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邪道転生〜思ってた転生と違うんですけど!〜  作者: 玉将
第二章 願いの塔 入門編
44/58

44:必殺祭り

 



「『紫電一閃』!」


『竜(ドラゴン)』が迫り来る前にこちらから斬りつける。一撃で首を落としきり、すぐに次の標的の元へ。


 この技は威力が増して、『竜(ドラゴン)』の硬い首も一撃で落とすことができる。魔力消費が大きいのが難点だけど、『竜(ドラゴン)』の大群を相手にしながら一匹ずつ弱点を把握していたんじゃキリがない。


 ユリウスが俺とメアリーちゃんに近づく『竜(ドラゴン)』を牽制しつつ、俺達が一撃で仕留める。この戦法ですでに合計30匹ほど倒していた。


「『槿花一刃(きんかいちじん)』!」


 紅い大剣が『竜(ドラゴン)』を魔石に変える。


「アキトくん!ちょっとキリがないので!アレを使いますね!」


 彼女は『竜(ドラゴン)』を蹴散らしながら、俺へと呼びかけてきた。

 アレ、とはアレのことだろう。必殺のアレだ。


「おう!討ち漏らしは任せて!」

「途中で魔力が切れたらフォローお願いします!」


 そう言って、彼女は一度剣を止めた。

 そしてーー


「【神秘(レーテル)】花炎風(かえんふう)!」


 ゴウッ!と炎と風の魔力が彼女を包む。

 炎と風の複合魔法だ。攻撃力と速度が爆発的に上昇する。それを示すかのように、魔法効果を増幅する大剣ーー《『紅花(くれない)》は先ほどまでとは比べものにならないほどの輝きを放っていた。


「『百花繚乱』!」


 縦横無尽に空を飛び回りながら炎を吹き上げる彼女は、天に咲き乱れる花のようだった。


 彼女が移動する度に『竜(ドラゴン)』は魔石に変わっていった。控えめに言って超強い。


 [僕も負けてられないね!【神秘(レーテル)】万雷(ばんらい)の大竜巻!]


 続いてユリウスも『竜(ドラゴン)』の群れに向かって複合魔法を放った。

 巨大な竜巻、その内側は止むことのない稲妻が迸っている。いくら魔法に超耐性を持つ『竜(ドラゴン)』でも、高威力の複合魔法の直撃を受ければタダでは済むまい。


「ギュアアアアアアアア!!!!!」


 その答えを指し示すかのように、『竜(ドラゴン)』達の断末魔の叫びが聞こえてきた。

 今ので何十匹かが死んだだろう。


 自慢じゃないが、俺はユリウスやメアリーちゃんよりも魔力総量が多い。俺より後に複合魔法を発動したメアリーちゃんのほうが先に魔力が尽きるほどに。複合魔法はそのぐらい魔力消費が激しいーー精神力を使うんだ。

 2人のために、俺は魔力を温存しておかなければならない。

 まだあ(・)い(・)つ(・)が出てきてないから。



 ーーーーーー



「ーーッ!」


『紫電一閃』で『竜(ドラゴン)』を斬り続け、メアリーちゃんに至っては1人で80匹を魔石に変えたとき、ついに彼女に限界が訪れた。


 複合魔法『花炎風(かえんふう)』が維持できず、なんとか宙に浮いているのがやっとの様子だった。魔力切れだ。


「はぁ、はぁ……。すみません、ちょっと《魔力回復薬(ポーション)》を飲む時間をください。すぐに戻りますから」


 息も絶え絶えにそう言う彼女を見て、素直に「はい」と言える俺ではなかった。


「大丈夫!残りは俺が片付けるから!そこから動かないで!」


 ほんとは地上でゆっくり休んでほしいんだけど、『深緑竜(グリーンドラゴン)』は地中から樹を操ってくる。地上より空中のほうが守りながら戦いやすいんだ。


 《比翼・黒式》を握り直し、残り少なくなってきた『竜(ドラゴン)』達を見渡す。まだ10匹以上いるが、ここまで減ったのも2人のおかげだ。


 よし。もう一息だ、と俺が突撃しようとしたそのときーー


「グルアアアアアアアア!!!!!」


 物凄い速度でこちらに突撃してくる1匹の『竜(ドラゴン)』。ただし、その速度は他の『竜(ドラゴン)』の比ではなく、大きさも桁違いだ。通常種の2倍の体躯と、全身に波打つ紋様ーー《紋様(スティグム)》だ。


「クッ……!」


 二本の剣を交差させ、その突撃を受け止めた。ビリビリと腕が痺れる。攻撃の重さが段違いだ。これが変異種か……!

 何度も受けるとヤバそうだが、後ろにはメアリーちゃんがいる。避けることはできなかった。


 [ーーッ!出たね!]

 [ユリウス!援護頼む!他の『竜(ドラゴン)』を近寄らせないでくれ!]

 [わかった!]


 なかなか難しい注文だと思うけど、ユリウスならなんとかしてくれるはずだ。俺はこいつに集中する!


「いくぞ!『紫電一閃』!」


 二本の剣を揃えて《紋様(スティグム)》の首に打ちつける。一本でも通常種の首なら一撃で終わらせることができるんだ。二本ならーー


「う、嘘だろっ?!」


 剣は鱗を引き裂いたものの、それが精一杯だった。致命傷とは程遠い、かろうじて肉に到達したぐらいだ。まさか、ここまで硬いとは……。


「グルアア!」


 それでも、《紋様(スティグム)》は鱗を斬り裂かれたことにご立腹のようで、鋭い爪を振りかざしてきた。


「とりあえず離脱!」


 一旦、《紋様(スティグム)》から距離を取る。状況を整理しよう。


 メアリーちゃんはしばらく動けない。動けるだろうけど、《紋様(スティグム)》相手に今の状態では心許ない。

 ユリウスは周りの『竜(ドラゴン)』を一手に引き受けてくれている。今も魔法をぶっ放し続けてる。

 《紋様(スティグム)》はとにかく硬い。そして攻撃も強い。

 俺。メアリーちゃんを守りながら、とにかく脆い鱗を探しながら斬り続けるしかない。

 以上。やることはシンプルだ。


 幸い、ここは空中だ。『深緑竜(グリーンドラゴン)』の変異種である《紋様(スティグム)》にとっては不利な戦場と言えるだろう。奴等の十八番と呼べる樹木操作ができないんだから。


 こっちは《紋様(スティグム)》の物理攻撃だけを避ければいい。なんとかなるはずだ。


 と、そのとき《紋様(スティグム)》が動いた。

 両前足を掬(すく)い上げるようにしてこちらに振り上げる。

 ……なんだ?


 俺が《紋様(スティグム)》の行動に疑問を持っていると、奴の左右の空間からズズズズッと何かが現れるような音が響き、次の瞬間には何もない空間から生えた樹が津波のような勢いでこちらに襲いかかってきた。


 おいいいいいいいいい!地上でしか樹木操作を使えないって制限はどこいったんだよ!どこまでクソチートなんだこいつ!!


 攻撃を諦め、とりあえず俺はメアリーちゃんを抱えて逃げ回ることにした。




スティグムは漁夫の利を得ようとして遅れてやってきました。そこそこ知能もあります。

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