18:何歳でも報・連・相は大事
「ただいまー!」
「帰ったぞー」
「おかえりなさい。メアリーちゃんと仲良くできた?」
「うん!いまからえんかいだよ!」
「宴会?」
「ああ、訓練中に『金剛毛象』が現れてな。どうせなら二家族で宴会でもするかってなったんだ。ジェシカも行こう」
「それは運が良かったわね!もちろん行かせてもらうわ!準備するからその間にお風呂に入ってきたら?」
「そうさせてもらうよ」
「おっふろー!」
一度家に帰ったユリウスくん達は、ジェシカさんに食事に行く旨を伝えてから風呂に入った。
ーーーーーー
風呂から上がり、準備を済ませたジェシカさんを連れてマックスさんの家へ向かう。まあほんとにご近所さんだからすぐ着くんだけどね。
到着し、ドアをノックするとマックスさんが出てきた。
「来たか。急だったからそんなに片付いていないが、ゆっくりしていってくれ」
「ああ、酒も持ってきたぞ」
「ユリウスくんいらっしゃいです!」
「どうぞどうぞ、今日は娘と旦那がお世話になりました」
ユージーンさんとメアリーちゃんに迎えられると、奥さんであるミナさんがやってきた。
彼女も金髪碧眼で、長い髪を後ろで1つにまとめている美人さんだ。親子揃って同じ髪色、目の色をしているので、メアリーちゃんとそっくりだ。メアリーちゃんが大人になったらミナさんのようになるだろう。
「ミナさんお久しぶり!料理の準備は終わってる?よければ手伝おうかしら?」
「あら、ありがとうございます。ならお願いしようかしら。ユージーンさん達は座って待っていてくださいな」
「感謝する」
「今日ぐらいその口調やめればいいのに。ユリウスも気にしないわよ」
「ぐっ……。ユリウスの前でその話はするな……」
母コンビは相変わらず仲が良さそうだ。
威厳ある口調(時々素が出る)をジェシカさんに指摘されたユージーンさんはバツが悪そうな顔をするも、めげない。
いい加減やめればいいのに…。変なところで意地になっちゃって引っ込みがつかないんだろうか。誰も気にしている人がいないことは確かだ。
そんなたわいも無いやり取りがあったが、母親達はさっさとキッチンに向かった。
ーーーーーー
ちびっ子達がはしゃぎ、父親達が最近の狩りの調子を話しているとご飯ができたようだ。
「『金剛毛象』は滅多に出くわさないからね、久々に調理して腕がなったわ!」
「うふふ。ジェシカさんったら、ものすごく楽しそうに料理するものだから笑っちゃいました」
「夫の体を作るのも妻の仕事だからね、料理は大好きよ!」
食卓に料理が並ぶ。
ローストビーフっぽくしたものや、野菜と炒めてソースをかけたもの、スープにしたりと、ふんだんにダイヤモンドマンモスをあしらった料理だ。
「そういえば、ミナさんの料理を食べるのは初めてだな」
「もちろんミナの料理はものすごくうまい!今日という日に感謝しながら食うんだな!」
「やめてください、あなた。恥ずかしいです」
「でも本当にミナさんの料理は美味しいからね!私はたまに一緒に料理を作ったりしてるから詳しいの」
「それは楽しみだ」
実際、ミナさん達の料理はすごく美味しそうだ。
『金剛毛象』の肉、滲み出す脂はまるで宝石のようにキラキラしていた。
その身に纏っていたダイヤモンドだけでなく、体の内側までダイヤモンドのようだった。
ファンタジーな世界では料理も見ていて飽きることはない。惜しむらくは味覚がないこの状態か…。
「それじゃあ、早速乾杯するか」
「おう!記念すべき我等が子ども達の輝かしい成長に、乾杯!!」
「「「乾杯!」」」
「「かんぱーい!」」
宴会が始まり、各々テーブルの上の料理に舌鼓を打つ。
