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邪道転生〜思ってた転生と違うんですけど!〜  作者: 玉将
第二章 願いの塔 入門編
50/58

50:終幕

魔物が使ってる能力を魔法と表現するのは誤解を生みやすいので、説明があった話から『異能』と呼ぶように変更することにしました。




 塔(オラシオン)第十一階層、そこは視界一面に広がる砂漠だ。


 第十階層までが只人(プレーヌ)の国に隣接する大森林を模した領域だったように、第十一階層からは獣人(ブルート)の国に隣接する大峡谷を模した領域になっている。ちなみに第二十一階層からは耳長人(アルヴ)の国に隣接する魔物の領域を模したものになっている。


 つまり、第十階層までのレベルの魔物の繰り返しだ。わかりやすく言うと、この階層では『小鬼(ゴブリン)』級の魔物がまた出てくる。もちろん出てくる魔物は違うけどね。だからこの階層はとりあえず俺達の脅威になる魔物は出てきそうにない。

 さっさと階段を探しますかね。



 ーーーーーー



 パァンッ!


 乾いた音が砂漠に響く。


「ほんと、《階王(カイオウ)》の後にこのレベルの魔物が出てくると反応に困りますね……」

「まあそういう構造なんだから仕方ないよね。僕らもサクサク進めるしありがたいよ」


 出てくるザコ魔物を『不可視殴り(インビジブルブロー)』で一撃で沈め、魔石を魔法袋に入れる。それだけの流れ作業が続いていた。


 正直、めちゃくちゃ暇だ。


 今倒したのは『砂小鬼(サンドゴブリン)』。砂漠に住む『小鬼(ゴブリン)』だ。

 大森林にいる『小鬼(ゴブリン)』は正確にはその名前を『森小鬼(フォレストゴブリン)』という。木の棒をもっていたり素手だったり、もっともイメージしやすい感じのアレだ。だから俺は『小鬼(ゴブリン)』と呼んでいる。


 それに対して『砂小鬼(サンドゴブリン)』は何も持っていない。砂漠に住んでいるから掴めるものが少ないからだろう。奴等は強力な砂の異能を使ーーわない。使うはずがない。


 大峡谷の砂漠地帯は、大森林の草原地帯にあたる。そして『砂小鬼(サンドゴブリン)』は砂漠地帯に生息する。ここでもうその実力はお察しだ。まあ、なぜかまた全裸だけど。塔(オラシオン)に出てくる魔物は服を着ないのか。なまじ人型の魔物なだけにメアリーちゃんの目に毒になるから遭遇した瞬間スパッと倒している。


 その能力は砂を投げる。それだけだ。能力と呼んでいいのかすらわからないが、砂漠には掴むものが特にない。だから唯一の武器である砂で戦う。多少砂を投げるのが上手いザコだ。


 こんなのばかりが出てきて本当に退屈だ。危険な魔物に出くわしたいわけじゃない。けど、ここまで弱いと心が無になってくる。神様はあのドラゴン祭りを突破した人間になぜこんなぬるい試練を課すのだろうか……。


 ユリウスが寝てる間、夜は常に1人だ。だから暇には慣れている。そのときは魔力の訓練ができるんだけど、あれはある程度集中しないとできないからなあ。魔物を倒しながらだとちょっときつい。メアリーちゃんに任せっきりにするのも悪いし……。

 何かないか……あ。


 [なあユリウス、身体貸してくれない?]

 [え?どうかしたの?]

 [いや、さっきの角笛あるだろ?ちょっと退屈すぎるからあれの練習でもしようかと思って。もしかすると、吹くのが上手くなればなにかあるかもしれないし]

 [まだ諦めてなかったんだ……まあいいけど。できなくてもまたいじけたりしないでよ?]


 失礼な。俺がいついじけたっていうんだ。


 [大丈夫大丈夫。練習すればさすがに何かあるって]

 [はぁ、いじけても知らないからね……]


 次こそは成功してみせる。そうすればきっといつか何かが起こるはずだ。

 これでできなかったら次に来るとき『牛頭巨人(ミノタイタン)』をボコボコにして八つ当たりしよう。同じ個体なのかわからないけど、魔物って記憶とかあるのかな。


「チェンジ」


 わがままを聞いていただいてありがとうございます。俺の相棒はすこぶる優しいんだ。


「あれ?アキトくん?どうしたんですか?」

「暇つぶしがてらさっきの角笛の練習をね。あ、魔物は俺が相手するし大丈夫だよ」


 笛を吹きながらでもあのぐらいの魔物は魔腕(まわん)で相手できるからね。


「そ、そうですか……。がんばってください、あはは」


 むむ、どうやらメアリーちゃんにも期待されていないようだ。まあ今に見ててくれ。すぐに驚き成果をご覧に入れましょう。


 魔法袋から角笛を取り出し、息を吸い込む。

 勢いよく息を吹き込むと、ブモォ〜〜〜〜と間抜けな音が鳴り響いた。



 ーーーーーー



 何度も何度も吹き続けた。だが何の進歩もなかった。いや、変化はあったか……。


 [ねえ、なんだか寄ってくる魔物の数が増えてる気がするんだけど……]


