12:魔物絶対殺すマンに、僕はなる!!
今日は予定通りユージーンさん達の狩りに連れてきてもらっていた。
国を出れば大森林と言われていたが、実際には森に入るまでに草原地帯が広がっているらしく、草原も含めて大森林と呼ばれているようだ。
ユージーンさんは胸当てと肩当てのみの軽装備と呼べるような格好で、腰には一本の剣を差していた。
ジェシカさんは表面がテラテラした強そうなコートを羽織っただけだ。シンプルで良い。
俺たちは草原を進んで、森林地帯の手前まで来ていた。
「ここに来る途中にも何匹か見かけたとは思うが、草原にも魔物はいるから注意するように」
「ぼく、おっきいぶたさんみつけたよ!くささんたべてた」
「ああ、あれはラッシュピッグだ。すごい勢いで突撃してくるぞ。草以外にも何でも食べるから注意するんだ」
「はーい」
注意されつつもユリウスくんはのほほんとしていた。
現在ユージーンさんは威厳があるような喋り方をしているが、これは狩りのために気を引き締めていることが理由ではない。
彼はユリウスくんが物心つき始めた頃から、意識して威厳のありそうな喋り方をしている。
彼は息子から尊敬される父を目指しているようで、寝る前にジェシカさんに相談しているのを聞いた。
ジェシカさんは呆れながらも笑っていた。
初めてパパと呼ばれたときには泣いて喜んでいた姿を知っている俺ももちろん笑った(魂で)。
俺は自称気の使える男だ。ユリウスくんには真実は伏せている。おかげでユリウスくんの憧れの男はユージーンさんだ。よかったね。
「あなた、くるわ!」
「ああ」
ユージーンさん達がそういうと、地面が膨れ上がり巨大な蛇が現れた。
「シャァァァァァアアアア!!!!」
「アングラスネークか」
「大きさだけは立派ね!今日の収穫はばっちりよ!」
「一撃で殺してやろう」
「びえええええええ!!!!」
–大丈夫だよ〜たぶんパパ達に任せれば安心だよ〜–
–こわいーーーー!!アキトたすけてー!!−
夫婦で巨大な『アングラスネーク』なる蛇をもう狩った気でいるので、恐怖で大泣きしているユリウスくんを俺は慰めた。
あれだけ余裕ぶっているなら大丈夫だろう。
実は俺もめっちゃ怖いけど。地上から出ている部分だけでも5メートルを超えそうな極太の蛇がこちらを睨んでいるんだ。俺とユリウスくんは魔物に正面切って出くわすのは初めてなので、そりゃもう怖い。涙が出るなら泣いていただろうし、ユリウスくんがいなければ無い腰を抜かしていた。
「【神秘】ジェネレイトゴーレム」
ジェシカさんが魔法を唱えると三体の石のゴーレムが生まれ、それらが一斉にアングラスネークに飛びかかる。
そしてその長い身体に抱きついた形になったゴーレム達は、それぞれの体がぐにゃりと曲がり巨大な蛇の身体を締め付けていく。
アングラスネークが暴れるものの、ゴーレムの勢いは止まらずどんどんめり込んでいく。
「あとはまかせろ。【神秘】バーストウインドスラッシュ」
ユージーンさんが魔法を唱えると、ゴーレムに縛り上げられたアングラスネークの首は風の刃によって一撃で切り落とされた。
この世界で魔法を行使するためには、【神秘】と唱えてから、イメージした魔法の名を宣言する必要がある。
どれだけ魔力が高くても、【神秘】と唱えなければ魔法は発動しない。魔力をねりねりすることができても、それを変質化させて魔法にすることができないのだ。
「さすがね。精度も規模もバッチリだわ。素材の状態も完璧だもの」
「ジェシカが獲物を縛り上げていてくれたからな。あんな雑魚、仕留められないわけもない」
「うぅぅ、もうこわいのだいじょうぶ?」
「ああ、父さんと母さんがやっつけたぞ」
「パパもママもすごい!」
うむうむ。無事に親父SUGEEEできたようで何よりだ。ユージーンさんの顔も心なしかホクホクしている。ちゃんと隠してください。
しかし本当に魔法っていうのはすごい。自分の何倍も大きい化け物を瞬殺できるなんて、前世では考えられなかった。
なにより、かっこいい。地球で育ったなら誰もが一度は憧れる力だ。女の子だって魔法少女になりたがるんだ。男の俺ももちろん憧れていた。
