第23話:欠陥品の残時間
アジールの広場に、電子的な不協和音が吹き荒れる。
僕は自分の脳を『ノイズ発生器』に変え
機神教団の『最適化された連携』を次々と攪乱していった。
計算外の動きに『フェイズ』の赤い電子眼は激しく点滅し
機械の兵士たちが自律制御を失って瓦礫に激突する。
だが――
「ぐッ……ぐぁぁぁっ!」
――脳を焼くような苦痛。
『超感覚』を逆流させるこの戦法は
僕自身の神経をも削る『諸刃の剣』だ。
「無意味な抵抗を……自らを壊してまで、何を守るというのだ、1301」
『フェイズ』が『超音波カッター』を振り上げ僕の喉元へ突きつける。
だが、彼はそこで動きを止めた。
それは『慈悲』では無かった……彼が『センサー』の捉えた
僕の『バイタルサイン』に、ある致命的な『異常』を見つけたからだ。
「ふむ……やはり『第十三世代』の限界値は
我々の予測よりもずっと早いのだな……」
「な、何のことだッ……?」
僕は荒い息を吐きながら『フェイズ』を睨みつけた。
「お前たちは、暗闇の中で『正解』を選ぶためだけに
脳の演算能力を極限まで引き上げられた。
……だが、それを処理する『器』は、旧人類の脆い設計のままだ。
五感を取り戻し、外界の膨大な情報に晒されれば
お前たちの脳は『オーバーヒート』を起こし
二十歳を迎える前に、完全に『焼き切れ』てしまうのだ」
その言葉に、後ろで戦っていた『リア』と『カイン』が息を呑んだ。
「うそ……嘘……よ……そんなの……」
『リア』の声が震える。
「理解していなかったのか? 『マザー』にとって
汝らは『使い捨ての回路』に過ぎない。
……『平和』が定着するまでの、短い『繋ぎ』だ。
汝らが『自由』と呼ぶその『感覚』は
自らを死へと誘うための『カウントダウン』なのだよ……」
『フェイズ』の冷徹な指摘を裏付けるように
僕の視界が急激に色褪せ、どろりとした鼻血が砂の上に滴り落ちた。
取り戻した五感――
『色』『音』『匂い』
――その一つ一つが、僕の命を燃やす『燃料』になっている。
「まぁ……良いだろう。今日のところは退いてやる。
自分の命が砂時計のように零れていく『恐怖』の中で
汝らがどのような『正解』を選ぶか、じっくりと見させてもらう」
直後『フェイズ』は背中の『スラスター』を起動させ霧の中へと消えていった。
教団の兵士たちもまた、無感情なままに撤退していく。
僕は……敵を『追い返せた』はずだ。
だが『アジール』には重苦しい沈黙が降りた……
……嗚呼『理由』なんて明らかだ。
「だ、大丈夫かッ!? ……1301ッ!!」
『ジン』が駆け寄り、僕の肩を掴む。
僕は立ち上がろうとした、だが。足に力が入らない。
『リア』は僕の胸に顔を埋めて泣き出した……彼女にも
自分の内側で『何かが軋む音』が聞こえているのだろうか?
「ハハ……笑っちゃうな」
僕は、掠れた声で呟いた。
「暗闇を抜けて、漸く見つけたこの空の下で……僕たちは
ゆっくり死んでいくだけ……なんて」
とてもとても……悲しかった。
だが、僕の心は折れてはいなかった……命に『終わり』があるのなら
その『時間』を誰のために使うべきか……そのために
僕たちは、自分たちの『寿命』という名の、最後の『呪い』と向き合う――




