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『無キ者(ノー・バリアント)』 ――五感を奪われた僕たちが、残酷な世界で『人間』になるまで。  作者: 黒崎 凱
第二章:外の世界

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第19話:粛清の夜

『抗体薬』を手に『アジール』へと戻った僕たちを待っていたのは

鳴り止まない不吉な『警報』と、街を包む『硝煙の匂い』だった。


「1301ッ!!! ……くッ……すまねぇッ!! 」

僕たちに気付き、走り寄ってきた『ジン』の顔は絶望に歪んでいた。


彼の背後『アジール』の中心部

『評議会議事堂』からは巨大な火柱が上がっていた。


そんな中『ジン』は言った

僕たちの理解者であった『エマ議長』が

『バロウズ』率いる軍部派の手によって暗殺された……と。


そして、そんな彼の説明を裏づけるように

直後、混乱に乗じて実権を握った『バロウズ』は

『アジール中の全スピーカー』を通じ、狂気に満ちた『宣言』を叫んでいた――


「……住人諸君ッ!

ついに『真実』が明らかとなったッ!


『エマ議長』はプラント生まれの怪物たちと通じ

人類最後の希望であるこの場所を『マザー』に売り渡そうとしていたのだッ!

我々は今こそ『純粋な人間』としての誇りを取り戻さねばならないッ!』


「嘘だ……彼女は『僕たち』を信じてくれた……嘘だッ!!! 」


……そんな僕の『叫び』など

『恐怖』に支配された住人たちには届かない。


それどころか、広場では『怪物を殺せ』『プラントへ帰れ』

という悍ましい怒号が渦巻き……あろう事か

僕たちが身を寄せていた『隔離区画』には『火炎瓶』が投げ込まれていた。


それはまるで『炎が上へと上がる事』を知らないかのように。

『都合の悪いこと』には、何も気が付かないかのように

あまりにも身勝手に『恐怖』という『炎』に


精神を焼かれたかのように――


「くッ……1301、お前達は逃げろッ!

ここはもう、俺の知ってる『アジール』じゃねえ!」


――『ジン』の叫びと同時に

『装甲車』を先頭にした『武装兵』が僕たちを包囲した。


だが、彼らが構えているのは唯の『銃』では無かった。

彼らは……先ほどの『アリスの病院』で見たのと似た

感覚神経を麻痺させる『特殊電磁波銃』を構えていたのだ。


「くッ! ……『カイン』みんなを守ってくれッ!」


僕は叫び『振動剣』を抜いた。

今の僕に『人間を傷つけてはいけない』などとは言えないから。


少なくとも『明確な殺意を差し向けてくる相手』に対し

そんな綺麗事を告げられる余裕なんて僕にはない。

『ルナ』を含め、僕たちの家族の安否さえ分からない中

そんな綺麗事を実行出来る余裕なんて微塵もない――


「引かないなら……倒すしかない

『出て行け』と言うなら言う通りにする……でも

『ルナ』たちを連れて行く……言え、みんなを何処にやった?

皆は……無事なのかを」


――『超感覚ハイパー・センス』が如実に感じ取った『感覚』

武装兵の引き金に掛かった指の『震え』

恐怖を怒りに変えて叫ぶ喉の『震え』

 

一瞬でも護りたいと思った人たちが

最悪の『震え』の中、僕たちを殺そうとしている。


この『不条理』……この『痛み』

認めたくは無いが……『マザー』の計算通りだ。


『人間』は、放っておけば

互いを『恐れ』『排除』し……やがて『破滅』へと突き進む。


「無駄だ……当たらない」


僕は、飛来する弾丸の軌道を読み

最小限の動きで回避しながら『バロウズ』の乗る『装甲車』へと肉薄した。

だが……『バロウズ』は醜い笑みを浮かべ

勝ち誇ったように、ある『スイッチ』を押し込んだ。


「くくくッ……『第十三世代』共よ。

お前たちが『絆』と呼ぶものが、どれほど脆いかを……教えてやる」


直後『アジール』の地下『隔離区画』で起動した旧時代の遺物――


共鳴者之断頭台レゾナンス・ギロチン


――それは『高周波』のような音を立て

僕たちの脳に、内側から爆発したかのような激痛を齎した。


『出来た』所で一切嬉しくはないが……直ぐに『理解出来た』

これは、僕たちが持つ『共感覚シナプス』を逆手に取った

『広域精神汚染電波』だ――

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!」


――『リア』が崩れ落ち『カイン』が……そして。

兵器の展開に依って開かれた『隔離区画』で『ルナたち』が

これは、僕たち『無キ者(ノー・バリアント)』だけが苦しむ

『人間の自己都合の塊』のような兵器だ。


……僕たちは、自ら頭を締め付けるように抱えのたうち回った。

僕たちの『繋がる力』が、そのまま

『苦痛を共有する呪い』へと反転したのだ。

一人が感じた痛みが、十倍、百倍になって全員にフィードバックされる。

 

「あ゛か゛ぁッ……!!!

こんな……ことを……何故……ッ……」

 

……地面に這いつくばることしか出来ない僕の視界に

『バロウズ』の軍靴が迫った……だが。


意識が遠のく中、確かに僕は見た。


『アジール』の外壁に向け何処からとも無く放たれた

無数の『光の筋』が……まるで『流星群』のように降り注ぐのを。


この状況を……人間たちの『自己都合』を

内乱を、僕たちの苦しみさえも……全て。


『マザー』は『掃除』の絶好の機会と判断したのだ――

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