魔力なら扱えるんだけど、やっぱり魔法を扱ってみたいものだ。
「父さん達はあんな魔物たちから街を守りながら、みんなの食べ物を取ってくる仕事をしてるんだ」
「世の中には一生を自分の夢に捧げる人もいるんだけどね、ユリウスはそんな風になっちゃダメよ。人の役に立つように、優しく生きなさいね」
「はは、ほんとお前は塔に関する話になると厳しいな」
「現実主義なだけですぅ」
ジェシカさんはほんの少し怒ったような顔をして、夢を追いかけるな、人の役に立てと言う。
塔と言うのは、ここからでも見えるほど巨大な塔ーー世界の中心に存在する『願いの塔』のことだろうか。
最上階にまで登ればなんでも願いが1つだけ叶うと言う。7つの玉を集める必要はないらしいけど、それまでに過酷な試練があるとても険しい道のりらしいが。
とにかく、ジェシカさんは願いを叶えるためにその塔に登る人たちをよく思っていないようだ。夢を追いかけるのは悪いことなのだろうか……。
優しい彼女がそんな感情を見せるのは珍しいので、何か理由があるのだとは思うが……。
「ぼくもパパたちみたいなすごいひとになりたい!」
「そうかそうか、でも、危ないかも知れないんだぞ?」
「パパたちはあぶないけどがんばってる!ぼくもがんばる!」
「ユリウス……。お前ってやつは……!」
ユリウスくんの興奮しているのがわかる。
ユージーンさんは背を向けて震えていた。涙を堪えているんだろう。だいたいわかる。
「よし!ユリウスのために魔水晶を買ってきてやる!今日ユリウスの適性を調べるぞ!」
「ええ……大丈夫なの?思いつきで行動するところは昔から変わらないわね。まあ、ユリウスも興味があるみたいだし、別にいいかしら」
「ほおおおお!」
どうやら、今日ついにユリウスくんの魔法の適性が判明するらしい。こんな軽い感じならもっと早く調べても良かったんじゃないですかね。
ジェシカさんは苦笑いしているが、満更でもなさそうだ。ユリウスくん?何のことかわかってないだろうけど雰囲気で盛り上がってるね。
「せっかくここまで来たしあとでかいの1匹狩ってから帰るか!」
ユージーンさんのその発言を受け、巨大な豚を狩って俺たちは帰路についた。
ーーーーーーー
ジェシカさんが生み出したゴーレムで魔物を運び、換金してから買い物を済ませて、俺たちは家にいた。
もちろん魔水晶も途中で買ってきた。魔水晶は魔法の適性を判別する魔導具らしい。
いよいよユリウスくんの適性を見るのだ。
自分のことじゃないが、赤ちゃんの頃から見ているユリウスくんの将来に関わるんだ。俺もドキドキしてきた。
「ユリウス、この玉に手を乗せるだけでいいぞ」
「こればっかりはどうなるかわからないからね、親から適性の遺伝はないみたいだし」
「ねえねえ!もうさわってもいい?!」
「ああ、いいぞ」
ユージーンさん達もソワソワしている。
そして、ユリウスくんが魔水晶に触ると、その玉は赤く輝きを放った。
「おお!俺と同じ放出系だ!」
「いっぱい魔法教えてあげなくちゃね!」
「パパとおんなじ!」
三者三様でテンションが上がっている。
そうか。ユリウスくんもユージーンさんのように遠距離魔法でバカスカ魔物を屠っていくのか。うん、想像つかないな。
ユリウスくんが手を離すと魔水晶の輝きは消え、元の状態に戻ったのだった。
ーーーーーー
翌日、両親の目を盗んでユリウスくんに魔水晶が置いてある部屋まで連れて行ってもらった。
魔水晶が一回限りの使い捨てじゃなければ、俺も魔法の適性がわかるかもしれない。でも、試さずにはいられない。
さあ、俺にも魔法は使えるのかーー
ドキドキしつつ、魔力で作った腕ーー魔腕で魔水晶に触れると、光り輝いた。
やった!俺にも魔法が使えるんだ!
ユリウスくんと適正は違うみたいだけど、それは仕方がない。これからはお互い別の道を歩いて行こう。魔法に関してはね。
そう、俺が触れた魔水晶は黄色く輝きを放っていた。
さてさて、どんな魔法が使えるんだろう。
これからすごく楽しみだ。




