13:自重するって言うやつほど自重しない
俺が魔腕で触れると、魔水晶は黄色く光り輝いた。
−おお!光った!俺も魔法使えるんだ!−
−やったね!きらきらだー!−
魔力があるから魔法ももしかしたら…とは思っていたが、無事に魔法を使えるようで超ハッピーだ。それにしても黄色は何を意味するんだろう。後でユリウスくんに聞いてもらおう。
ーーーーーー
「赤色以外に何があるか?適性は1人につき1つだから知ったところで意味ないぞ?魔水晶なんて1人一回しか使わないからな」
「きになるの!おしえて!」
「そ、そうか。魔法の種類については後々教えるつもりだったが…。えー、まず、黄色は《強化系》だ。
そして《生成系》は緑色、《付与系》は青色だ」
「なるほど〜」
「稀に回復魔法を使える人間もいるが、使えるようになってから魔水晶に触れれば白みがかって光るようになる。もっと珍しい魔法もあるが、その場合は魔水晶が黒ずんで光るんだ」
「へえ〜」
「まあ、そういった魔法を使える人間はなかなかいないがな」
なるほど…。どうやら俺は《強化系》らしい。魔力の手を作り出せていたしそれも納得かもしれない。
それより、まるで俺の願いが叶ったようだ。強い男にーー俺の身体ではないが、魔法の適性だけでもそれが叶うようで嬉しかった。
「どうだ?魔法の訓練でもしてみるか?と言っても、最初は魔力の扱いの訓練になるが」
「する!」
「よし、じゃあ大森林にいこう。街の近くならそれほど魔物も出てこない」
「うん!」
ということで、ユージーンさんとユリウスくんは街の外に出かけた。
そして、魔法の訓練を始めたのだがーーー
「……いや、なんでそんなに魔力を扱えているんだ?まだ4歳だぞ?」
「えへへ〜」
「街に出ているときに誰かに教わったのか…?そんな様子はなかったが…」
そう、ユリウスくんはもう一丁前に魔力を扱うことができるのだ。今もドヤ顔で胸を張っている。
技量的には俺がこの世界にきてから半年ぐらいの頃のレベルだが、ユージーンさんからすれば驚くの無理はないだろう。
俺の半年は睡眠を取らずにフルタイムで訓練した期間だから、ふつうの半年とは密度が違うのだ。
手探りで訓練していた俺と違って、ユリウスくんは俺という師匠的存在がいたためか、成長が早かった。
食事込み睡眠込みの半年間で俺と同等の技量を得た。
他の子のことはわからないけれど、おそらく同年代では抜きん出ているだろう。
「魔力の訓練は必要なさそうだな……予定とは違うが、魔法使ってみるか」
「いいの?!」
「ああ、魔法を発動するには【神秘】と唱えてから、自分が思い浮かべた魔名を唱えるんだ。魔名は自分で考えてもいいし、誰かが使っているのを真似してもいい。要はイメージ、魔法はイメージを具現化する力なんだ。まずは父さんが一度やってみるから真似するといい」
「うん!」
そう言うとユージーンさんは右手を前に向けて、魔法を唱えた。
「【神秘】バーストファイアボール」
「おお〜!!すごいすごい!」
彼の手の前に火の球が現れ、10メルター程先の地面に着弾した。
ユリウスくんが走って着弾地点までいくと、そこは黒焦げになっていた。
「これは火の球を飛ばす魔法だが、魔法の練習をするときの基本はこの魔法からだ。自分のイメージに魔力の制御が追いつかないとうまく発動しなかったり、場合によっては暴発することもあるから気をつけるんだぞ」
「いまのはぼくにもできるの?」
「ああ、さっきの魔力操作を見た限りできるはずだ。だが、しっかりイメージするんだぞ」
「わかった!やってみる!」
遅れてやってきたユージーンさんがそう説明すると、早速ユリウスくんは右手を前に向けて魔法を発動した。
「【れーてる】ばーすとふぁいあぼーる」
すると、ユージーンさんのときと同じように火の玉は現れ、10メルター先に着弾した。
「やった!できたよ!」
「……ははは。思ったより簡単にできたな…。教えがいがないというか…いや、ここは息子の才能を喜ぶべきか……」
「みにいっていい?!」
「あ、ああ!気をつけるんだぞ」
ハイテンションのユリウスくんとは対照的に、ユージーンさんは笑ってはいたが、その目は笑っていなかった。
まあね、息子に色々教えてやりたかったんだろうな。
俺がユリウスくんと仲良くなりすぎたばっかりにごめんなさい。もう少し自重するようにしよう。
着弾地点に到着すると、やはりそこは黒焦げになっていた。完コピである。
ユージーンさんの反応を見る限り、間違いなく4歳児のレベルは超えているだろう。
「……ユリウス、剣に興味はないか?」
「ぼくおとうさんみたいになりたい!」
「そうかそうか、俺たちは《放出系》だ。《強化系》の魔術師のような戦い方はできないが、遠距離が主体である俺たちは万が一魔物に近づかれたときのために剣術を覚えておいても損はない。剣術も教えてやろう」
「やったー!」
ユリウスくんが黒焦げた地面をしばらく眺めていると、10メルターを歩くには遅すぎるスピードでやってきたユージーンさんはそんなことを言った。
おそらく魔法はそこまで教えることがなさそうだから剣術にシフトチェンジしたのだろう。
まあ命がかかってるんだ、強くなって損はないはず。俺も見てなんとなくでいいから覚えよう。使う機会があるかはわからないけれど。
「せっかくだし、もう少し魔法を覚えてから帰るか。今日は練習用の剣もないしな」
「わかった!」
「じゃあさっそく始めるぞ。【神秘】バーストウォーターショット」
「すごーい!」
ユージーンさんは水の散弾を生み出して、その後ユリウスくんも真似をして、またもやユージーンさんはショックを受けていた。
大丈夫、剣術は俺はノータッチだから……ばっちり教えてやってください。
結局ユリウスくんが楽しそうだから全部オッケーじゃないかな。
俺も頑張らないとな!ユリウスくんに負けないように!




