表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青の年代記〜山奥で仲間とひたすら修行した少年が、いつか英雄になる話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
108/146

陽暦1490年9月〜ライデル動乱⑨ 荘園の戦い

 当日の夜中、サイの第四大隊は荘園内の街道を大回りに、城砦の北側約2キロの地点まで駒を進めた。


 索敵陣形で周囲の敵がいないことを確認し、土色の幕を張って即席の厩舎を作り、馬を預ける。


 そこから城砦まで、緩やかな登り傾斜になっている。

 普通に進軍するとすぐに見つかってしまうため、水路に体を隠しながら慎重に進んでいく。


「……誰が思い付いたんだこのルート」

 膝上まで水に浸かりながらリョウたち3班のファルク班長が呟く。


「ごめん、それは僕」

 ジンが済まなそうに言う。


「あとで気温が上がって丁度良くなるよ」

 アルマがフォローする。


「……まったく、貴族にこんなことさせるなんて」

 エステルがぶつくさ言うが、足は止めない。


 

 大隊がしばらく水路沿いに進むと、開けて木が生えている場所に着いた。

 夜が白み始める。

 あと200メートルで北の城門だ。

 一行は静かに木々の陰に隠れる。



「……戦う前から疲れたよ」

 フォン・バルドが靴の中の水をひっくり返しながら言う。

 みな返事はしないが疲れた表情だ。


「総員、休息しながら待機。本隊の攻撃に合わせてコチラも動くよ」

 サイは各小隊の伝令を集めて指示を出す。



 朝日が差してきた。

 誰も言葉を発せず、緊張した面持ちで各々の武器を握りしめている。


 爽やかな風が吹いている。

 静かに時が流れていく。


 すると、遠くから微かに物音がし始めた。

 角笛の音、人々の声も聞こえてくる。


 サイは右手を上に突き上げ、タイミングを測っていた。

 気丈な姉御、ライナ・グレイスが少し震えながら前を見ている。

 名家出身のヘルムート・グライスは剣を抱き、静かに目を閉じている。


 "この手を振り下ろせば、この子たちは戦場に出なければならない…..."


 いつの間にかリョウとハクヤが横に来ていた。

 力強い目で見つめてきて、頷きながら言った。

「先生、俺たちも、騎士なんだ。頑張るよ」


 “覚悟が決まっていなかったのはボクの方か”


「四大隊、守備隊形のまま、進軍!飛来する矢に注意して進め!目指すは北門!」

 サイは右手を振り下ろして号令を下した。



 少しずつ城砦に近づくに連れ、城壁の高さが際立って行く。

 城砦の方で人が慌ただしく動き始めた。

  

 敵兵たちが城砦の上で弓を構え始め、次々に矢が飛んでき始めた。

 彼我の距離はおよそ100メートル。

 

 足元や構えた盾に矢が刺さって行く。


「うおぉ、怖え!」

 五班のイザークが盾を上段に構えながら口にする。


「まだ当たる距離じゃない!敵の手元を冷静に見極めろ!」

 一班の今回のまとめ役ロナルド・フレアが叱咤する。

 総代のヘルムート第三王子はもちろん忖度され、今回の討伐部隊から外されているため、自分がやらなければという思いが強い。


「先生、そろそろ行っていいか」

 リョウが飛んでくる矢を軽く払いながら、サイに聞いてきた。


「……頼む。無理はするな」

 

「よーし!行くぞハクヤ!」

 

 リョウとハクヤは、城壁に向かってジグザグに走って行った。


 動きが速くて矢の狙いがつけられない。


 当てずっぽうに放った矢は全く見当違いの場所に突き刺さって行く。

 

 城砦の上の動きが少し混乱しているかのようだ。


 “そろそろ頃合いか……?”

