第26話:運命の分水嶺
「――これが僕たちの答えだ」
僕がそう断言した瞬間
『案内人』の無機質な瞳に、一瞬だけ
『満足』のような光が宿ったように見えた。
【――推奨されない選択です。
ですが……その『答え』こそ
我らの父たちが貴方達の遺伝子に組み込んだ
最後の『不確定要素』でもあるのです――】
『案内人』が背後の巨大な『制御盤』を操作すると
『バベル』の壁一面に『世界地図』が投影された。
そこには、僕たちがいた『プラント』以外にも
世界中に点在する数百もの『聖域』の反応が
赤い点となって明滅していた。
【――では、貴方たちに第三の道を示します。
貴方たちの『共感覚』を
『バベル』のアンテナを通じ、世界中の『プラント』へ同時送信し
すべての個体の『リミッター』を強制解除してください。
……成功すれば『マザーの管理システム』は飽和し、崩壊します。
脳への負荷分散が起き、貴方たちの寿命も
通常の人間と同じ程度まで回復する『可能性』があります――】
「可能性がある……だけ?」
リアが静かに問いかける。
【――是。
確率は48%……さらに、この信号を発信した瞬間
世界中の『マザー直轄軍』並びに『機神教団』の全戦力が
二つの目標へ向けて進軍を開始するでしょう。
一つは、この信号の発信源である『絶対消失点』
そしてもう一つは、貴方たちの帰るべき拠点『アジール』です――】
直後、返された答え……それは、自分たちの命を救うため
世界を再び戦火に投じるという『究極の賭け』だった。
「やろう……『それ』を」
……沈黙を破ったのは、カインだった。
彼は培養槽に眠る『父たち』の顔を見つめながら
静かに拳を握り締めながら続けた――
「潰しても潰しても『ハエ』みたいに湧いて来る
あんな『マザー』なんて物に管理された
『平和』なんて、結局は緩やかな『死』だ。
……それに、その『方法』なら
外の世界で、自分の足で立つ権利を
あの中にいる同胞たちにも与えられるんだろう? 」
「ああ、そうだ……カイン、僕も同意見だ。
でも、相当な危険が伴う……リア。僕たちの選択は正しいのかな?」
直後『リア』は僕の手をぎゅっと握りしめ、力強く頷いた。
「うん……一人で見る空よりも
みんなで見る空の方が……きっと綺麗だから」
【――『全個体』の承認を確認。
全プラント解放プロトコル
『覚醒計画』を開始します。
……送信完了まで、残り12時間
貴方達には、迫りくる『マザーの牙』から
この塔を死守する『義務』が生じます――】
『宣言』が為された直後『バベル』は不気味に震え始めた。
……壁へと投影された外部の状況。地平線の向こう側
空を埋め尽くすほどの『マザーの飛行兵器』と
地を這う『機神教団』の『重戦車軍団』が
まるで津波のようにこちらへ向かってくるのが見える。
直後、僕は『無線機』を掴み『アジール』に繋いだ――
「ジン! この通信を『アジール』全体に繋いでくれ!」
「な、何だいきなりっ!? 」
「説明は後だっ! ……これから
世界で一番大きな『お祭り』を始める。
『アジール』のみんなを護るためでもある……そして
僕たちの未来も……ジン。一緒に護ってくれないか?」
「成程……何かを『見つけた』んだな?
分かった……全部、俺に任せとけっ!!! 」
――『砂時計』の砂が落ちきる前に。
僕たちは、世界を縛る『正解』という名の鎖を、自分たちの手で引き千切る。




