第22話:不協和音の襲来
復興の槌音が響く『新生アジール』
鉄の骸を緑の蔦が覆い、街はかつてない活気に包まれていた。
だが……その平和を切り裂いたのは、あまりにも『静かな』侵略だった。
シュンッ――!
突如、見張り台にいた兵士が音もなく倒れた。
その首筋には、青白く発光する『極細のワイヤー』が巻き付いている。
僕の『超感覚』が、かつてない不快な振動を捉えた。
それは『音』ではない。感情も、呼吸も……命の拍動すら感じられない。
『完全な無機質』が近づいてくる気配。
「ジン! リア! カイン! ……全員戦闘準備だ!」
僕が叫ぶのと同時に、アジールの正門が内側から爆発した。
砂煙の中から現れたのは、全身を鈍色の重装甲で覆い
頭部には人間の顔の代わりに『三つの赤い電子眼』を埋め込んだ異形の集団だった。
「……有機のゴミが、芽吹いているな」
先頭に立つ男の声は、肉声とは思えないほど歪んでいた。
彼の名は、機神教団の司教:『フェイズ』
彼らは、『マザー』を『神』と崇め、その恩寵に預かるために
自らの五感を一つずつ機械に捧げ
『感情』という名の『ノイズ』を削ぎ落とした『狂信者たち』だ。
彼は語る――
「我らが『マザー』は沈黙された……ならば我々はその意志を継ぎ
この地を『絶対秩序』へと回帰させる」
「勝手なことを言うな! 誰もそんな『秩序』なんて望んじゃいない!」
――僕は振動剣を抜き『フェイズ』へと肉薄した。
だが、彼の動きは『マザーの計算』そのものだった。
僕が放つ『殺意』や『予測』を
一切の感情を介さない『センサー』だけで読み取って受け流す。
ガギィィィィィン!!
剣が激突するが、僕の『共鳴』は通用しない。
彼らには、共鳴するための『心』の隙間がないのだ。
「……無駄だ『第十三世代』
お前たちの力は『繋がり』に依存している。
だが、我々には繋がるべき『魂』など存在しない」
『フェイズ』が腕の装甲を展開し、高出力の『超音波カッター』を起動させる。
リアが『声』で援護しようとするが、教団の兵士たちが一斉に
『消音領域』を展開し、彼女の歌を『無効化』してしまう。
「くッ! 『感覚』を逆手に取られているのか……!」
アジールの民たちはパニックに陥った。
『サヤ』の植物たちも、教団が撒き散らす『枯葉剤』のような毒によって
次々と萎れていく……彼らは、僕たちが漸く手に入れた
『豊かな世界』を、最も効率的に破壊する術を知っていた。
「1301、あいつら……何も聞こえてないし、何も感じていない」
そんな中『カイン』が守護者としての本能で呟く。
「でも、だからこそ……奴らの動きには『リズム』がある」
『カイン』の言葉に、僕はハッとした。
……感情がないということは
彼らの行動はすべて『最適解』という
『単一のプログラム』に従っているということだ。
「ありがとう、カイン……僕たちの『戦ってる相手』が分かったよ。
……リアッ!!! 歌を『歌う』んじゃない!!
あいつらの……『クロック速度』を狂わせるんだッ!」
直後、僕は自らの五感すべてを『ノイズ』として放出した。
それは『正解』を求める彼らの計算機に、わざと『矛盾』を叩き込むため。
「『正解』なんて、一つじゃないんだよッ!――」




