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邪道転生〜思ってた転生と違うんですけど!〜  作者: 玉将
第二章 願いの塔 入門編
39/58

39:最強(仮)の魔法

 




「ふぅ」


 一息ついて、剣を収める。


 [やっぱりアキトはすごいや。アキトに代わったらすぐ終わっちゃったよ!]

 [いやいや、あれはユリウスの魔法があってこそだからな。俺だけじゃ無理だったよ]


 実際、俺だけじゃ距離を詰められなくてジリ貧だった。それこそレナードの魔力が尽きるまでゴーレムを斬り続けなければならなかっただろう。


「お疲れ様です!2人ともかっこよかったです!」


 メアリーちゃんの元へいくと、彼女はそう言って労ってくれた。擦り傷なども回復魔法で治してもらった。


「それにしてもあの人、生きてるんですか?」

「たぶん大丈夫だよ。かなり強かったし、あれくらいじゃ死なないと思う」


 俺はそう言って『焔々の業火球《えんえんのごうかきゅう》』が落ちた場所を見る。

 辺りは黒焦げになり、森に生えていた木もなぎ倒されていた。

 ……これ、生きてるかな。


「ま、まあ先に仕掛けてきたのは向こうなんだ。もしものことがあってもそれは言いっこなしだ」


 これは冗談ではなく、狩人(ハンター)の心構えとしての話だ。

『命を奪うなら、いつでも奪われる覚悟もしていなければならない』とは父さんの言だ。

 だからこそ、父さん達は狩人(ハンター)という仕事に誇りを持っている。


 地球で生まれた俺だが、その考えは今の俺にも十分納得できるものだった。

 前世の病気とか理不尽すぎてめっちゃ腹立ったからね。俺が何したって言うんだよ。ちなみにまだ人を殺(あや)めたことはない。そんな悪人に出会ったこともなかったしな。


「まあ、そうですよね。全部あの人の自業自得ですよ。すごい言いがかりでしたし」


 プリプリと頬を膨らませて怒る彼女も、殺す覚悟、そして殺される覚悟を持ってここにきている。俺のために命を賭けてくれている。だからこそ俺も彼女達に感謝が尽きないんだ。


「とりあえずレナードの様子を見に言ってから第六階層を目指そうか。そのままじゃ可哀想だし」


 もし死んでいたら、この場で放置っていうのはさすがにやるせない。あんなやつだったけど、弔いぐらいはしてやりたい。それが責任ってやつだ。


 メアリーちゃんも頷き、レナードがいたであろう方角に目を向けると、人が立っていた。


 全身の服はボロボロになり、主張の激しかった耳も尻尾も煤まみれになっていた。間違えるわけもない、レナードだ。


「う、嘘だろ……!あれを食らってもう立てるのかよ……」

「しぶとすぎます!」


 《生成系(ジェネレイト)》なのに、《強化系(レインフォース)》でもないのに頑丈すぎるだろ。


 [よかった。生きてて……]


 ユリウスはレナードの生存にホッとしたようだ。

 まあ、気持ちはわかる。殺す覚悟があるのと殺したいっていうのは全く別の話だ。ユリウスは優しいからな。


 そして、立っているのもやっとといった 体(てい)だったが、レナードは口を開いた。


「ハ、ハハ……。まさか、ま(・)た(・)この感覚を味わうとはな……。とことん癇に障る野郎だぜ。直前でゴーレムで防いでなかったら死んでたかもしれねえ」

「おい、もう俺達の勝ちでいいだろ。そもそも戦う理由もなかったようなもんだし、ここらへんで引いてくれよ」


 正直言うと、もうめんどくさい。理由なき戦いに幸せは訪れないのだ。


「うるせえ!ここまでやられてやめられるわけねえだろうが!こうなったらオイラの本気を見せてやる!」

「は?いや、もうさっきゴーレムいっぱい出して戦ってたじゃん。十分本気だったろ」

「ナメてんじゃねえよ!オイラの本気があんなもんなわけねえだろ!【神秘(レーテル)】地鳥(チドリ)!」


 そう言って、レナードは鳥のゴーレムに乗って空高く飛んで行った。

 今更何かできるわけもないだろうに。俺達がどれだけ努力してここにいると思ってるんだ。はっきり言って、何度戦っても負ける気がしない。こっちは回復魔法で全快、レナードはボロボロの現状では尚更だ。


「ハーハハハ!光栄に思え!この技を人間に使うのはてめえらが二度目だ!」

「いや、今更飛ぶだけ?」

「……とことんナメた野郎だ。だが、その減らず口もそれで最後だ!」


 まあ、戦闘に入るようだし『雷光』は発動しておこう。といっても、あんなボロボロの状態で何かできるとは思えないけど。


 すると、空にいるレナードは腰につけた魔法袋から一本の槍を抜き出した。

 なんだ?魔力を帯びてないただの槍にしか見えないけど……。


「ハーハハハ!ほんじゃ、いくぜえ?【神秘(レーテル)】順天(じゅんてん)」


 そう言うと、槍が黒い魔力を帯びていく。

 まてまてまてまてまてまて。さっきまでと魔力の質が違うぞ。これってもしかして……!


 レナードは槍を振りかぶり地面に向けて思い切りーー


「『超重戯牙(ちょうじゅうぎが)』!!」

「メアリーちゃんっっ!!!!」


 投げた。それだけだ。

 だが、ドゴォン!とただの槍が落ちたとは思えない音が鳴り響いた。地面が揺れる。ボロボロの身体で、なんの変哲も無い槍でこれだ。イかれてるだろ!


 俺はメアリーちゃんを抱えて森の中に飛び込んだ。


「はぁっはぁっ……」


 あれは……間違いない。

 《回復系(レメディ)》と同じように、一部の人間に現れるもう一つ系統、《特異系(ユニーク)》だ。

 四年間の修行で俺もユリウスも、ついに発現することのなかったものだ。

 その能力は発現者によって異なるが、共通する点は、どれもぶっ壊れ能力だということ。

 なるほど、今まで本気じゃなかったというのも嘘じゃなかったようだ……。


「あ、アキトくん!なんですかあれは!さっきまでと全然違います!」

「《特異系魔法(ユニークマジック)》だ。何の能力かはよくわからないけど」

「あれが……。初めて見ました」

「発現方法が特殊すぎるからね。滅多にお目にかかれない魔法なのに、まさかあいつが……」


 と、そこで空からレナードの笑い声が聞こえてきた。


「ハーハハハ!どうだ!これがオイラの重力魔法だ!世界に二つと無い代物だぜえ!」


「じゅ、重力魔法……!」


 ファンタジー作品において強キャラのみに許される能力の一つ、重力魔法の使い手との戦いが今、幕を開けようとしていたのだった。





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