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未完世界のリライト ーシナリオクラッシュ・デイズー  作者: PRN
Chapter.5 人は誰しも秘密がある、しかもかなりエグめの

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109話【VS.】逢魔の半牛半馬 凶馬猛牛のミケンタウロス

挿絵(By みてみん)


ダンジョンボス

強靱なる半牛半馬


圧倒的火力

凶暴なる暴力


対応策なし

死中求活の


一手

「BUOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」


「くるぞッ!! 《疾走(フラッシュ)》!!」


 豪速の大斧が嘶きとともに襲いくる。

 刻印を発動して辛うじてかわすものの、大斧は俺の立っていた場所に突き刺さった。

 一撃で理解する、これは人を狙って当てていい物質ではない。砕かれた大地を目の当たりに全身の毛が逆立つ。


「Brrrrrr……」


「斧が大地に突き刺さって抜けないようだね! 己の力を御し切れていない証拠さ!」


「魔法を編み終えるまで前衛のかたは陽動をお願いします!」


 ミノタウロスとケンタウロスの亜種ミケンタウロス。

 相対するは、俺、ヒーラー、天才のモヤシ。


「(うん……俺が前衛するしかないね、これは)」


 精霊の剣を抜いて構える。

 勝ち筋なんて微塵も湧いてこない。あまりに巨大すぎる暴虐的な存在を前に希望は喪失していた。

 そしてミケンタウロスは、斧を大地ごと振り上げると、前肢で掻くように突進してくる。


「RURRRRROOOOOOOOOOO!!!」


 もはや馬ではない猛牛の類い。

 それでいて猪突猛進。4本の脚が大地を踏むたび世界が揺らぐ。


「《疾走》!」


 身体を捻りながら空へと逃げおおせる。

 当然の理の如く、俺の立っていた場所に大斧が地を破砕した。


「BOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」


「《疾走》!」


 着地からの側転。


「ROROROROOOOOOOOOOO!!!」


「《疾走!》」


 さらに相手の股ぐらを通り抜けるように前進する。


「BUEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」


「《疾走》! 《疾走》! っ、《疾走》!」


 もうなにがなんだかわからない。

 大斧がかざされるたび、刻印を呼ぶたび、視界が線になって溶けていった。

 俺の身体はバグっている。とはいえこんなものにそうそう当たりたくはない。

 なによりサーファとドラカシアがいる状態で、バグっているところを発揮するわけにはいかなかった。


「(マズい! マズいマズいマズいマズい! 1発受けただけでアウトなうえに衝撃で気を失ったら2人がやられる!)」


 息は上がっている。

 しかしそんなことは二の次だ。

 なんとしてでも避けつづけながら打開策を講じるしかない。


「BOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」


「(訓練のおかげか避けることは辛うじてできる! だけど、10秒の未来で立っていられる自信がない!)」


 敵の体力の底がわからない。

 ただひたすらに無茶苦茶だった。敵は瞳を血走らせながら大斧を紙のように振ってくる。

 当然だが常人が当たれば致命傷は避けられない。この死を眼前に突きつけられる闘牛にも似た状態は肉体より精神力の消耗戦だ。


「《闇を照らす原初の輝きよ。我が呼び声に応え、収束し、解き放たれよ。万象を白き明光にて影を赦さず滅し賜え》」


 するとそのとき清らかな声が暴風のなか響き渡った。

 ドラカシアの掲げた錫杖の先端に目も眩むほどの光が燃えさかっている。

 そして彼女は錫杖の石突き部分を固い地面へしたたかに打ちつけた。


「《光輪爆砕レディアント・バースト》!!」


 次の瞬間、光が炸裂した。

 光の発破が巨大なミケンタウロスの躯ごと空間を呑みこんだ。


「うっ、まぶしっ!?」


 俺でさえまともに目を開けていられないほど。

 しかし決してイヤな光ではなかった。優しく清浄でどこか暖かい。心を浄化するような聖なる光のよう。


「Brrrrrrr……」


 まばゆい光が閉ざされていく。

 巨躯は未だ健在だった。顔面を守るようにクロスした腕からしゅうしゅう焦げついた蒸気が立ち昇っている。

 ドラカシアの放った光の浄化によって多少のダメージはあるらしい。


「GUMOOOOOOOOOOOOOO!!!」


「つっ、光が弱点じゃないですって!? しかもかなり――きゃっ!?」


 だが、それまで。

 ドラカシアは驚いたように短く悲鳴をあげた。

 敵の猛攻をしなやかなバックステップでかわす。


「おいそっちじゃねぇぞ! 狙うならこっちだろう!」


 ターゲットが変わった。

 俺は慌てて精霊の剣でミケンタウロスの背後を強襲する。

 思い切り振りかぶった剣と体重を全力で合わせ、首の後ろに振り下ろす。


