47:階王
塔には10つの領域が存在する。第一階層から第十階層が大森林に似た空間であるように、10階層毎にその領域が変わる。
そして、その領域の最後の番人として待ち構えるボスーー通称、『階王』。
その名前からわかるように、その領域の中で最も強い。文字通り『王』というわけだ。
事前に仕入れた情報によると、第十階層の『階王』は1匹で待ち構えているタイプらしい。つまり、『階王』を倒すだけで第十階層は終わりだ。先程のドラゴン祭りを思い返せば、少しは戦いやすいんじゃないだろうか。逆に言えば1匹でも十分強力だってことだけど。
『階王』は一度倒されれば復活するまでに時間がかかる。第十階層に待ち受ける『階王』は復活までに丸二日を要する。運良く倒されたてホヤホヤで第十階層はスルー……なんて期待はしないほうがいいだろう。第九階層にウジャウジャいた『竜』を考えると、直前の二日に誰かがここを通ったとは考えにくい。
だから階段を登る前に戦闘準備を万全にしておく。今回も初めから俺が表に出て行く作戦だ。
「【神秘】風雷坊」
《比翼・黒式》もすでに手の中だ。いつ襲いかかられても大丈夫なように。転移した途端に攻撃されたらまずいもんな。
「【神秘】疾風の鎧」
メアリーちゃんも同様に魔法を唱える。彼女の複合魔法『花炎風』は切り札的な要素が強いから、ここぞという時のためにとっておきたい。
「よし。準備オッケーだ。いこう」
「だいぶ強力な魔物と聞いてますからね。怪我したらいつでも言ってください。すぐに治しますから」
[牽制は僕に任せてよ。アキト達には近づけさせないから」
頼りになる仲間と共に階段を登る。
さあ、どれほどの強さを持つのか。第十階層の『階王』ーー『牛頭巨人』は。
ーーーーーー
階段を登っていると視界が切り替わり、俺達は森林領域にいた。この感覚にももう慣れた。第十階層に転移したんだ。
俺達の目の前ーーというには遠すぎるだろうけど、それぐらい近くに感じるほどに巨大な魔物がいた。
牛の頭を持つ、全長30メルターの巨人『牛頭巨人』。額からは2本の長い角が伸び、右手にはその腰に届くほどに巨大な斧を持っていた。
「でっか……」[でっか……]
思わずユリウスとハモってしまった。
今まで見た魔物の中でダントツでかい。近づけば視界に入りきらないだろう。
「えーと、あれ、ほんとに斬れるんですかね?」
メアリーちゃんも同じ感想を抱いたんだろう、というか人間なら全員同じ感想を抱く。
「斬る!それしか道はない!」
絶対にやれると自分に言い聞かせる。魔法はイメージの力、こういうことも結構大事なんだ。
まあ、もしヤバくなったら転移魔法陣に逃げればいい。逃げることぐらいならできるはずだ。《紋様》より強いと仮定すると、苦戦することは間違いないからな。
俺達の驚きをよそに、遂に『牛頭巨人』は動いた。
「ブモオオオオオオオオオ!!!!!」
天に向かって鼓膜が破れそうになるほどに巨大な咆哮をあげた。俺達に気づいたようだ。
『牛頭巨人』はこちらを見下ろし、その斧をーー
「させるか!先手必勝!『紫電一閃』!」
「『槿花一刃』!」
[【神秘】焔々の業火球!]
振り上げる前に斬りかかった。俺は右足、メアリーちゃんは左足。ユリウスは顔面にズドンだ。
誰がわざわざそんなでかい斧の攻撃を待ってやるか!こちとら命がかかってますからね!
ただ、ここで想定外のことが一つ起きた。
「ブモオオオオオオオ!!!!」
牛頭をミディアムに焼かれた『牛頭巨人』は絶叫をあげた。
俺の《比翼・黒式》には『牛頭巨人』の血がべっとりとついていた。
「あ、あれ?思ったよりスパッと斬れたな……」
《紋様》はこんな楽に斬れなかった。一太刀に全力の力を込めて、それでやっと斬れたんだ。それなのにこいつは……
もしかするとーー『牛頭巨人』ってあんまり強くないのかもしれない。
ミノタイタンくんは初めはざっくり50mぐらいの大きさにするつもりだったんですけど、50mは巨人漫画のあの人と同じ大きさだと知って小さくしました。それに伴って前回までのドラゴン達も一回り小さくなりました。




