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『無キ者(ノー・バリアント)』 ――五感を奪われた僕たちが、残酷な世界で『人間』になるまで。  作者: 黒崎 凱
第三章:砂時計

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第27話:バベル防衛線

『バベル』防衛戦開始から、11時間50分


積み上がった機械の残骸は、もはや小さな『山脈』と成っていた。

撃ち落としたドローンの数は、『千』を超えたあたりで

数えるのは不可能と成った……肺に吸い込む空気は

『鉄錆』と『焦げたオイル』の悪臭に塗れ

僕の『超感覚ハイパー・センス』は、もはや

悲鳴を上げる事すら忘れるほどに摩耗し

視界は白く霞み始めていた――


「ハァッ……ハァッ……」


――喉からせり上がる血の味を飲み込みながら、僕は地平線を睨みつけた。

そこは、未だ機械の軍勢による不気味な赤光で埋め尽くされている。


(11時間と50分……闘ったっ……後10分で

この、終わりの見えない『絶望の波』が……いや。


本当に……『終わる』のか? )


……どれほど破壊しても、敵は尽きない。

僕の足元には、盾となって散っていった

『第一世代』たちの焦げた残骸が痛々しく転がっている――


ザザッ……!


――瞬間、通信機から聞こえてきた激しい爆音

そこには『ジン』と『サヤ』の怒声にも似た戦いの状況が在った――


「――こちらジン! アジール居住区の第三防衛線、突破されたっ!

サヤ、植物の壁を再構築してくれっ!」


「任せて、ジン! ……大地の根よ、彼らを護る『盾』になりなさいッ!」


遥か遠く離れた『アジール』……そこでも今

彼らが命を懸けて必死の抗戦を続けてくれている。

離れていても、僕たちは同じ『未来』を護るために戦っているんだ。


「1301ッ! 限界だ!!! ……来るぞっ!」


くさび』の基部に残された『迎撃砲座』

そこを死守する『カイン』の悲痛な叫び

直後、空が『割れた』――


ドォォォォォォォン!!!


――機神教団の司教『フェイズ』の搭乗する

『巨大空挺要塞』が雲を突き抜けて出現した。

要塞の底面から発生した青白い『光』


【――『危険』

『高出力荷電粒子砲』の充填を確認しました。至急防衛を――】


瞬間『案内人』の警告が響き渡った。


「行かせるかよぉっ!」


その声に呼応するように『カイン』は防空レーザーを『再起動』させた。


一方……『くさび』の周囲に残る『第一世代』たちは

この11時間の防衛戦で既に『炭』のように崩れかけていた。


それでも尚、彼らは自らを壁として

亡霊之息吹ファントム・スモーク』を発生させ

敵の足止めを行い続けていた。


「くッ……リア、頼む!」


「わかったっ!

ファァァァァァァァッ~~~~~――」


――『リアの歌』が

くさび』のアンテナを通じ、戦場全体に放射される。


それは『攻撃』ではない

『マザー』の命令を書き換える『自由の揺らぎ』だった。


『揺らぎ』を理解出来ない敵のドローン群は互いに衝突し

次々と火柱を上げ墜落する。


だが――


「――無駄だ。

お前たちの矮小な感情で、全能なる『マザー』の論理は止まらない」


『フェイズ』の無機質な声が、戦場全域の全周波数に割り込んだ。

 

「ふざけるな……『論理』なんかで

僕たちの『痛み』は計算できないッ!――」


直後『振動剣』を構えた僕は、天を刺す『くさび』の先端から

教団の精鋭部隊に向け飛び込んだ――


ガギィィィィィン!!

 

――空中で火花が散る。


僕の『感覚』が『脳細胞』が……限界を超えて加速する。

一対一ではない……僕の背中には

僕たちを『化け物 』と呼びながらも、今は

遠くの空の下で共に戦ってくれている『アジールの人々』がいる。


幸いにも、まだ僕の『超感覚ハイパー・センス』は

仲間の放つ一発一発の銃弾の軌道さえも

勝利への『道標』として捉えられていた。

 

「フェイズ……あんたに足りないのは『計算外の熱』だ!」


精一杯の『強がり』を口にした瞬間

僕の身体は『寿命』という名の『砂時計』が

激しい勢いで流れ始めた感覚を覚えた……


……どろりとした血が鼻から溢れる。

 

だが、その時『くさび』のアンテナは

黄金色の光を放ち始め――

 

【――全プラント解放プロトコル

覚醒計画プロジェクト・アウェイク』送信率90%


プロトコル『最終フェーズ』に移行します――】

 

(『案内人』の声が響いた……あと少し、あと少しでッ!……)


「阻止せよ! ――全隊員『特攻』を許可する」


『フェイズ』の叫びに呼応し

敵は、なりふり構わぬ突撃を開始した。


……圧倒的な物量の前に、僕たちの防衛線は

一歩、また一歩と押し込まれていく。


「くッ……負けるもんか……ッ!!! ……」


血を吐きながら、僕は叫ぶ――


「僕たちは、ここで初めて……本当の『人生』を見つけたんだ。

負けない……奪わせない……絶対にッ! ――」


――僕は、限界を超えた『超感覚ハイパー・センス』をさらに引き上げ

迫り来る機神教団の猛攻に真っ向から突っ込んでいった――

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