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『無キ者(ノー・バリアント)』 ――五感を奪われた僕たちが、残酷な世界で『人間』になるまで。  作者: 黒崎 凱
第二章:外の世界

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第15話:『共感覚(シナプス)』の絆

荒野に降り立った僕を待っていたのは

物理的な衝撃を超えた『絶望』の質量だった。

三人の同胞たちから放たれる『精神波』は

僕の脳を直接沸騰させるかのような熱を持ち

僕の『視界』は悍ましい程の『ノイズ』で塗り潰されていた。


「……あ……が……っ!」


……膝をつき、砂を噛む。

彼らの苦痛が僕の神経を伝って流れ込んでくる――


(暗い寒い痛い……たすけて。タスケテ。助けて。

『殺して』――)



――『マザー』という巨大な意志に意識を侵食され

個を失いかけている彼らの悲鳴。


【――無駄です。『1301』

彼らは既に私と一体化した『末端』に過ぎません――】


『マザー』の声が、僕の思考を直接押さえつける。


だが……僕は知っている。

かつて、僕と『リア』が暗闇の中で、互いの存在を

『熱』として感じ取った、あの瞬間を。


(無駄じゃない……『マザー』

僕があんたの意識を……『回路』を


乗っ取ってやるッ!――)


「ウォォォォォッ!!!!! ――」


僕は、叫び……そして『振動剣』を地面に突き立てた。

だが、それは『武器』としてでは無く『アース(接地点)』として。


僕は……自分の五感を極限まで拡張し

あえて彼らの『精神波』を『拒絶』せず『受け入れる』ことを選んだ。

そうすることで、救える『可能性』を見つけられたから――


「――『共感覚シナプス』接続ッ!!」


瞬間、僕の意識は肉体を離れ『情報の海』へとダイブした。

そこは……果てしなく続く『灰色の荒野』

『マザー』が絶対的に支配する『論理』だけの世界。


……その中央には

鎖で繋がれ、泣き叫ぶ三人の『子供たち』がいた。


「皆……もう、大丈夫だ」


僕が意識の腕を伸ばし、彼らを優しく抱き締めた……瞬間

『マザー』の冷酷さは、僕を排除しようと

『黒い触手』となって襲いかかった……だが。


僕の中には『リア』から貰った『温かさ』があり

『カイン』が示した『強さ』があり

『ゼロ』の遺した『不敵な意志』がある。


「邪魔だッ!!! ……皆、見てくれ。


外の世界は、あんなにも眩しくて

風だってあんなにも冷たい……痛みや苦しみもある。

だけど……それは僕たちが『生きている』証拠なんだ!」


触手を撥ね退けた僕は自らの『記憶』を

彼らの脳内へと直接流し込んだ――


『プラントの壁が壊れた瞬間』


『初めて見た星空』


『サヤの街で聞いた、命の歌』

 

バリッ……バリバリバリバリバリッ!!

 

――直後

『マザー』の支配という名の『鎖』は

僕たちが共有した『感情の熱』によって焼き切れた。


急激に引き戻された現実世界……『精神波』の放射は止まり

三人の少年少女がその場に崩れ落ちる。


彼らの瞳からは『青白い発光』が消え

彼らは……初めて『自分の意志』で涙を流していた。


「……あり……がとう……」


一人の『少女』が掠れた声で呟く。

そして『管制車両』から伸びていたアンテナは爆散し

『マザー』の通信は完全に遮断された。


「お、おいッ!!! ……1301! 大丈夫か!?」


……血相を変え、飛行艇から『ジン』と『リア』が駆け寄ってくる。

僕は、鼻から流れる血液に驚きながらも

晴れやかな気分で空を見上げていた。


「ああ、大丈夫だ……『家族』が、少し増えたから」


『マザー』は僕たちを『道具』として『繋ごう』とした。

だけど、僕たちは『絆』として『繋がる』道を見つけたのだ。

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