39:最強(仮)の魔法
「ふぅ」
一息ついて、剣を収める。
[やっぱりアキトはすごいや。アキトに代わったらすぐ終わっちゃったよ!]
[いやいや、あれはユリウスの魔法があってこそだからな。俺だけじゃ無理だったよ]
実際、俺だけじゃ距離を詰められなくてジリ貧だった。それこそレナードの魔力が尽きるまでゴーレムを斬り続けなければならなかっただろう。
「お疲れ様です!2人ともかっこよかったです!」
メアリーちゃんの元へいくと、彼女はそう言って労ってくれた。擦り傷なども回復魔法で治してもらった。
「それにしてもあの人、生きてるんですか?」
「たぶん大丈夫だよ。かなり強かったし、あれくらいじゃ死なないと思う」
俺はそう言って『焔々の業火球』が落ちた場所を見る。
辺りは黒焦げになり、森に生えていた木もなぎ倒されていた。
……これ、生きてるかな。
「ま、まあ先に仕掛けてきたのは向こうなんだ。もしものことがあってもそれは言いっこなしだ」
これは冗談ではなく、狩人の心構えとしての話だ。
『命を奪うなら、いつでも奪われる覚悟もしていなければならない』とは父さんの言だ。
だからこそ、父さん達は狩人という仕事に誇りを持っている。
地球で生まれた俺だが、その考えは今の俺にも十分納得できるものだった。
前世の病気とか理不尽すぎてめっちゃ腹立ったからね。俺が何したって言うんだよ。ちなみにまだ人を殺めたことはない。そんな悪人に出会ったこともなかったしな。
「まあ、そうですよね。全部あの人の自業自得ですよ。すごい言いがかりでしたし」
プリプリと頬を膨らませて怒る彼女も、殺す覚悟、そして殺される覚悟を持ってここにきている。俺のために命を賭けてくれている。だからこそ俺も彼女達に感謝が尽きないんだ。
「とりあえずレナードの様子を見に言ってから第六階層を目指そうか。そのままじゃ可哀想だし」
もし死んでいたら、この場で放置っていうのはさすがにやるせない。あんなやつだったけど、弔いぐらいはしてやりたい。それが責任ってやつだ。
メアリーちゃんも頷き、レナードがいたであろう方角に目を向けると、人が立っていた。
全身の服はボロボロになり、主張の激しかった耳も尻尾も煤まみれになっていた。間違えるわけもない、レナードだ。
「う、嘘だろ……!あれを食らってもう立てるのかよ……」
「しぶとすぎます!」
《生成系》なのに、《強化系》でもないのに頑丈すぎるだろ。
[よかった。生きてて……]
ユリウスはレナードの生存にホッとしたようだ。
まあ、気持ちはわかる。殺す覚悟があるのと殺したいっていうのは全く別の話だ。ユリウスは優しいからな。
そして、立っているのもやっとといった 体だったが、レナードは口を開いた。
「ハ、ハハ……。まさか、またこの感覚を味わうとはな……。とことん癇に障る野郎だぜ。直前でゴーレムで防いでなかったら死んでたかもしれねえ」
「おい、もう俺達の勝ちでいいだろ。そもそも戦う理由もなかったようなもんだし、ここらへんで引いてくれよ」
正直言うと、もうめんどくさい。理由なき戦いに幸せは訪れないのだ。
「うるせえ!ここまでやられてやめられるわけねえだろうが!こうなったらオイラの本気を見せてやる!」
「は?いや、もうさっきゴーレムいっぱい出して戦ってたじゃん。十分本気だったろ」
「ナメてんじゃねえよ!オイラの本気があんなもんなわけねえだろ!【神秘】地鳥!」
そう言って、レナードは鳥のゴーレムに乗って空高く飛んで行った。
今更何かできるわけもないだろうに。俺達がどれだけ努力してここにいると思ってるんだ。はっきり言って、何度戦っても負ける気がしない。こっちは回復魔法で全快、レナードはボロボロの現状では尚更だ。
「ハーハハハ!光栄に思え!この技を人間に使うのはてめえらが二度目だ!」
「いや、今更飛ぶだけ?」
「……とことんナメた野郎だ。だが、その減らず口もそれで最後だ!」
まあ、戦闘に入るようだし『雷光』は発動しておこう。といっても、あんなボロボロの状態で何かできるとは思えないけど。
すると、空にいるレナードは腰につけた魔法袋から一本の槍を抜き出した。
なんだ?魔力を帯びてないただの槍にしか見えないけど……。
「ハーハハハ!ほんじゃ、いくぜえ?【神秘】順天」
そう言うと、槍が黒い魔力を帯びていく。
まてまてまてまてまてまて。さっきまでと魔力の質が違うぞ。これってもしかして……!
レナードは槍を振りかぶり地面に向けて思い切りーー
「『超重戯牙』!!」
「メアリーちゃんっっ!!!!」
投げた。それだけだ。
だが、ドゴォン!とただの槍が落ちたとは思えない音が鳴り響いた。地面が揺れる。ボロボロの身体で、なんの変哲も無い槍でこれだ。イかれてるだろ!
俺はメアリーちゃんを抱えて森の中に飛び込んだ。
「はぁっはぁっ……」
あれは……間違いない。
《回復系》と同じように、一部の人間に現れるもう一つ系統、《特異系》だ。
四年間の修行で俺もユリウスも、ついに発現することのなかったものだ。
その能力は発現者によって異なるが、共通する点は、どれもぶっ壊れ能力だということ。
なるほど、今まで本気じゃなかったというのも嘘じゃなかったようだ……。
「あ、アキトくん!なんですかあれは!さっきまでと全然違います!」
「《特異系魔法》だ。何の能力かはよくわからないけど」
「あれが……。初めて見ました」
「発現方法が特殊すぎるからね。滅多にお目にかかれない魔法なのに、まさかあいつが……」
と、そこで空からレナードの笑い声が聞こえてきた。
「ハーハハハ!どうだ!これがオイラの重力魔法だ!世界に二つと無い代物だぜえ!」
「じゅ、重力魔法……!」
ファンタジー作品において強キャラのみに許される能力の一つ、重力魔法の使い手との戦いが今、幕を開けようとしていたのだった。