 俺もそんな気がする。まあ笛を鳴らして歩き回ってるわけだし、魔物に気づかれて当然かもしれない。けど、もしかするとこの角笛には魔物を呼び寄せる効果があるのかもしれない。そのメリットが全く思いつかないことが問題だけど……。


「アキトくん、もう諦めてもいいんですよ?誰も笑いませんから……」

「うん、もうやめようかな。今から『牛頭巨人(ミノタイタン)』に会うのが楽しみだよ。ははは」

「め、目が笑ってないです……」


 あれだけ期待を裏切る凶悪な魔物は世界中探しても他にいないだろう。一刻も早く駆除しなきゃな。


 頭の中で未来の『牛頭巨人(ミノタイタン)』をぎったんぎったんにしながら、角笛を魔法袋になおした。これほど無念なことが他にあるだろうか。いや、ない。


 気を取り直して階段を探そう。

 そう思い、前を向いたときだった。


 目の前に人がいた。

 いや、人か……?違う。それはよく見ると人型の魔物だった。身体中から石ーーキラキラしている宝石のようなもの生やしていた。髪が長く、服のようなものを纏っていたから人間の女性かと思った。


 それより、目の前に現れるまで全く気づかなかった。はっきり言って、もう俺達はこの世界でも弱い存在じゃない。自分でも中の上くらいの実力はあると思っていた。それがなんでこの砂漠地帯に、ザコしか出ないはずの場所にこんなヤバい魔物がいて良いわけないだろ。


 悪寒が止まらない。けど、やるしかない。


「メアリーちゃん!逃げて!早く階段を見つけるんだ!!」

「で、でもっ!」

「いいから早く!!頼む!!」


 メアリーちゃんもこの魔物がヤバいってことには気づいているはずだ。……だから、逃げない。逃げてくれない。彼女はそういう子だ。10年前もそうだったように。


 [ユリウス、やろう]


 もちろんメアリーちゃんを囮にして逃げるなんて考えはない。そんなことをしてまで生きていたいと思わない。それはユリウスも同じだろう。


 [【神秘(レーテル)】火雷(ほのいかづち)の閃光]

「【神秘(レーテル)】風雷坊(ふうらいぼう)」

「【神秘(レーテル)】花炎風(かえんふう)」


 それに対する返事は魔法だった。その隙に俺達も自らの最強の魔法を発動する。


 そして魔物へと襲いかかる一条の光。炎と雷の複合魔法。ユリウスが持つ中で最強の威力を持った魔法だ。

 これを食らったらさすがに無事では済まないはずだ。だが……


 魔物はそれを難なく受け流し、かすり傷を負った様子もなかった。


 嘘だろ……。こんなのどうしろって言うんだ。序盤に出てきていいレベルの魔物じゃないだろ……!


 圧倒的な絶望感に襲われながらも俺が剣を抜こうしたそのとき、魔物が動き出した。


 魔物はユラリと拳を揺らす。だが、俺に見えたのはそれだけだった。


「かは……っ!!」


 気づけば、俺は攻撃を食らっていた。何をされたのか全く理解できなかった。そしてなにより……まずい……意識が朦朧とする……。


 守らなきゃ。みんなを、守らなきゃ……。

 だが、いくらそう思っても身体が言うことを聞いてくれることはなかった。


 その場に頽(くずお)れ、朦朧とする意識の中で俺が最後に見た光景は、魔(・)物(・)か(・)ら(・)漏(・)れ(・)出(・)る(・)魔(・)力(・)だ(・)っ(・)た(・)。


 そして、俺達の塔(オラシオン)への挑戦は突然、理解することも許されないまま幕を閉じたのだった。






アキトのユリウスとメアリーに対する口調に若干違いがあるのは、ユリウスはアキトにとって相棒兼守りたい人、メアリーは仲間兼守りたい人といった感じで守りたいの比重が大きいので、メアリーに対して口調が少し優しくなっています。女の子だからという理由だけで優しくしているわけでも、ユリウスを軽んじているわけでもありません。


50話目でここまでこれてよかったです。ありがとうございます。

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