 

 リョウがそう思い始めた頃、薄い褪せた黄色の鎧を着た兵たちが、守備隊に加わった。

 

「あーっ!“砂狼”じゃねぇか!俺の古巣の!まっずいなぁ!」

 元傭兵団出身のフォン・バルドが叫ぶ。


「何がどうまずい!?」

 サイが即座に問う。


「カザンとバドゥルって2人魔法使いがいて、風と砂で連携してくるぞ!」

 デカい声でリョウに向かって叫ぶフォン・バルド。

「聞こえたかな」


 リョウは右手を挙げる。


「確かにそりゃまずいな!範囲は!」

 サイが城壁の上を睨んでいると、杖を構えた男が2人。

 灰色の髪を短く刈り込んだ長身痩躯の男と、褐色の肌の骨太な男。


「矢の届く距離くらい!」

 フォンが叫ぶ。


「遠いな!」

 サイの闇魔法の効果範囲より遠い。



 その時すでにリョウは自分が土台になってハクヤを城壁の上までジャンプさせようと、盾を上段に構えていた。

 このくらいの高さならハクヤは飛び乗れる。


「来いっ!」


 ハクヤが猛然とリョウの盾に向かって助走を始めた時、一陣の猛烈な風が吹いた。


「おわぁ!」

 リョウの体重でも盾が煽られ、支えきれない。

 ハクヤが一旦離脱する。


 するとその風に砂が混ざり始め、風と砂が少しずつ渦を巻き始める。

 見る見るうちに砂の竜巻が出来て、段々と大きくなっていく。


「これか!やば!」

 リョウは身を低くして盾を抱き抱えたまま魔法の効果範囲から離脱する。


 砂の竜巻は解けたが、その後、それが砂の嵐のように第四大隊に向けて流れ込んでいく。


「盾を地面に固定!阻止に、構え!」

 轟轟という砂混じりの暴風の中、サイが在らん限りの声で号令をかける。

「魔法は長くは続かない!我慢比べだ!」


 “なんて厄介な奴らだ!“

 内心は焦っているサイ。



 追い風に乗った矢が砂嵐と共に飛来し、騎士たちが膝立ちで構えた盾に深く刺さる。

 視界は非常に悪くなっていて、迂闊に身動きが取れない。


「うわぁ!」

 誰かが流れ矢に当たったような声。

 五班のノルベルトの太腿に矢が突き刺さって出血している。


「今行きます!」

 セラが低い姿勢のまま声の方向に移動した。

 矢を引き抜く。

 激痛で悲鳴を上げるノルベルト。

 即座に治癒魔法をかけると、出血が止まり傷が治っていく。

「助かった、セラ!」

 

 セラは注意深く周囲に怪我人がいないか観察を続けている。



「さあ!今のうちにどんどん矢を放て!石を投げろ!盾をぶち抜いちまえ!」

 目つきの鋭い長身痩躯の男が杖を前に差し出しながら叫ぶ。


「おい待て、カザン!風が弱まっている」

 骨太褐色の男が声を上げる。


「んぁー?そんなことあるかバドゥル……て、お!」


 突如として目の前に白い氷の霧が立ち込めていた。

 こちらの風とせめぎ合い、風がそこで阻まれて弱められている。


「俺たちと魔力比べってか!どいつだ!」


 カザンが魔力の発生源を見ると、そこにはさっきちょこまかと走り回っていた猛獣がいた。

 それはもちろんハクヤだが、カザンやバドゥルには知る由もない。


「強力な幻獣の類か!」

 バドゥルが叫ぶ。

「面白れぇ!手当て上乗せ!オメェもやれ!砂刃撃て!」

 カザンはさらに魔力を上乗せしていく。


 ハクヤが低く唸り、全身が白く輝く。

 強烈な風と氷の霧がせめぎ合う、が風は完全には止まらない。

 

 低く四肢を踏ん張り、爪で地面を掴むが、地面を削りながら少しずつ後ろに押されていくハクヤ。

 


「ぬおおぉぉ!」

 バドゥルが腕を振ると、砂でできた大きな刃が次々に前に飛んでいく。


 ハクヤは風とのせめぎ合いで動きが遅い。


 その砂の刃が当たる、と見えたその時、刃は真っ二つにされ壊れた。


 ハクヤの前でヤナが剣を抜き、立っていた。


 





 







 


 



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