ちなみにお子様達はジュースだ。この世界では何歳から飲酒していいのか知らないけど、さすがにまだ早いだろうな。ああ、超美味しそう……。
ーーーーーー
大人達も酔い始めーーユージーンさんに至っては涙を流しながら息子語りをしているが、テーブルの上の料理も粗方食べ終えたところで、メアリーちゃんもうとうとし始め、暇になったユリウスくんが話しかけてきた。
–アキト、だいじょうぶ?–
–え?なにがだい?–
–アキトからずっとおなかすいてるかんじがしてたから…–
–あはは、お母さん達の料理が美味しそうだったからかもしれないね。邪魔しちゃってごめんね–
–アキトもたべる?–
–できたらいいんだけどね、できないよ–
–なんだかね、ごはんたべるまえからアキトがおなかすいてるかんじがしてね、たべさせてあげたいっておもってたんだ–
–ありがとう。ユリウスくんは優しいね–
–それでね、どうしようってかんがえてたらね、なんだかできるきがしてきたんだ。やってみる!–
ユリウスくんがそう言った次の瞬間、
「え?」
声が出ていた。これはあれだ。初めて魔法を失敗したときと同じ感じだ。
違う点と言えば、ユリウスくんの存在を感じられていることだろう。だが……
–やったね!できたよ!–
–いや、ちょっと待って!どゆこと?!–
–アキトにたべてほしいっていっぱいおもったらできた!–
−えぇぇ、なにそれ……−
−たべてたべて!−
何が何やらわからないまま、とりあえず俺はユリウスくんの善意に応えるため、残り少なくなったローストビーフを食べた。
そしてーー
「ーーッ!!うんまっっ!!!!」
ユリウスくんの食後の身体であるためか、それほどお腹が空いてるわけではない。しかし、そんなこと関係ないとばかりに口の中へ旨味の暴力が押し寄せてきた。
なにこれ。地球でもこんな美味しい料理あったか?最後は病院食ばかり食べていたからあまりわからないが、とりあえずこの料理はとんでもなく美味い。至◯のメニューに載せるべきだろ!海◯先生!
「どうしたあ〜ユリウス〜それさっきも食べただりょお」
「また私の料理に感動しくれてるのね!本当に作り甲斐のある子ね!抱きしめちゃう!」
しまった。ついつい感動のあまり横にユージーンさん達がいるのを忘れていた。
ユージーンさんはだいぶ酔っ払っているようだ。
図らずも初めてジェシカさんと触れ合ってしまった。
俺の存在がバレないように普段のユリウスくんらしくしなければ。とりあえず抱き枕になっておこう。
すると、ユリウスくんが話しかけてきた。
−ママのごはんおいしいでしょ!−
−ああ、ありがとう。本当に美味しかったよ。お母さんはすごいね–
–えへへ、ありがと!–
ユリウスくんの好感度がとどまる所を知らない。
この世界に実在するらしい神様に感謝することがあるとすれば、それは転生?先をユリウスくんにしてくれたことだろう。彼じゃなければ俺は今どうなっていたかわからない。本当に良い子すぎて泣けてくる。
まあ、神様がわざと俺をこんな状態にしたのならぶっ飛ばしたいところでもあるのだが。
–アキトっていっつもこんなかんじなんだね!−
−ユリウスくんが今どうなってるかわからないけど、だいたい同じだと思うよ−
−からだうごかせないのへんなかんじ!おもしろーい!−
–はは、それはよかった–
身体が動かせないのは不便なだけで何も面白くないんだけどな。
ユリウスくんが楽しんでくれるなら何よりだ。
–そうだユリウスくん、また同じことするときは一言言ってからにしてね–
–わかった!–
さすがに急にこんなことになるのは勘弁してもらいたい。
それから俺は、ユリウスくんと会話しながらーー側から見れば黙々とご飯を食べたのだった。食べるって幸せ。
あ、身体はユリウスくんが念じれば元に戻りました。