 だが。


「こいつ!?」


「Booooooo……」


 魔法とは異なる光が爆ぜた。

 ミケンタウロスは大斧で俺の渾身を見もせずに防いだのだ。


「BOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」


「ぐぅぅぅぅぅ!?」


 そして巨大な拳が俺の側面を打ち据えた。

 あまりに巨大すぎる拳。まるで高速で迫る壁に押しつぶされるような錯覚を覚える。

 だが空中だったおかげか、それほどダメージはなく、威力は分散されていた。


「ナエさん!? いま治癒魔法をかけます!?」


「大丈夫だ! それより次の攻撃に備えつつ距離をとれ!」


「でも直撃だったではないですか!?」


「飛んでくるカブトムシを殴ってもあまり効かないだろ! それと同じ!」


 駆け寄ろうとしてくるドラカシアを制す。

 俺は再び立ち上がって剣を構え直した。


「(コイツ……たぶん実力とか経験とかそういうのじゃない。直感オンリーで戦う野生タイプのフィジカルをもっている)」


 もとよりこの世界の魔物に脳は備わっていない。

 本能的に、かつ獰猛で、身勝手で、悪逆。敵に回してこれほど恐ろしいとは。

 それにいまの1撃を俺以外が受ければとうてい気絶ではすまない。普通の人間ならばトマトのようにひしゃげたかもしれないほどだった。

 勢いと流れで説得できたが、もう何発ももらえばいずれ俺の異常さがバレる。


「(俺のほうから攻めるのはダメだ! 回避がおろそかになって攻撃をくらっちまう!)」


 せっかく転んで立ち上がったというのに得られるものがなさすぎた。

 一進一退とはまさにこのこと。展開が膠着からいっこうに前へ進ませてくれない。


「次! きます!」


 ドラカシアの叫びで急激に意識が引き戻された。


「Brrrrrrrrrrrrr……」


 ザッ、ザッ。


 ザッ、ザッ、ザッ。


 ミケンタウロスの血走った瞳が俺という標的にターゲッティングを行っている。

 岩盤ほども固い床を硬い蹄の前足で掻く。有蹄類特有の動作だった。ひと掻きごとに緊張感が膨れ上がっていった。


「(どうする!? 俺に敵の攻撃がかわしつづけられるのか!? でもミスったら六冠2人を死なせることになるんだぞ!?)」


 しょうじき、重すぎる。

 六冠だというのもあるが、人の命を背負うというのは命の責任でもあった。

 ここで2人を失えば、大ギルドそのものに致命傷を与えかねない。もしそうなれば人類圏の存続にも関わってくる。


 やるしかない。


 そう俺が身構えた直後だった。


 声が空洞に吸いこまれ、わずかに遅れて返ってくる。


「そのまま戦闘を継続するんだ! 敵にもっと大ぶりの攻撃を振らせつつ暴れ回らせろ!」


 サーファの声だった。

 彼は広い空間の隆起した場所に立っていた。

 いつの間にか戦場を見渡せる場所に位置どっている。


「ドラカシアは敵の異変に構えておくといい! とりあえずキミはナエだけを見て補助を徹底し敵の気を引かないよう務めるんだ!」


「――了解しましたわ!」


 一瞬の躊躇も思考もなかった。

 ドラカシアはサーファに一瞥くれただけですぐさま錫杖を掲げる。


「申し訳ありませんが致しかたありません。ワタクシとしては不本意ですけどナエさんには少々無理をなさっていただきます」


 なにそれ超怖いんだけど。

 だがすでに彼女の瞳にはやる気、というか本気に満ちていた。


「《血潮に眠る暴威を呼び覚まし、身に神威を宿し賜え。脆弱なる肉体の限界を超越させよう》」


「とつとつと唱えはじめてるけどそれって補助魔法の詠唱じゃなくない!?」


 ダメだ。すっかりドラカシアは詠唱モードに入っている。

 俺の抗議が届いている様子はまるでなかった。


「《大地を砕く力よ汝の内に奔れ。天を裂く風よ汝の脚にまとえ》」


 錫杖の石突きが地を叩く。

 反響するその音はさながら裁判で叩かれる木槌(ガベル)のよう。

 秩序と裁断。いま彼女は審判を下す。


「《力の覇奔流ストレングス・オーバーフロウ》! 《風速超過ウィンド・オーバードライブ》!」


 唱え終えた直後だった。

 俺の全身に光と希望と、なんかよくわからないすさまじさが膨れ上がっていった。

 なんと言えばいいのか。肉体の形はそのままに、ボディビルダー並の肉体的自信が湧き上がってくる。


「え……なにこの魔法? なんかヤバい薬でもやってるような感覚がするんだけど?」


 支援魔法といえば聞こえはいい。

 しかしこの――やったことないけど――オーバードーズしたような感覚に戸惑うしかなかった。


「それは筋力と速度を増す最上位の魔法です! 人の限界を超えた域にまでナエさんの身体能力を強引に引き上げました! なので戦闘後はいままでに感じたことのない猛烈な筋肉痛に見舞われることでしょう!」


「無許可でなにやってくれちゃってんの!? そんなものただの人体破壊攻撃魔法じゃねぇか!?」




※つづく

(次話への区切りなし)

最後までご覧いただきありがとうございました!!!


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