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青の年代記〜山奥で仲間とひたすら修行した少年が、いつか英雄になる話〜  作者: 不知火亭先多
第二章〜王都騎士団編

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陽暦1490年8月〜ライデル動乱②

「あいたぁ!」

 オード師に頭突きされた額を押さえつつ仰け反るアルマ。


「……って、どこじゃここは……グゥッ!」

 意識不明から回復したが、体が痛むオード師。


「オード師!大丈夫ですか!?」

 声を聞きつけ、バルガン団長が病室に駆け付けてきた。


「……おお……バルガンか。頭は痛いし背中はなお痛い……ここは……騎士団の療護院じゃな」

 周りを見回し察するオード師。


 経過を説明するバルガン団長とライリー副団長。


「そうか……騎士団に助けられてしもうたな……ありがとう。こんなジジイを助けてくれて」

 皆に頭を下げるオード師。

 アルマは少しだけバツが悪そうな表情で下を向いた。


「それで、黒幕に心当たりは」

 単刀直入に団長が尋ねる。


「いろいろあるが……直近ではライデル伯じゃな、もちろん」


「犯人は西方の異人と聞いておりますが……」


「凄まじい手練れであった。生きておるのは僥倖というもの」


「師にはここでしばらく療養して頂きたく思います」


「うむ……この傷では致し方あるまい……幸い王宮にも遠くない。ここを当面の間、臨時宰相室とするぞぃ。ワシの部下どもにそれを伝えてくれ……準備させる」


「オード師!無理をされてはいけません。傷に障ります」


「……まだ弱っている姿を見せる訳にはいかん……分断が進んでしまうし、何より内乱の準備を進めておるライデルと立ち向かう者がおらん」


「……ライデル伯は内乱にまで踏み切ると?」


「間違いない。事実、今も続々と異国から傭兵団を掻き集めておる」


「そうでしたか……まずはライデル伯の真意が如何なるものか、私がライデル伯爵の荘園に直接赴いて、問いただします」


「無理じゃな。誰が行こうと捕えられて殺されるのがオチよ。王への報告なしに軍備増強を行うことは法で禁じられておるのを盾にして、近日中に内乱首謀で断罪する。そして王命で武装解除の最後通牒を行う。どうせ話にはならんから、そこからは戦争じゃわい」

 病床にありながらオード師の眼光は爛々としている。


 “やはりこの人はまだヤーマスに必要だ“

 バルガン団長は言葉もない。


「ふん。騎士団の勝利がなければ、ヤーマスは終わりよ。全力で支援する。死ぬなバルガン」


「はい」

 バルガンは力強く頷いた。



 王都ヤーマスから北東に半日ほど進んだ場所にライデル伯爵の荘園はあった。

 ここは”文化の道“やテリス海、テリス海大橋といった重要な場所に程近い要衝。

 過去に城砦化されており、ライデル伯爵家の切り札の土地。


 荘園の中央に、ライデル伯爵の城があった。

 そこに騎馬と荷馬車の数十人の一団が到着した。


 周囲にいる他の傭兵団の者らがざわついて注目する。


「おお!ようやく来たか!」

 ライデル伯爵が満面の喜びを表している。


「待たせたな。アンタがライデル伯爵か、世話になる。俺が“黒の傭兵団”団長のガレス・ブラックウッドだ。よろしくな」

 馬から降りて、黒い鎧を身に纏った大男は、ライデル伯爵に手を伸ばした。


「いつまでになるかわからんが、此方こそよろしく頼む」

 ライデル伯爵はガレス団長の迫力に押されながらもその手を握る。


 分厚く、硬い、傷だらけの大きな手だ。


「ははは、大層な前金を貰っているんでな!任せておけ。おい、皆、荷解きと設営。そして休憩のち、日課訓練!」


「了解!」

 団長の号令と共に一斉に動き始める黒の傭兵団。

 長旅の疲れを感じさせない機敏な動きと手際の良さ。

 何より他の団よりも装備が充実している。


「おお……」

 ライデル伯爵はその練度に舌を巻いていた。


「さて、情勢の再確認といこうじゃないか。守備隊や他の団のトップらを集めて、説明してくれ」

 ガレス団長はライデル伯爵を促す。


「分かった。30分後に屋敷に来てくれ」

 出会って5分でライデル伯爵はこのガレス団長を信頼し始めていた。



「……という訳だ」

 ライデル伯爵は、屋敷の応接室で各団長に現状を説明した。


「……なるほど、逆賊扱いされているが、無罪を主張。自衛の為に荘園内には誰も入れない。そのうちレオニード公爵が挙兵すれば、呼応して打って出る、と。それまでの間の守備が主な任務だな」

 冷静にまとめるガレス団長。


「そうだ」


「逆賊扱いなのは良くねぇがな?ヤーマス人としては」

 ヤーマス王国で“砂狼”傭兵団を率いているザハル・カルディスが苦い顔をする。

 苦労性が顔に出ているが、しぶとそうな中年だ。


「しばらくすれば情勢が変わる。全責任はワシが取る。貴殿らは安心してくれ」

 

「任せたぜ?伯爵サマ」

 言質を取っただけなのですぐに引き下がるザハル。


「さて、騎士団にどう対応するのかね?」

 もう一つの傭兵団の団長が問いかける。

 リア国の傭兵団“夜鴉のコンドッタ“団長ルチアーノ・ヴェルチェだ。

 ウェーブがかった黒髪の伊達男。

 

「我が荘園に入ろうとする者は、全て敵だ。ルチアーノ殿。断固として門前払いよ」


「ヒュー!そいつァ、シンプルで良いね」

 大袈裟に肩をすくませるルチアーノ。


「……分かった。では、当方の総戦力と地形条件をまとめよう。守備の方法を検討しようじゃないか諸君」

 ガレス団長の発言に誰も異論を挟まない。


「頼んだぞ……逆賊と謗られようと、ワシは、もう引き下がれないのだ……」

 ライデル伯爵はそう呟くと、地図を広げた。

 


 

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