していた。


「彼らとは、いつかまた会いそうな、そんな予感がする」

 シオリが言っているのが誰か、アラカンダルは聞かずとも分かっていた。



 リョウたち276期生は、すっかり日常の生活に戻っていた。


 騎士としての基礎を身につけるべく、隊舎において鍛錬する日々。


 ライデル元伯爵家の荘園はすっかり平穏を取り戻し、徴兵農民たちも何事もなかったかのように本業に勤しんで、今は麦の種蒔きを行っている。

 

 先輩騎士たちがしばらく交替で駐留し、治安維持に当たっているが、そのうち戻ってくるだろう。


 平穏な日常が訪れていた、と皆思っていた。



「……お前らが戦場にいる間、こっちはこっちでいろいろあったさ」

 3班のファルク班長が、自習室で班員たちに呟いた。


「ほうほう、もしかして、ヴァルターくん率いる2班が何か言ってきたとか?」

 ジンが目を輝かせて聞く。


「なんで分かる?」


「時機的にそういうことをするはずです。フフフ」


「アイツあんたと同じようなタイプだもんね」

 ヤナはジンに対していつも辛辣だ。


「……それはさておき、アレでしょう、2班員で4班、5班の居残り組を取り囲んで懐柔してきたんでしょう?レオニード公爵の有能さとジェイナス王子の悪口をあれこれ言いながら」


「気持ち悪いくらいその通りだ……」


「それで、忖度されて居残っているヴィクトル総代の孤立化を図った……ついでに邪魔な3班も仲間外れにしよう……っていうあからさまな動きにファルク班長が巻き込まれている……と。かわいそう」


「他人事じゃねぇよ。ジン、なぜかお前の悪口もずいぶん言われてるみたいだぞ」


「心外ですけど、全くの想定内です」

 真顔のジン。


「中にはヴィクトル総代の指示を嫌ヅラしたり無視し始めてる奴らもいる」


「平民出身からすれば、忖度されて戦場に行かないお貴族サマには不満が出て当然ですからね」


「やらせときゃいいんじゃねぇの?」

 リョウが言う。


「いや、こう言うのって実害出てくるからね。厄介だよ……さて、どうするかな」


「どうするの?面倒なのはイヤなんだけど」

 ヤナが心配したように聞く。


「今のところ、出方を見るしかないかな……」

 ジンが口元に手を当てて考え事をし始めた。

 こうなったら幼馴染たちは黙って見ているしかない。



「リョウ、お前どっち派なんだよ?」

 食堂で食器を片付けていると、横から5班員のグレンが声をかけてきた。

 行商人の子として育ったリョウたちの同世代。


「なんの話?ヤナとセラの話?」

 リョウには全くピンと来ない。

 女性の好みの話なのかと思っている。


「レオニード公爵か、ジェイナス王子か、次の王様の話だよ」


「ああ、その話か。いや別に誰が王でも……」


「俺は、レオニード公が良いと思っている。お前の本音のところはどうだ?」

 真剣な目で聞いてくるグレン。

 リョウはジンから“はぐらかしといて”と言われたことを思い出した。


「俺はレオニード公爵は好きじゃない」

 思わず本音が出てしまう。

 レオニード公爵首謀のテオ村襲撃でトール騎士が死にかけたことを思い出すと今でも冷や汗が出る。


「だが、レオニード公のテリス・イースト州は、徹底した税制の合理化により、経済が好調。民の所得も増えジェイナス王子領より生活が楽になっている。好き嫌いだけでは世の中は回らないぞ」

 グレンは本気の口調。


「そういうもんか。そりゃ一理あるな」

 リョウもさっき口が滑ったので今回は同調してみる。

 

「今度グスタフの勉強会に参加しろよ。ちゃんと聞けば、考えが変わるぜ」


「考えとく」

 と言いながらも、リョウは“こういうことか”と納得していた。



「で、どっち派なんだよ?」

 アルマはリョウから昼の話を聞いた後、ニヤニヤしながらリョウに質問してくる。

 もちろん女性の好みの話だろう。


「精神感応使った瞬間に殴るからな?」

 まだ思春期のリョウにはイヤな質問だ。


「おっと、俺はエステル嬢が最近素直になって可愛いって思ってるぜ?」


「それはそうだな……」

 リョウは、確かにエステル嬢が戦場から帰ってきて、以前よりもツンケンしたところが形を潜めた感じを受けている。

 武術の訓練に関しては以前よりもストイックさがうんと増しているし、他人の話を素直に聞くようになったように見える。


「この期の女性陣は美人揃いで俺は嬉しい。1班はエステル嬢にカルラ、2班にはマリア様、3班にはヤナにセラ、4班はケイトにタリナさん、5班にはライナの姉御にアレッサ……より取りみどりじゃん」

 指折り数えるアルマ。


「女子全員じゃねぇか。節操無さすぎんだろ」

 

「今まで男ばっかりできたんだからしょうがないだろがよ」

 男子の寄宿学校で過ごしてきたアルマ。


「せいぜい嫌われないようにしなさいよ?」


「……それな。俺が精神感応使えるって分かってから、みんな距離を取るようになって……だからこれまで隠してきたのに……」

 本当に悲しそうなアルマ。


「魔法抵抗力の強い女性、探しな」


「手伝ってくれ」


「巻き添えはやーだね」

 

 

 


 

 


 

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