52:命の恩人
すみません。諸用でバタバタして遅くなってしまいました。
「レナード……」
レナード・リーフレッド。忘れるわけもない、ついさっき出会った《生成系魔術師》。そして、俺達にも発現しなかった《特異系》ーー重力魔法の使い手だ。
ここに現れたってことは……。
まさか、こいつが助けてくれたんだろうか?
いやいや、問答無用で俺達に喧嘩売ってきたこいつがそんなことするか?間違いなくしない。でも、じゃあ、なんでここに……?
まあ、なぜレナードがここにいるのか、そんなことは後でいい。
それよりーー
「メアリーちゃん……あのとき、俺達と一緒にいた女の子を知らないか?」
「ん?ああ、あの女か。横の部屋で寝てるぞ」
「そ、そうか。無事なのか……。よかった……」
そう聞いてとりあえず安心した。いや、こんな状況で失礼なのは重々承知なんだけど、レナードの言葉を素直に鵜呑みにしていいのかわからない。けど、あんなハチャメチャなやつだったけど、嘘はつかないと思う。なんとなくそんな気がした。
今はレナードもだいぶ話せる状態だしな。こいつがちゃんと人の話を聞いてるのも意外だった。
「安心しろ、嘘はついてねえからよ」
しかし、俺の訝しげな態度が伝わったのか、レナードはそう言ってきた。
「わ、悪い。出会いがあんな感じだったからさ……。でも、ありがとう。もしかしてレナードが俺達を助けてくれたのか?」
「……そうだ。第十一階層でボロ雑巾みてえになってたてめえらをな」
「レナードもあの場所まで来てたのか……。どんな状況だったか聞いてもいいか?」
「あ?ああ。どこから話すかーー」
レナードの話はこうだった。
目を覚ますと俺達がいなくなっていた。俺達が上階層に向かったと思い、とりあえず上を目指そうとしたが、身体が動かなかった。
しかしなんとそこで通りすがりの《回復系魔術師》に運良く治療してもらうことができたらしい。なんたる幸運。主人公なのかこいつは。
そしてレナードは残りの階層を難なく突破。第九階層に『竜』が全くいなかったことで俺達の仕業だと確信し、さらに上を目指した。
《階王》のいない第十階層をスルーして第十一階層へ。そこで倒れている俺達を発見したそうだ。
本当にレナードがいなかったらどうなっていたことか……。気絶した状態で魔物の巣の中なんて、笑い話にならない。
ここからがさらに驚きなんだけど、レナードは俺達をゴーレムに乗せて第十五階層の転移魔法陣まで連れて行ってくれたらしい。そしてとりあえず只人の国の治療院にぶち込んでくれたと。ここは治療院らしい。
ちなみにレナードが俺達を拾ってくれてからすでに2日が経っているとのこと。丸2日も寝込むなんて、いつ以来だろう……。
そして今、ようやく俺が目を覚ましたと。
「その、ありがとう。レナードがいなかったら俺達は死んでたかもしれない。本当にありがとう」
そう言って、座りながらだけど、深く頭を下げた。
「やめろ。てめえらをぶちのめしてやろうと思ってたら既にボロボロでやる気が失せただけだ」
「で、でも……ここまで助けてくれたじゃないか。言っただろ?レナードがいなかったら死んでたって」
「……てめえらが口だけのザコじゃなかったからだ……それだけだ」
レナードは不満気にそう言う。
口だけのザコ。あのとき、別に口で何か言ったわけじゃないんだけどな。まあそんな言葉の揚げ足を取るような真似はしないけど。
「それよりてめえら、なんであんなことになってやがったんだ?あの階層にはてめえらがやられるような魔物はいねえだろ。《呪われた強欲》の奴らか?」
「《呪われた強欲》って……ああ、犯罪組織の……」
そういえばそんなのもいたなと思い出す。
王都にいたカツアゲと下着泥棒をしていた奴らだ。たしか、角の生えた髑髏の刺青がマークだった。
「ん?違うのか?」
「違うよ。魔物……だったと思う」
「思うってなんだよ。魔物なんか一目見たらわかるだろうが」
「いや、そうなんだけど……。妙に人間っぽかったというか……」
俺の魔力が見える体質を伏せている以上、説明のしようがない。
「ま、まあそいつに瞬殺されたってわけだよ。レナードもあれには気をつけたほうがいいぞ。なんかキラキラした人型の魔物。ろ戦ってもまず勝てないと思う」
「ああ?それはてめえが負けたからか?だからオイラが負けるってか?」
急にレナードの纏う雰囲気が変わった。
こいつの怒りスイッチは強さがどーのこーのって時に押されるのか。レナードについてまた一つ詳しくなりました。
「ち、違うって!そういうことを言ってるんじゃない!強さの次元が違うんだ。それこそ、あれに勝てる人間はいるのかってレベルで」
こんな状態で、しかも仮にも命の恩人と喧嘩なんて嫌すぎる。しかし、危険だからこそ俺はあの魔物の脅威をレナードに教えてやらないといけない。
「何されたのか全くわからなかったんだ。レナードには悪いけど、あれには誰も勝てないよ」
「……チッ。オイラなら負けねえよ」
不服そうにしながらも俺の気持ちは伝わったようだ。舌打ちされたけど。
「あー。それより、レナードって《呪われた強欲》に詳しいのか?」
伝えるべきことは伝えたし、話を変えよう。
もうあの魔物のことを思い出したくないっていうのもあるし、なによりわからない部分が多すぎるんだ。
《呪われた強欲》。
つい先日その存在を知って、またその名前が出てきた。
この機会に詳しく知っておくのもいいかもしれない。
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