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邪道転生〜思ってた転生と違うんですけど!〜  作者: 玉将
第一章 異世界交流編
28/58

28:ハッピーライフハッピーホーム

 




「ど、どうも。初めまして?アキトっていいます」


 恋人の両親に初めて挨拶するときの緊張ってこんな感じなのかな。なんて益体もないことを考えながら、ひとまずユージーンさん達に挨拶した。


「たしかに……。一瞬で雰囲気が変わったな……」

「ええ、これを見せられたら信じるしかないわね……」

「あはは……さすがご両親ですね、すぐにわかるなんて」

「当たり前だろう。何年ユリウスの親をやっていると思っているんだ」

「それもそうですね」


 き、気まずい……。

 もとよりこんな予定がなかったんだ。そんなにコミュ力の高くない俺にこの状況は難易度が高すぎるって。


「それで、アキトくん。単刀直入に聞くが、君は一体何者なんだ?そもそも、どういった存在だ?悪いがこんな話は聞いたことがなくてね」

「え、えーっと……」


 どうしよう。俺も自分が何なのかよくわかってない。どこまで話したものか……。

 そもそもユリウスくんにだって俺が異世界の人間だということはまだ伝えていないんだ。このカオスな状況を更にぐちゃぐちゃにしても良いものか。

 ……いや、毒を食らわば皿までだ。全部話そう。ユリウスくんの両親なんだ。真摯にぶつかるべきだろう。


「えっと、とても信じられない話かもしれないんですけど、構いませんか?」

「ああ、構わない。よろしく頼む」


 一呼吸して、俺は頭で整理しながらこれまでの経緯を話し始めた。


 ーー元はこの世界とは違うせかいで暮らしていたこと。

 ーー病気で死んで、気がついたらこの状態だったこと。

 ーーとりあえず魔力制御の訓練ばかりしていたこと。

 ーーユリウスくんを守ると決めたこと。

 ーー今この状況に俺も困惑していること。

 ーーそして、ユリウスくんの負担にはなりたくないこと。


 たどたどしくも思い浮かんだ出来事を全てを話し、ユージーンさん達の方を見ると、彼らは眉間を抑えながら嗚咽を洩らしていた。


「ちょ?!なんで泣いてるんですか?!」

「いや、すまん。君の両親の気持ちを考えるとつい……」

「ユリウスのことをずっと守ってくれてたのね。ありがとう、アキトくん」


 いや、ユリウスくんを守ったのは元を正せば俺が原因なところが大きいんですが……。この状況ではとても言い出せそうにはないけど。


「アキトくん、いや、アキト。君の面倒は俺達がみよう。まあ、ユリウスと一緒に面倒をみることになるわけだが……。君の本当の両親には失礼かもしれないが、今後、俺達のことは親だと思ってくれ」

「え?」


 ユージーンさんは優しい眼差しで俺を見つめながらそう言った。しかし、俺は素直にその言葉を受け取ることができなかった。


 どうして。どうして俺を気味悪がらないんだ。こんな変なやつ他にいないのに。わからないことだらけで、俺が口からでまかせを喋っただけかもしれないのに。そしてなにより、最愛の息子に寄生するような存在の俺なのに……。


「こんな、こんな得体の知れない存在の俺を……?」

「得体は知れているだろう。君はアキトなんだろう?」

「……ユリウスくんに危害をくわえるかもしれませんよ?」

「狩人(ハンター)を舐めてもらっては困る。そのぐらい、目を見ればわかる。まあ、身体はユリウスと同じだがね」


 そう言われて、涙が零れ落ちた。

 この世界で初めて、大人に自分の存在を肯定された。


 ユリウスくんやメアリーちゃんはまだ子供だ。そこらへんの分別がついていない頃から俺のことを知ってしまったから、半ば洗脳のような形で認められてしまったんだと思っていた。

 ずっと自分はこの世界の異物だと思っていた。居場所なんてないと思っていた。

 でも、初めてちゃんと、この世界の人に認められた気がした。

 俺はずっと、拒絶されるのが怖かったんだ。


「ふっ…うっ…ありがとう……ございます……」


 涙でユージーンさん達の顔がよく見えない。拭いても拭いても零れ落ちてくる。こんなに泣いたのはいつぶりだろう。


 −……アキト、よかったね−


 ありがとう、ユリウスくん。君はこうなることがわかってたのかな。どんどん大きく、すごい男になっていくんだね。君は俺のことをすごいって言ってくれるけど、比べ物にならないぐらい君のほうがずっとすごいよ。


