40:最強の魔法(使い手次第)
「ハーハハハ!おいおい!さっきまでの威勢はどうしたぁ!オイラに恐れをなして逃げたかぁ?!ハーハハハ!!」
大きな笑い声が森に響き渡る。
俺達は一先ず森に姿を隠していた。
《特異系魔術師》という、今まで出会ったことのない存在に攻めあぐねていた。
父さんも師匠も《特異系魔法》は発現していなかった。俺からすると、この世界ではドラゴンよりもおとぎ話の存在だった。
「どうしようか。相手の手札がわからない以上、迂闊な真似はできないな」
「さっきみたいにユリウスくんの魔法で狙うのはどうですか?もう一度不意打ちが効くかはわかりませんが……」
[たぶんダメだろうね。あれほどの使い手が二度も同じ失敗をするとは思えないよ]
激しく同意だ。
ゴーレムだけでも結構強かったのに、さらに重力魔法ときたらもう無敵じゃないか。
重力魔法と言えば強キャラの代名詞。下手な真似をしてそのカウンターを食らえばタダじゃ済まない。
と、俺達が作戦会議をしていると……
「ハーハハハ!逃げてもいいんだぜ?ま、ここら一帯にオイラのゴーレムを飛ばしておいたからよ!逃げ切れたらいいなぁ!」
う、うぜえ……。
俺達が受け身になるやいなや、超強気だ。重力魔法を持つ故の絶対の自信からくるものかもしれない。
「それと、さっきオイラに魔法ぶちかましたやつはどこのどいつだ!そいつを出せばてめえらは半殺しで済ませてやる!」
そんなやつはいません。その場合僕らは皆殺しですかね?
「どうしよう。あいつめっちゃ勘違いしてるよ……。もう1人いると思ってる」
「まあ、普通は1人の人間が《強化系》と《放出系》を扱うなんて予想できませんよ。こればっかりはあの人を怒ることはできません」
昔は俺とユリウスが《特異系》に目覚めて1人で4系統!なんて妄想してたもんだが、そんな夢は儚く散ってしまった。
俺も十分卑怯な存在の気もするけど、純粋に1人で2系統使える《特異系魔術師》は天然物のチートだと思う。
「よーし!じゃあこれからお前らが逃げたほうに向けて槍を飛ばしていくとしよう!早く放出系野郎を出したほうがいいぞー!」
あいつの何がタチが悪いって、俺達を探そうと思えばいくらでもゴーレムを使って探せるのにそれをしないことだ。
おそらくいたぶるのが目的だろう。良い趣味してやがる。
「いくぞー!当たったらすまんなー!『超重戯牙』!」
ドゴォン!と地面が割れる音が鳴り響く。どうやら、俺達とはだいぶ離れたところに落ちたようだ。
「槍はまだまだあるからなー!そらそら!」
レナードは本当に適当に槍を投げているだけだった。
過去にこれほど舐められたことはない。強者の余裕ってやつか。どうにか奴に、最強クラスの魔法に太刀打ちする術はないのか……!
[やっぱり僕がやるしかないよ!【神秘】焔々の業火球!]
「あっ!待って!」
俺が止めるよりも早く、魔法は発動した。
くそっ、こうなったら祈るしかない!当たれ!
レナードの頭上に巨大な火の玉が浮かび上がる。
だがーーー
「ハーハハハ!ようやく出てきたか放出系野郎め!」
やっぱり気づかれたか……!
「同じ魔法とは舐めた真似してくれるじゃねえか!【神秘】反天!『威咬禁重』」
レナードが魔法を唱えると、炎は落下することなくフワフワと浮かんで消えていった。
「ハーハハハ!もうオイラに放出系は効かねえぜ?!この魔法を使うオイラは無敵だ!」
くそっ、チート野郎め!
カウンターが来なかったのが救いだが、やはり魔法は簡単に防がれてしまった。攻撃が通るビジョンが全く思い浮かばない。
「ハーハハハ!もう終わりかぁ?!槍はまだまだあるぞ!そらそらそらぁ!」
レナードが槍を投げるたびに地面に大穴があく。
そして、ついに俺達の元へ槍が落ちてきた。
「うおおっ!」
「きゃあ!」
かろうじて避けたものの、余波に巻き込まれ吹き飛ばされる。まずい……!
「ハーハハハ!そこにいたかぁ!オイラを舐めたこと、後悔しながら死ね!」
俺達は逃げた。ただ逃げた。
襲いかかる槍を避け、どうにか対策を考えるも、重力魔法レベルの魔法を相手にできる上手い手段が思いつかない。
「ハーハハハ!てめえの逃げる様はゴブリンみてえだな!傑作だ!ハーハハハ!ハーハハハ!」
逃げる。ただ逃げる。
くそっ!どうすればーーー
「ハーハハハ!土下座すれば許してやるかもしれんぞ!ハーハハハ!ハーハハハ!」
逃げる。ただ逃げる。
「ハーハハハ!ハーハハハ!ハーハハハ!」
「【神秘】風雷坊」
逃げる。ただ逃げーー
「ハーハハハ!ハーハハ……は?」
既に俺はレナードの目と鼻の先にいた。
そして、思い切り足を振りかぶりーー
「ハーハハーハうるせええええええ!!!!」
「くぺぇっっ!!」
怒りのままに地面に向けて蹴りつけた。
バコォン!と、物凄い勢いでレナードが地面にめり込んだ。
「……あれ?重力結界は?ブラックホールとかは……ないの?」
下を見ると、レナードは大の字で地面と一つになっていた。
バカ笑いしてるあいつに苛立ちを抑えきれずについつい対応策もないまま蹴り飛ばしてしまった。けど……まさかあれで終わり?
「アキトくーん!この人気絶してます!」
「う、嘘でしょ……」
地上ではメアリーちゃんがレナードの様子を見ていた。
どうやら、本当にあれで終わりらしい。
重力魔法の使い手の最後の言葉が『くぺぇっっ!!』で良いものなのか……。
[ちょ、ちょっと警戒しすぎてたみたいだな。レナードが重力魔法の恐ろしさを出しきる前でよかったよ]
[アキト……]
身体の中から呆れたような声が聞こえてきたが、ようやくレナードとの戦いが終わったのだった。
苦戦した原因:重力魔法の過大評価




