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邪道転生〜思ってた転生と違うんですけど!〜  作者: 玉将
第二章 願いの塔 入門編
46/58

46:束の間の休息



 《紋様(スティグム)》が音を立てて煙となる。そして、その場には通常種より一際大きな、拳大の魔石が残った。


「お、終わった……」


 ようやく倒せた……。時間にすれば10分も戦っていないのかもしれない。けど、体感時間的には1時間以上戦い続けたような疲労感に襲われていた。最後は何度剣を叩きつけたかわからない。


 [おつかれさま!かなり手強かったね。まさか複合魔法でも倒せないと思わなかったよ]

 [ユリウスもな。ほんと、最上階にはどんなヤバいやつがいるのか。考えたくもないな]


 塔(オラシオン)を制覇する者はそう多くない。それはひとえに試練が難関だからだ。最後に制覇されたのは100年以上前だという。


 [それにしても、かなり疲れたよ。一旦どこかで休もう。さすがに数が多過ぎた]

 [僕も最後の一撃で魔力がすっからかんだよ]


 ユリウスの身体の中にいるときに痛覚はない。肉体的な疲労感からも解放される。しかし、精神的な疲労は残るし、失われた魔力はすぐに元に戻ったりしない。時間が経てば回復するだけありがたいけどね。とりあえず俺達全員が次の階層に備えて休憩が必要だろう。


「おふたりともー!大丈夫ですかー!」


 そこで、メアリーちゃんがこちらにやってきた。


「大丈夫。一撃食らっちゃったけど、たいしたことないさ」

「いやいや!血が出てるじゃないですか!少しじっとしててくださいね。【神秘(レーテル)】癒しの聖杯」


 全身が淡く光り輝き、擦り傷から全て治癒されていく。

 こまめに怪我を治してくれるのはほんとうに助かる。《回復系(レメディ)》様々だ、と言いたいところだけど、回復魔法は複合魔法ほどではないにせよ魔力を多く使う。今のメアリーちゃんにはきついはずだ。


「ごめん、ありがとう。ユリウスとも話したんだけど、階段を見つけたら少し休憩しよう」

「助かります。正直私も結構ギリギリで……」

「大丈夫大丈夫。俺達2人も限界だから。3人じゃなかったらこの階層は乗り越えられなかったよ。おつかれさま」

「えへへ、ありがとうございます」


 俺がそう言うと、メアリーちゃんはにっこりと笑った。さっきまで鬼神の如く『竜(ドラゴン)』を屠っていたとはとても思えない、可愛らしい少女の笑顔だった。



 ーーーーーー



 地上に降りて階段を探す。ひとまず大量に購入した《魔力回復薬(ポーション)》を数本飲んで魔力自体はある程度回復した。しかし、それと心身を休めるのは別腹だ。常に張り詰めた空気でいるのはきつい。

 ちなみに俺とユリウスが《魔力回復薬(ポーション)》を使用するためには、各々が口をつけて飲まなければ効果がない。効果を共有できないってことだ。


 この階層の魔物ーー『竜(ドラゴン)』はほぼほぼ討伐したと思うからその辺で休憩しても大丈夫かもしれないけど、どうせならゆっくり過ごしたい。


 階段の周囲には魔物が現れない。塔(オラシオン)内では1つの例外を除けば唯一の休憩場所になっている。先に進むことを決めた者だけに与えられる特権なのだ。


 というわけで、結局やることはいつもと同じ階段探しだ。


 それにしても魔物が全然いない。もしかすると本当に狩り尽くしてしまったのかもしれない。俺達の後から来た人はラッキーだな、こんな魔物の少ないスカスカの階層一瞬でクリアできるよ。


 なんてことを考えながら歩く。歩く。時おり俺達が倒した『竜(ドラゴン)』の魔石が落ちているので拾っておく。金目の物はしっかりと拾います。《紋様(スティグム)》の魔石はいち早く拾いました。あれは大きかったんですもの。見逃せませんわ。


 それにしても、ドロップアイテムほしかったなあ……。滅多にドロップアイテムが出ることはないとはいえ、《紋様(スティグム)》から出たものならさぞかし強力なアイテムだっただろう。

 まだ塔(オラシオン)に来てから俺とユリウスはドロップアイテムに恵まれていない。もしかして俺達運が悪いのかな……。無差別に倒しまくった『竜(ドラゴン)』からドロップしてるかもしれないけど、言い出したらキリがない。


「はぁ……」

「どうしたんですか?ため息なんてついて」

「いやあ、俺もドロップアイテムほしいなあって。これだけ魔物倒したのに1つもないって、運が悪いのかな」

「私も『激痛丸』しかありませんけどね。きっといつか出てきますよ」


 なんならここまで貯めた運を次のボス戦で発揮してもらっても全然構わない。それなら今までの帳尻も合うってもんだ。


「そうだな。気ままに待つとするか……あ!」

「階段です!やったー!」

 [ご飯食べよう!ご飯!]


 ようやく見つけた。これでやっと一休みできる。拾い損ねた残りの魔石は諦めることになるけど、正直何匹倒したかわからないのに全部集めるのは不可能だ。


「食材はたくさんありますからね!今回はお鍋にします!」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」


 メアリーちゃんは強いだけじゃなく料理もできてしまう女の子なのだ。ありがたや……。

 俺もできる限り調理を手伝った。魔導具のおかげで森の中でも普通に料理ができるから、俺でも少しは役に立つことができる。ぼーっと待つだけなのはさすがに申し訳ないからな。


 出来上がった鍋は3人で、俺とユリウスは代わる代わる食べた。お腹は共有されてるからね。


 満腹になり、心身共に完全回復すればやることは一つ。

 今日の最終目標である第十階層のボスーー『階王(カイオウ) 』に挑むときが来たようだ。



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