「もうっ!こんな話なら塔を目指すのを反対なんてできないじゃない!さっきまでの自分をギガントゴーレムで殴り飛ばしたいわ!」


 ジェシカさんのゴーレムに殴り飛ばされたら肉片になってしまうから是非やめてください。


「ユリウス!聞こえてるのよね?あなたは間違ってないわ!誰かのために生きることができるあなたを、私は誇りに思うわ!!」


 ジェシカさんは目尻に溜まった涙を拭いながらそう言った。


「その通りだ。狩人(ハンター)も大事だが、大切な人のために行動できることはもっと大事だ」


 優しく微笑みながら、ユージーンさんは言う。


「俺、ユリウスくんに、ユージーンさん達に出会えて本当に良かったです……」


 思っていた転生とは違ったけれど、こんな転生も悪くないのかもしれない。心からそう思えた。

 この世界で、前世の両親に自慢できることがまた一つ増えたのだった。



 ーーーーーー



「まあ、今すぐに塔へ向かうことは許可できんがな」

「え?」


 落ち着いてから、本題だった塔の話に戻ることになった。ちなみに、俺の身体のためにという理由だったから、引き続き俺が表に出ていた。


「い、いや、俺はそもそも今のままでも満足と言いますか、現状特に不満はないわけで、わざわざユリウスくんに危険な真似をしてもらいたくはないといいますか……」

「ダメだ。良いわけがないだろう。さっきユリウスが言っていたが、寂しい思いをしているそうじゃないか。塔には必ず行くんだ。そして、ちゃんと君の顔を見せてくれ」

「そうよ。ちゃんと幸せにならないとご両親に怒られちゃうわよ!」

 −そうだよ!アキトは幸せにならなきゃダメだよ!−

「で、でも……。いや、ありがとうございます……」


 これだけ俺のことを考えてくれる人が3人もいる。その気持ちを無碍にすることは俺にはできそうにもなかった。いかんいかん。また涙が出そうだ。今日は涙腺が緩い日のようだ。


「塔は危険だ。願いを叶えてもらうというリターンが大きい分、自分の命を賭けるんだ、生半可な試練ではないと聞くぞ」


 ゴクリと唾を飲み込む。それほどに、ユージーンさんが今のユリウスくんの実力を知ってなお危険だと言う場所なのか。一体どれほどの試練が待ち受けているのだろうか。


「まあ俺も一階層だけ、それも一度しか回ったことがないから詳しくは知らんがな」

「私はもちろん一度も行ったことないわ」

「俺もユリウスが生まれる前に安産祈願で行っただけだからな。あぁ、塔の一階層を一周する願掛けがあるんだ。そこは雑魚ばかりだったが」

「そうなんですか。事前に調べて挑むべきでしょうね」

「そうだな。命は一つだけだ。絶対に死なないために、必要なことには限りがない」


 この挑戦にはユリウスくんの命もかかっている。絶対に負けるわけにはいかない。


「ということで、だ。塔に向かうのは今から約4年後、ユリウスが14歳になってからだ」

「4年……。けっこうな期間ですね。いえ、僕はぜんぜん構わないんですけど」

「この世界では14歳から成人として認められる。区切りとしてはちょうどいいだろう」

「ユージーンさん達はついてこられないんですか?」

「俺たちはこの家を守らないといけないし、狩りにもいかなければならない。すでに知っていると思うが、狩人(ハンター)はこの世界の生命線だからな」

「まあ、それよりも成長したユリウスの背中を押してあげたい気持ちのほうが大きいかもね。ねっ、あなた!」


 そう言って、ジェシカさんはユージーンさんの頬をツンツンした。ユージーンさんも満更でもなさそうだな。昔は平気でこのぐらいいちゃいちゃしていたが、久しぶりに見た気がする。


「ユージーンさん、ジェシカさん。僕は、何が何でもこの身体を守ります。死んでもここに帰ってきます。だから、しばらくの間よろしくお願いします!」


 俺は思い切り頭を下げた。この感謝の気持ちを全て表せるように。


「もうっ、ユリウスみたいに父さんと母さんでいいのよ!」


 バシバシと背中を叩かれる。痛い。でも優しい痛みだ。


「こら、強制することじゃないだろう。気が向いたときにでもいいさ。仲良くやっていこう」


 ユージーンさんは俺の肩にポンと手を置いた。この人の手はこんなに大きかったのか。


 どうやら、俺はまだまだこの世界について知らないことばかりのようだ。


 だから、これから知っていこう。


「え、えーっと。父さん、母さん。これからよろしくお願いします」


 2人は目を丸くして俺を見ている。この顔は久しぶりに見たな。


「あと、できたら君とかじゃなくて、ユリウスくんみたいにお前とかって呼んでもらえると嬉しいです。……変ですかね」

「なにも変じゃないさ。よし!これからは遠慮せずに訓練するぞ!!特別な訓練と書いて特訓だ!!!」

「あらあら、こうなったこの人は大変よ?」

「今日は新しい家族ができたんだ!宴だ!!」


 そう言って笑う2人を見て、俺も自然と笑みが溢れた。もっと色んなことが知りたい。この世界のこと、この人たちのこと。


 −ユリウスくん、ありがとね−


 改めて彼に感謝を告げて、俺はパーティを目一杯楽しんだのだった。







ダイヤモンドマンモスを食べたときはユージーン達はベロベロに酔っ払っていたので気づきませんでした。シラフなら気づいていたと思います。






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